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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第91話 幼女、襲われる

「死ねぇえッ!」


 それは昼を過ぎたヘールの街の通りで響き渡った声だった。

 通りを歩いていた者や露店を出していた者たちが怯えた目をして声の方へと視線を向けると、そこにいたのは褐色肌の幼女とそれと同じ肌の男女であった。言葉だけを鑑みれば彼女らが親子であろうとも考えられるのだが、実態はまったく違う。

 何しろ男女は身に付けた装備こそ立派なものだがその首裏には奴隷印が刻まれていて、その彼らの前にいる幼女は豪奢な衣と装飾品を身に付けていた。

 それは今やこの街の主となったベラと、奴隷のバルとエナであり、彼らの前には襲いかかってきた五人の男たちがいた。街の住人たちの悲鳴が轟き騒然となるが、渦中にいるベラはヒャハッと笑みを浮かべてその様子を眺めた。


「にい、しぃ、ごと……いい加減減ってきたのかもねぇ」


 指折り数えながらそう口にするベラの前にバルとエナが出て、共にカタナを抜いて迫る男たちへと駆けていく。


「ああ、ひとりは残しておきな。後はっちまって構わないから」


 己が握ったウォーハンマーをプラプラとさせながら指示をするベラの前で悲鳴が上がり、次々と襲撃した男たちが切り裂かれていく。


(まあ、今はこんなもんかねえ)


 目を細めたベラの視線の先にはエナがいた。バルの技量は把握しているが、エナについては未だに鉄機兵マキーニが用意できていないのでその実力は未知数ではある。生身での戦闘能力については護衛を任せられる程度ではあるが、いまいち物足りないとベラは感じていた。


(ブランクが長すぎたのかね。まあ、当面はバルに任せるかい)


 何しろ性奴として二年はミルアの門を弄られているだけの日々だったわけだ。勘を取り戻すのだけでもしばらくはかかるだろうと。

 そう考えているベラの前では男がひとり片腕を斬られて地面に這いつくばっていて、すでにその他の連中は骸となり果てていた。さらにはその前で「少しは昔の感覚が戻ってきたか」「イチイチ聞くんじゃないよ」などと言ったギスギスした兄妹の会話が繰り広げられていたが、ベラは特に気にせず生き残った男の前に出た。


「まったく、あのジェドってのは思った以上に慕われてたんだねえ」

「貴様らが、ジェド様をッ、仲間をッ!」


 のぞき込むように見るベラに、倒れていた男は血走った目で怒りの言葉を吐く。そして男は残された右腕に持った剣を振り上げて、ベラへと斬りつけようとしたが、


「元気が良いねえ」


 そう言いながらベラが振り下ろしたウォーハンマーが男の右肩を砕く。その場でさらに悲鳴が轟き、痛みに男が転げ回った。


「エナ。こいつを連れてきな。好きに吐かせて良いよ」

「はいっ」


 その様子を見てからベラは振り向いてエナに指示をする。それに元気よく頷くエナにバルが渋い顔をした。そのバルの反応の意味を理解するベラは少しばかり肩をすくめたが特に撤回もせず自分はバルをそのまま護衛として連れて領主の館へと歩いていくことにしたのである。



「で、どうなんだい。あの娘は?」


 しばらく進んだ後に、ベラが口を開きバルに尋ねた。対してバルは少し考えた後に口を開く。


「ある意味ではブラゴに感謝すべきだろうな。身体の方は痛んだ部分はないが長い奴隷生活で硬くはなっているようだ。後は単純に鍛錬不足だな」


 バルがそう指摘する通りに、エナの動きには硬さがあった。


「それが解消されればデュナンとやり合えるくらいにはなるだろう。鉄機兵マキーニの腕はなんとも言えないが、少なくとも筋は悪くなかったはずだ」


 バルがかつてを思い出しながらそう口にした。

 短い期間ではあるが主が固定される前の鉄機兵マキーニを使って操縦訓練をすることはある。その当時の結果からバルほどではないにしてもブラゴやエナにも適正があったのをバルは把握している。


「問題なのはアレの嗜好だ」

「ハッ、あんたも精々気を付けるんだね」

「アレに遅れをとるなどあり得んが……身内としては少々な」


 バルがベラを恨めしげな目で睨みながらも言うが、ベラにしてみればバルもどっこいどっこいな印象ではあった。


「は、人様の趣味をとやかく言えるほどアンタも上等な人間じゃあないだろうに」

「……そうだがな」


 それからバルは詰め所にエナに連れて行かれた男のことを思い出して哀れんだ。ブラゴの一件以来、妙な嗜好に目覚め始めた妹にジャダンと同じものをバルは感じていた。


「先の男も情報がとれる前に死ぬかもしれん」

「別に構わないさ。どうせ裏が知れたところで大したこともない。それでエナが慣れてくれるんなら良い経験になったってだけさね」


 そう言ってベラがヒャッヒャと笑う。

 ベラがヘールの街を落とし、ラハール領を落として二週間。三日前に二十機の鉄機兵マキーニが攻めてきたのを最大としてラハール領の各地にいるジェドの部下たちの襲撃が続いているが、状況はある程度は安定していた。

