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自衛隊高校 ~異世界実習記録~  作者: 脱色ナス
第一章 未知との遭遇編
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追撃部隊を破砕せよ!

ご感想、ご指摘おまちしてます!

 「日本に居た時とあんまり変わんないことしてるわね……」

 深部偵察隊の衛生員である高林士長は、携帯シャベルで延々と塹壕掘りをしている現役隊員と後輩達を見ながら呟いた。

 キール村を離脱して暫くした後、本部から来た命令は追撃してくる敵性勢力を破砕せよ、というものだった。この命令に偵察隊の幹部、陸曹、生徒隊員は大いに驚いたが、犬山団長は至って冷静であった。ひとまずキール村から数十キロメートル離れたところにある、やや小高い丘の中腹に陣地構築を開始した。キール村の方角、つまり敵性勢力が来ると予想される方向にはちょっとした林と背の高い茂みがある。途中から宿営地より応援に駆け付けた第三戦闘団の301中隊と合流して、陣地構築を急いでいる状況だ。

 「清文君は怪我してないかな……」

 可愛い後輩の背中を見ながら高林は呟く。

 小笠原は手の器用さを見込まれ、塹壕正面に鉄条網を敷設する作業を手伝っている。 

 鉄条網は塹壕から100メートルの距離で三重にして敷設される。コイル状になった有針鉄線を1.5メートルの間隔で三重に敷設する。この間隔は馬が飛び越えようとすると、どこかしらに引っ掛かる絶妙な間隔なのである。

 結局主要な作業が完了したのは、太陽が高く上った正午過ぎであった。それから慌ただしく昼食を取ると2本の並列して掘られた塹壕に入った。1本目の塹壕には小銃小隊が、そして2本目の塹壕にはMINIMI軽機関銃とM2重機関銃が配置され、さらに中隊旗と日章旗がへんぽんと翻っている。 高林が郡司に旗を立てた理由を尋ねると、

 「わざと目立てば、敵は自ずと向かってくる」

 と言った。確かに妙案である。

 また、全ての隊員に砕いた魔法石の欠片が渡された




 「敵さん、俺ら追っ払って満足したんじゃねーの?」

 塹壕に入って1時間、井本は痺れを切らして、ソワソワし始めていた。

 未だに敵性勢力は姿を現していない。先ほど斥候に数人が向かったところだ。

 少しして斥候が帰って来た。その報告によれば敵性勢力はこちらの車両が残したタイヤ痕をつけて来ているらしい。間もなく接触するとのこと。緊張感が部隊に充満する。

 「来たぞ!」

 敵性勢力はあの騎士補を先頭に、騎兵、槍兵、弓兵とやって来た。彼らはこちらの存在に気付くと、左右に広がる。いわゆる鶴翼の陣形と言われる隊形に展開する。




 ロニエ騎士補達は賊を追って行軍して来たが、賊が自ら迎え撃ってくることは想定外だった。

 「ロニエ騎士補、賊は見ての通り自ら断罪されることを望んでいるようです」

 ロニエはやや呆れた口調で、 

 「全く、奴らは一体何を考えているのか分からないな。脱兎の如く逃げたかと思えば、今度は抵抗しようとは……。我々が何者か分かっていないようにも見える。だが、数が増えているのが気になるな」

 従卒はさも問題にならないかのように笑った。

 「ロニエ殿、数が増えたと言えども、我らの数からすればまだ少ないですよ。一気に粉砕してしまいましょう! 針金を障害物にしてますが、あんなもの剣で断ち切ってしまえば問題ありません!」

 ロニエは頷くと、剣を抜いて命令を下した。

 「弓兵は敵陣に矢を降らして奴らが溝から出てこれないようにしろ! ジットラ隊は賊を1人残らず叩き切れ! 突撃!」

 号令一下、矢が無数に放たれ、歩兵が槍、剣を振りかざして突進を開始した。




 「突っ込んでくるぞ!」

 自衛官達は突っ込んでくる中世のファンタジーを見て驚きつつも、冷静に次にくるであろう命令を待つことが出来た。これは日頃の訓練の賜物である。また生徒隊員がパニックに陥らないのは、陸曹達がすぐ隣で生徒隊員に指示を飛ばしているからだ。

 「飛んでくる矢に注意しろ!」

 「まだ撃つなよ~! じっくり引きつけろ!」

 作戦は至極簡単、敵を引きつけてから一撃を加えて、敵の敢闘精神を挫くというもの。

 小笠原は二脚を立てた64式小銃を土嚢の上に依託して、照星と照門を立てた。照準越しに突進してくる甲冑を身に纏った兵士を見たとき、小笠原は恐怖感に襲われた。それは死ぬかもしれないという恐怖ではなく、誰かを殺してしまうことへの恐怖だった。

