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自衛隊高校 ~異世界実習記録~  作者: 脱色ナス
第一章 未知との遭遇編
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団長と偵察隊編成

間が開いてしまいました。スミマセン

 外地への入口は演習場に北側の小高い崖の麓にあった。周囲をフェンスと鉄条網で囲み、トラックや隊員が往来している。首相の記者会見で見た映像では人1人がやっと通れるほどでしかなかった入口は施設科の手により、トラックが1台余裕で通れるほどに拡張されていた。

 上空ではテレビ局のヘリが旋回している。

 「あんな所が入口なんて……意外過ぎるよ」

 「誰もあんなとこ注意して見ないもんな」

 フェンスの手前で通行許可を貰い、真一文字にトラックは入口へ進んで行く。

 「いよいよだ! 異世界へ!」

 壕の中へ入った瞬間、各トラックから歓声が上がる。そして、

 「あれ!?」

 「こんな、あっさり!?」

 七色の時空の狭間やワープホール、魔方陣等をイメージしていた彼等は意表を突かれた。壕の入口を入り、蛍光灯で照らされた通路を進んでいったら、前方に光が見えて壕を抜けた。そんな感じであったのだ。しかし周りを見渡すと、

 「すげー!!」

 そこにはまさしく北海道……ではなく、広い草原が広がっている。気温は宇都宮より暖かいものの湿度が低くそれほど苦にはならない。

 壕の出口は草原の真ん中に立つ小さな神殿の様な建物だった。建物を中心に約1.5キロの半径では施設科の車両が走り回り、陣地構築が行われている。プレハブ小屋があちこちに立ち、車両と火砲が整然と並んでいる。

 トラックが停止し、生徒達は整然と整列するが、意識は周囲の景色へと向かっている。

 「第二教育隊、異常無し!」

 「第三教育隊、異常無し!」

 「休めッ!」

 「これより我が宇都宮高生徒隊は後方支援隊に編入し、任務を遂行する。各科ごとに部隊へ行き、以降指揮を受けるように」

 後方支援隊は衛生隊、通信隊、輸送隊、補給隊、施設団、火器車両整備中隊からなり読んで字のごとく後方支援を行う。如何なる銃砲も弾薬なくして使用出来ず、隊員も空腹や怪我では動けない。軍事組織の根幹を支える重要な任務の1つだ。

 「ただし、今から呼び出す者は、指定された基幹要員の陸曹のもとへ集合する様に。青柳一士、……。井本一士、小笠原一士は郡司靖雄(ぐんじやすお )曹長のもとへ……」

 「うわっ、呼ばれちまったよ」

 「何だろうね……。とりあえず行こうよ」

 「それでは解散!!」

 生徒達は自分の所属すべき部隊へ駆け足で向かっていく。

 「井本一士、以下2名、集合完了しました」

 小笠原と井本は指定された郡司曹長のところへ行った。宇都宮高に数居る鬼教官の中でも、特に厳しいとして有名な人物である。あのレンジャー過程に挑戦したこともあるほどらしい。

