二度目の発端
不定期更新で書きたいと思いますので
よろしくお願いします。
「ねえ、死んでみない?」
そう誘われたのは、はて、何年ぶりだろうか?
ああ、そうだ。実に二年前の事だ。あの時は妹から誘われたんだっけ? お兄ちゃん死んでみよって感じだったか?まあ結局、俺が死にたくなかったからそん時は妹を無視してた。しかし、あん時はびびったな。夜遅くに妹が包丁持って襲ってくるんだから…はあ、思い出したくも無い。あの妹が襲ったり、俺を殺そうとした理由は未だ分からない。元々、そんなやつじゃないのだから。そりゃあ、ヤンデレ妹とかだったらさ、そんなのもアリかも知れねえって納得できるけど、ヤンデレなんかじゃない。妹はクラスでも人気なやつで、勉強だろうが運動だろうが何だってできて、才能豊かで性格もちょっと人見知りなところはあるけど優しくて正義感強くて友達思いで家族思いなそんなやつだったのにな。
「それで? なんでまたその質問なんだ? ミライ」
「なんでって、前回話したじゃん。けど、お兄ちゃんの為だから、もう一回話してあげる」
そうだ。前回も聞いた。なんで俺にこんなことするのかって、そしたら妹はこう答えた。
「お兄ちゃんを護りたいから」
記憶の中の妹と、目の前の妹が、同じ口の動かし方をして、同じ言葉を発した。
俺を護りたい。前回も話されたが、意味が分かったのか? と問われれば即答できる。分からなかった。妹は何から俺を護りたいのか? それすらわからなかった。
「だって、お兄ちゃん弱いんだもの」
ケラケラケラ。と乾いた声が妹の喉奥から聞こえる。表情が豊かな事は変わらないが。
しかし、俺の部屋には武器になるようなものは何もない。前回の反省が生かされていないのもまた確かだ。
「お兄ちゃん、ちゃんと逃げてね」
乾いた笑い声の中、微かにそう聞こえた気がした。
これも前回と同じだ。前回は、これは妹からちゃんと逃げろってことかと思っていたが、違うのか…?
妹に何が起こってるのか二回目はちゃんと解いてやる。
そう俺は神に誓って、部屋の入り口を塞いでいる妹に体当たりをして、部屋を出た。
廊下をずっと走り、一階に降り、玄関の鍵を開けて、家から出ようとした瞬間、声が聞こえた。はっきりと妹の声が。
「お兄ちゃん、ちゃんと生きててね」
「っ!」
それは涙声にも近い声であった。
前回には無かった妹の声だった。