 数は劣れども、装備品には500年近い差が有る。勝敗は内地の人間が見れば、誰の目にも明らかな戦いだ。

 甲冑のガチャガチャという音がどんどん大きくなっていった。

 「射撃用意!」

 小隊長の鋭い号令に隊員は素早く反応して、渾身の力を込めて槓桿を引く。後は引き金を引けば弾丸は音の2倍の速さで敵を貫く。

 「切り替え金、単発位置! 撃ち方用意!」

 撃てない、照準を槍を持った1人の兵士に狙いをつけてそう思った。

 敵の先頭が鉄条網に達し、その突進速度が落ちたその瞬間、

 「撃てー!」

 「撃ち方始めー!」

 頭が真っ白になり、気付けば引き金を引ききっていた。その兵士は腹を抱えてうずくまり、そして動きを止めた。

 耳をつんざく様な銃声が左右、後ろから聞こえてくる。

 「小笠原! しっかり、気を張れ!」

 仲間の屍を乗り越えて突き進んでくる敵に再び狙いを定めて、何の躊躇いもなく引き金は引かれる。当たったかどうかはわからないが、恐らく誰かの命を刈り取った。

 気付くと最初の戦闘は僅か数分で終わった。鉄条網の前で無数の死体が無惨な姿を晒している。




 「今のはなんだ!」

 ロニエは友軍兵士が敵陣に押し寄せては、ドミノ倒しの様に倒れていくのを見た。敵兵は溝から頭と杖の様なものを出すと火花を連続で発生させている。すると兵士達は身体から血しぶきを上げながら地面に伏す。まるで手品だ。

 ジットラ隊が壊滅状態に陥り、敗残兵がこちらへ引き返してくる。

 「おのれ! 賊のクセに生意気な! 全軍突撃! 騎兵で蹴散らすぞ!」

 ロニエは腰のサーベルを抜いて駆け出した。周りの部下と兵士達も抜刀して、ロニエの後を追った。




 「嘘だろ! 突っ込んでくるなんて! フツーこんな損害が出たら退却するでしょ!」

 井本の叫びも虚しく敵は再び正面突撃を敢行する。

 「誰か、先頭の敵指揮官を狙撃しなさい! あいつを仕留めれば!」

 犬山の指示にいち早く反応したのは、井本であった。

 「俺がやります!」

 「えーっ! あんた、大丈夫なの!」

 高林の文句に井本は口角を上げて、

 「こう見えて射撃は得意なんスよ」

 井本は構えると、先頭に立って突っ込んでくる騎士に狙いをつけて、その動きを追う。

 そしてその騎士が鉄条網を飛び越えようとして、鉄条網に馬の足を取られ動きが遅くなった瞬間。

 井本が放った弾丸はその騎士の馬の胸を貫いた。馬はその場で倒れ、そして騎士は突っ込んで来たそのままの勢いで前へと吹っ飛んで行った。

 騎士は10メートル程飛翔した後、地面に叩きつけられた。そしてうずくまったまま動かない。だが、生きてることは確実である。

 「郡司曹長! 部下を連れ、あの騎士の身柄を確保しろ!」

 「了解! 小笠原と井本! 付いて来い!」

 「「了解」」

 今度は小隊長が声を張り上げる。

 「これより10秒後、突撃支援射撃を実施する! 郡司班、着け剣! 支援射撃用意、切り替え金、連発位置!」

 カウントが始まり、タイミングを合わせる。64式小銃に銃剣が装着し、突撃命令を待つ。

 「突撃にぃ~! 前へ!」

 「「やーッ!!」」

 小笠原、井本そして郡司は塹壕を飛び出すと、倒れている騎士に駆け寄る。井本が素早く騎士の近くに落ちている剣を蹴り飛ばし、郡司は騎士を抱き起こす。その間小笠原が周囲を警戒する。塹壕からは援護射撃が間断無く続いている。

 「うあ……」

 目の前に築かれている死体の山に顔をしかめる。

 「戻るぞ!」

 井本が小笠原の肩を軽く叩き、撤退の合図をする。再び援護射撃に逆行するように戻る。小笠原も腰だめに構えた小銃を短連射を繰り返しながら退却する。

 そのまま小走りで塹壕へと飛び込むように入る。

 「高林! 騎士の手当しろ!」

 「了解」

 小笠原達は再び射撃位置に戻ったが、敵は指揮官を失ったことと、形勢不利と判断してか元来た方向へと引き返して行った。

 「撃ち方待て!」

 「射撃中止!」

 銃声が止み、各隊は損害の確認に奔走する。後方の塹壕の機関銃は銃身が鈍く赤くなっている。

 「えっ!」

 突然、騎士の手当をしていた高林から驚きの声が聞こえた。

 「どうした!?」「どうしたんですか!?」「どうしたんスか!?」「どうしたの!?」

 小笠原、井本、郡司そして犬山が覗き込むと、高林が騎士の甲冑を外したところだった。騎士の胸元を見ると明らかに膨らんでいる。

 「お、女!?」

 まさかの女性だった。皆は顔を見せあい、ただただ驚くしかなかった。

 



 

今後とも宜しくお願いします。

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