 「よし! 俺達は第三戦闘団へ合流し、指揮を受ける」

 現在この外地には3つの戦闘団が編成されており、偵察、警備、儀仗を担当するのが第三戦闘団である。

 「質問よろしいですか?」

  小笠原は手をグーに握り、顔の横に上げる。これは自衛隊式の挙手である。

 「いいだろう」

 「なぜ、自分達は第三戦闘団へ合流するのですか?」

 「それは合流すれば団長から教えてもらえる。他には?」

 「何も」

 「じゃあ、行くぞ」

 3人は第三戦闘団本部のあるプレハブ小屋へ向かった。



 第三戦闘団の建物の前に行くと、既に戦闘団の隊員が整列していた。

 「中隊ごとに整列しているから、お前達も早く並べ。あの列だ」

 郡司に急かされながら小笠原達も列の後ろへ並ぶ。 

 「第一中隊揃ったな」

 「はい! 集合完了しました!」

 郡司曹長が先任二等陸尉に報告する。

 周りを見回すと現役隊員意外にも生徒隊のメンツが何人かいる。

 「あっ、高林士長」

 小笠原は横に居た女子生徒に声をかけた。

 「あれ、清文君じゃん。君も第三戦闘団?」

 「はい」

 高林梨紗(たかばやしりさ )士長は衛生科に所属する先輩である。以前演習中の怪我でお世話になったことがある。髪を短く切り、かわいい印象の少女である。

 「へ~、そっか、そっか清文君と一緒か~。こりゃ、異世界早々縁起がいいね~」

 「俺もいますよ!」

 井本が横から顔を出すと、高林は心底嫌そうに顔を歪めた。

 「あんたはお呼びじゃないから、私は清文君と喋ってんの」

 「なんで俺だけ!?」

 「清文君はかわいいけど、あんたはむさいの」

 「ひでぇ……」

 「こら!! そこ、静かにしてろ!!」

 「「すみません!」」

 「ほら、怒られちゃうから静かにしてましょうよ先輩」

 高林は小笠原の頭を鉄帽ごしに撫でながら、

 「他ならぬ清文君からのお願いじゃあねぇ~」

 「なんつー女だ……小笠原もよぅ~なに素直になってんだよ」

 しかし、いつまでたっても編成完結式が行われない。自衛隊では誰かの指揮下に入るときには、必ずやることになっている儀式だ。

 陸曹や陸尉達の顔も焦りの色が濃くなっている。すると、郡司曹長がやって来て「小笠原、ちょっと来い」と言った。

 「お前、悪いが本部の建物に行って団長を呼んで来てくれ。2階に上がってすぐ右の部屋だ」

 「了解」

 小笠原は陸曹や幹部達のニヤニヤ視線に気づかずに、駆け足で本部舎の中へ入って行った。

 「なんで小笠原が行くんだ?」

 井本は不思議そうに首をかしげた。

 「あんたがかしげても、可愛くないわよ……。

 知らないの? この三戦の団長は少し特殊な人らしいよ。」

 「特殊……って言うと、特戦群とか、中央即応集団とか?」

 「そういう意味での特殊ではないらしいけど……」

 「なんじゃそら……。結局先輩も分かってないんじゃないっすか!」

 「うっさいわね!」

 「静かにせんか!!」

 「「すみません!!」」

 

 

 小笠原は階段を登ってすぐ脇に『第三戦闘団団長』と書かれた金属プレートが貼られたドアを見つけ、正面に立ち2回ノックした。

 「団長、部隊集合完了しました」

 「はいはい! 今、行きまっ……」


 がっ!


 「ぎゃあああああああああああああああ!!」

 「団長! どうされましたか!?」

 小笠原が慌ててドアを開けると、そこには自分と同じ迷彩服と鉄帽をかぶった女性がドアの前でしゃがみ込んで悶絶していた。

 「足……机の角、ぶつけた……」

 見ると足元は半長靴ではなく可愛い熊のスリッパを履いていた。

 「あの……団長?」

 「手、貸して……立つから」

 「はい」

 差し出された手を掴み女性は立ちあがった。その時、一瞬目が合った。

 「かわいぃーーーーー」!

 そしてそのまま押し倒された。

 顔を上げると、茶色がかった髪を後ろで縛り、目が大きく、柔らかそうな朱色の唇。それでいて双丘が大人の女性を感じさせる。俗世間では美人と言われる人だった。

 「団長! なんですか!? てか、あたってます!」

 「あなた可愛いねぇー! 生徒隊だよね!? 名前は?」

 「早くどいて下さい! 外で皆が待ってますから!」

 「だーかーらー! 名前は?」

 「小笠原清文一士です! 早くどいて……」

 「清文君か~。よしよし、うちの戦闘団所属ね?」

 「はい……第三戦闘団所属です」

 「よし! じゃ、行こうか」

 彼女は立ちあがると、小笠原の手を取って立たせた。

 「私は犬山佳奈子(いぬやまかなこ )一佐よ。これから宜しくね?」

 「えっ、一佐!? あの申し訳ありませんけど……お年はいくつでしょうか?」

 「ん…なになに? 口説いてくれるの?」

 「えっ!! 違いますよ!」

 「ふふっ、やっぱりかわいい。 私はね、今年で27歳になるわよ」 

 「ほんとですか……?」

 通常、幹部課程を進んだ20代の自衛官は三尉、せいぜい二尉と相場が決まっている。一佐なんてのは定年間際の50代くらいの者の階級なのだ。それをとっくに通り過ぎている彼女ははっきり言って異常だ。