 また次々とジェドの元部下たちが返り討ちにされる様子を見ているヘールの街の住人たちはさらにその牙を抜かれて、怯えていた。


 それからベラは、三日目に食事に毒を入れた料理人などの晒し首を横目に通り過ぎなから領主の館へと入っていった。




  **********




「以上が定時報告となります」


 領主の間で従者パラの声が響いた。

 ベラが街の視察を終え、今は自分の部屋としている領主の間に戻るとそこではパラによる報告が待っていた。

 その内容を言えばラハール領の各街等の現状についてであり、従順4、拒否2であるとのことで、拒否している街はどちらもジェドの部下が反抗し占拠している状態とのことであった。


「なるほど。ま、分かっていたことだけど中々にジェドは良い男だったみたいじゃあないか」


 そう言ってベラが笑う。己が殺した敵が未だに牙を突き立ててきているような感覚はベラにとっても悪いものではない。むしろ好ましいとすら思える。

 そもそもがベラたちが行ったのはどう言い繕っても侵略行為そのものである。後ろ盾にルーイン王国があろうとジェドに治められていた住人にとってそれは変わらない。

 また現状では手駒の少なさからラハール領を完全に統治することもベラには難しかった。またそうするつもりもベラにはなかった。


「それで、ムハルド王国からは変わらぬ感じかい?」

「はい。こちらからの呼びかけにもこれまでと変わらぬか否かの問い合わせぐらいのようですね」


 懸念となっているムハルド王国については、ジェドと組んでルーイン侵略を行う予定であったという資料もベラは掘り起こしていた。

 それを公表すれば当然ムハルドも突っぱねるであろうが、ムハルド王国としては現時点では動かないという選択肢を選んだようであった。


「それと宝石や貴金属類などの回収についての進行はある程度完了しています。領の売却については一応の見積もりも出ていますが……」

「なんだい?」


 口ごもるパラにベラが眉をひそめる。それから意を決したようにパラが尋ねた。


「本当にここを手放すおつもりで?」


 その言葉にはベラがニヘラと笑って頷いた。


「そりゃあそうだ。こんなところにいたんじゃあ飼い殺されて終いだってのはジェドを見てれば分かるさ。今の手駒で管理しきれるとも思えないしね」


 そう口にした通り、ベラは早々にこの領地を売り払おうとしていた。すでにベンマーク商会に連絡を出し、ラハール家に連なる貴族へと打診もしている。


「ここはムハルドとの緩衝地帯だよ。まあジェドみたいにあっちに寝返ってルーインを攻めるのも悪くないが、兵隊はぶっ潰しちまったし」

「それはそうですが」


 ジェド・ラハールはルーイン王国への侵略を企てていた。ひとつの街に置いておくには過剰すぎる鉄機兵マキーニの数があったのもそれが理由であったが、それもほとんどをベラたちが破壊してしまい残った鉄機兵マキーニや乗り手はベラたちには友好的とは言い難い……というよりも明らかに敵対していた。

 そんなラハール領ですら手に余っている現状でルーインに侵略行為を仕掛ける意味などあるはずもなかった。

 そういうこともありベラにしてみればここに居を構えるよりは、貴族に領地を売り払った金で傭兵団を大きくしていく方向でことを進めるように考えていた。


「あたしゃ、ここに骨を埋める気はないのさ。ムハルドにもルーインにも飼い殺される気もね」


 そう言いながらベラが椅子にもたれかかかる。

 そのベラの答えはパラもすでに聞かされているものではあった。

 もっともパラはその先をまだ尋ねていなかった。

 デイドン・ロブナールがベラに従者を褒美として渡すとしたとき、パラは己から志願してベラの元に行くことを決めていた。

 デイドンに不満があったというわけではないがパラはモルド鉱山街でベラと共にして更なる可能性を感じたからこそベラを選んだ。だからこそパラはベラに尋ねる。


「それでは、どうするおつもりで?」


 その先、奪った領地を捨ててどこに赴くのかと?

 対してベラは天井を見上げながら口を開いた。


「モーリアンに行く」


 傭兵国家モーリアン。それはかつてクィーン・ベラドンナが治めていた国の名であった。

次回更新は11月20日(木)00:00予定。


次回予告:『第92話 幼女、噂を聞く(仮)』


妹ちゃんはブラゴお兄ちゃんで楽しんだことで、どうやら新しい遊びを覚えたみたい。

自分なりの楽しみを覚えると毎日に潤いが出てきます。妹ちゃんも日々楽しくて過ごせているようでベラちゃんもホッとひと安心というところでしょうか。

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