ロニエへの面会人
間が開いてしまいましたね。受験の年なので、執筆が休みガチになってしまっています。
犬山団長達とルーシュらが会談を終えて、本部舍から出てきた。
「今日はとても有意義な話し合いができましたね。今後の責任問題は後日そちらに調査結果をお知らせに参ります」
「わかりました。何卒よろしくお願いします」
2人は硬い握手をした。
「あの~……」
1人の兜を目深に被った騎士が、犬山団長に声をかけた。
「なんでしょう?」
「そちらにロニエ・ハルガル隊長が俘虜になっていると聞いています。ロニエはどうしてますか?」
「ああ、彼女なら腕を骨折しましたが、元気ですよ。面会しますか?」
「ぜひお願いします!」
「わかったわ。ええと、清文君は……」
小笠原は広場の方で小隊の仲間と一緒にいた。
「いいな~小笠原は、犬山団長に気に入られてて」
「僕は好きで気に入られてるワケじゃないですって、ていうか三曹は奥さんいるんですから、そういうこと言っちゃ駄目ですよ」
「へへっ、結婚2ヶ月目~」
三曹は嬉しそうに結婚指輪を見せびらかした。
「早く会いたいぜ……」
「それって死亡フラグですか?」
「ば、バカヤロー! 縁起でもないこと言うなよ!」
「「「ハハハハッ!」」」
のんびりとした時間だった。
「清文君~!」
犬山団長の呼ぶ声がした。
「ほーら、小笠原一士呼ばれてるぞ!」
「うへぇ、行ってきます」
小笠原は立ち上がると、犬山団長の方へ走り出した。
「なんですか?」
「使節団の方々をロニエさんの所にご案内して差し上げて」
「了解」
「では、ルーシュ侯爵閣下。後の案内はこの小笠原一士が担当しますので、なんなりとお申し付け下さい」
「感謝します。イヌヤマ殿」
「ではこちらです」
小笠原はルーシュ侯爵達と共に歩き出した。ロニエが収容されているのは、村の集会所だった場所で現在は衛生科が野戦病院として使っている。
歩いてる間もルーシュ侯爵達は、車両や火砲を物珍しそうに見ている。
「これらは皆、君達の武器なのか?」
「はい」
「鉄の車に鉄の象がたくさん……」
野戦病院について二階に登り、ある部屋の前で止まって、ドアをノックした。
「はい?」
「ロニエさん、面会ですよ」
「えっ? 面会?」
ドアを開けてルーシュ侯爵達を部屋に通した。
「ル、ルーシュ侯爵様!?」
「無事でなによりねロニエ」
ロニエは自衛隊の患者衣を着て、ベッドの上で身体を起こした。
「ルーシュ侯爵様、私は……なんとお詫びしてよいやら……」
ルーシュの顔を見たロニエはさめざめと泣き出した。
「自分が不甲斐ないばかりに……」
「ロニエ、あなたの部隊は半数近くが帰らず、帰ってきた者も生業に復帰出来る者は少ない……」
ルーシュは慰めるどころか、露骨に非難するような言葉を吐いた。
「あなたは指揮官として間違った選択をしたかもしれません。無闇に攻撃すべきではなかったでしょう……」
そこまで言ったところで、ルーシュの表情は優しいものに変わった。
「それでも、領内の治安を守らんと、毅然として立ち向かったことは賞賛に値します」
「ルーシュ侯爵様……」
「あなたの身柄は、もう少しニホン側に預けます。後少しで帰れるようにしますから、辛抱なさい」
「はい!」
ロニエの顔は涙で凄まじいものになっていたが、それは重圧からの解放ゆえであることは、誰の目にも明らかだった。
小笠原がやりとりをポカンと見ていると、
「オガサワラという名前でしたね?」
「はい」
「彼女をあと少しよろしくお願いします」
「はっ! そのように衛生隊や犬山団長に伝えておきます」
「うむ、感謝する」
すると、あの兜を目深にかぶった騎士がロニエに抱きついた。
「ロニエ無事でよかったー!!」
「ぎゃあ! 誰だお前!?」
兜がずれて、見えるようになった顔をロニエが見た。
「なっ!? 姫ング……!」
口に手を当てられた。
小笠原に聞こえぬようにロニエはヒソヒソと語りかけた。
「姫様なんでこんな所に?」
その人は見紛うなく、カノヴィール王国王女、アンナ・カノヴァン・ドゥーリットであった。
「もちろん、あなたの事が心配でしょうがなかったに決まってるじゃない」
「どうせ王宮が退屈だったからですよね?」
「……どうして、あなたといい、ルーシュといい私のことをそのように言うのかしら?」
「日頃の振る舞いからです」
アンナ王女はヤレヤレと頭を振った。
「とにかく、あなたのことが心配だったのは本当よ。父上はルーシュを支援すると決められたわ。私はその先兵として来たわけ」
「じゃあ、赤竜騎士団も来てるわけですか?」
「もちろん」
「実戦を一度も経験したことのないのによく来ましたね……」
するとアンナ王女の目の色が変わった。
「確かにそうかもしれませんが、あなたを助ける為の軍勢です。なんなら今からでも、あの見張りのニホンの兵士の首を落としてみせましょうか?」
アンナ王女はそう言って剣の柄を握り、小笠原のことをチラリと見た。
「覚悟は伝わりました! だからやめて下さい!」
「ふふ、わかれば良いんですよ」
ロニエは胸をなで下ろした。そして姫様は絶対怒らしてはいけないという事を学んだのだった。
「それではまた今度」
ルーシュ侯爵達はロニエとの面会を終え、犬山団長以下自衛官の見送りを受けながら帰って行った。
「外地での一歩ですね」
遠ざかって行くルーシュ侯爵達を見ながら、松岡外地担当官は、横に立つ犬山団長に呟いた。
「一歩? とんでもない! まだまだ半歩にも満たないわ。これからが長いのよ、特にあなたみたいな外交官は……」
「そうでしたね、私らしくもない……」
こうして日本にとって、外地での初めての外交会談は終わったのだった。
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