 まあ、性格もだいぶ異常なのだが。

 「まっ、細かい事は気にしない、気にしない! ほら、皆が待ってるよ!」

 あんたが待たせてんだよとは言わない小笠原であった。



 「気を付けー!

 小田二佐以下1200名、集合完了しました!」

 ようやく始まった編成完結式。始まるまでは大変だったのに終わるのは超が付くほどあっさりである。

 「御苦労! 私が団長の犬山である。偵察、警備は、その他の戦闘団の任務に比べて地味であるが、この宿営地、輸送科、第一戦闘団の生死に関わる重要な任務である。諸兄らの日頃の訓練の成果を十分に発揮してくれることを望む。以上!」

 先ほどの様子からは全く想像出来ない、凛々しい団長がそこにはいた。

 「疲れた顔してどうしたんだ?」

 「井本……なにも聞くな」

 井本と郡司曹長の会話を聞きながら、小笠原はなぜ犬山団長が若くして一佐という破格の階級を与えられているのかということを考えていたが、いかんせん情報が無い為答えは浮かばなかった。

 「それでは早速、我が戦闘団に任務が出ている。

 これより1個小隊程度の戦力を抽出。深部を偵察し、あわよくば現地人と接触して情報収集を行う。幹部は今から私の元に集合し、編成作業を行う。なお、残留組は通常通り宿営地の警備を続行せよ」

 「解散!」

 

 

 「出発準備は出来たけど、なんでこうなってるんだろ?」

 編成作業が終わり異世界初探索となる第三戦闘団深部偵察隊が出発準備を整えた。小笠原、井本、高林の3人も偵察隊の一員として任務にあたることとなった。それまではよかった。

 「何で僕が一号車の運転手なんですか?」

 「自動車操縦技能訓練は受けたんでしょ? ダイジョブ、ダイジョブ」

 そして隣にいるのは犬山団長であった。

 自動車操縦技能訓練という名前だけ聞くと、高度な技術を身につけられるような雰囲気だが、実際そういう訳では無くて、所謂フツーの教習である。当然17歳なので公道では走られないが、異世界だしという訳で運転手を命じられた。

 「あと一つ。なんでいるんですか?」

 「やだなー! いいじゃん、清文君かわいいし」

 「理由になってませんよ……。普通だったら団長は派遣部隊本部で指示を出すのが仕事ですよね?」

 「あんなオジサマばっかりの場所は肩がこっちゃって、嫌になっちゃうのよね~」

 「……そうですか」

 小笠原は犬山団長への問答をやめた。なにもかもが異常なこの人になにを言っても無駄であることを理解したからだ。

 ちなみに編成であるが、一号車は73式小型トラック(パジェロ )でブローニングM2重機関銃を搭載している。後部座席には郡司曹長、高林、現役三曹の射手と無線手が乗り込んでいる。

 二号車は軽装甲機動車でMINIMI軽機関銃を搭載されている。井本は団長と高林によって強制的に二号車へと移されている。

 三号車は87式偵察警戒車、四号車が96式装輪装甲車、そして五号車は高機動車となっている。

 「とりあえず出発するわよ! ゆけ! 清文!」

 「はい……出発します」

 小笠原はウインカーで出発の合図を送り、各車からの返答があるのを確認してからアクセルを踏み込んだ。

 「派遣本部、こちら深部偵察隊。 これより部隊は偵察を開始する。送れ」

 「本部了解」

 施設科部隊と後方支援隊が見守る中、異世界初探索となる深部偵察隊はエンジンの音も快調に未知の土地へ足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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