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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第75話 幼女、お願いをする

「このたびは町の者からの男爵様への非礼と狼藉、誠に申し訳ございませんでした」


 ベラドンナ傭兵団への襲撃のあった日の翌朝。

 この町では二番目に立派なものだとされる宿屋の一室では、目の前でソファーに腰を下ろしてふんぞり返っている幼女に対して老人が深々と頭を下げて謝っていた。

 その光景は客観的に見ればシュールで笑えるものではあったが、謝罪している老人にとっては今まさに命を賭けていた。なお、この幼女とは言うまでもなくベラ・ヘイローその人であり、老人とはこの町長であった。

 元よりモーガンに好き勝手にされ続けて、この町の中ではまるで立場の無かった町長ではあるのだが、現時点においての町の責任者は彼である。すでにモーガン亡き後、町人である彼らの貴族への反逆罪を問われるのは必然的にこの老人となるのであった。


「ま、今回が不測の事態だったことにしたいあんたの言い分は分かるさ。誰が本当に悪いのかってこともね。だけど、あたしらが見つけたときには首謀者は死んでいたんだ。ということはその責任は一体どこにいくんだろうね? あたしにあんたは何をしてくれるんだい?」

「それは……」


 ベラの問いかけに怯える町長の目の下に隈ができていた。昨晩は宿屋を変えたベラが早々に眠ってしまったために、町長はベラへの面会を許されず、部屋の前で眠らずに一晩待たされていたのだ。

 しかし、町長はそうせざるを得なかった。モーガンの子飼いの鉄機兵マキーニ乗りは全滅し、現時点におけるこの町の戦力は鉄機兵マキーニ五機のみ。

 それらの乗り手はモーガンの一派よりも実力が低いのだから、目の前の幼女の持つ戦力に勝てる目など無かった。

 かといって今鉄機兵マキーニに乗っていない生身のベラたちに挑めば……といえば、血の赤に彩られたこの町一番の宿の様子を見れば明らかであった。

 となれば今町長にできるのは目の前の幼女に謝罪し服従することだけである。殺せばどうとでもなる相手ではないのだ。目の前の幼女は間違いなく町を壊滅できる存在なのだと町長は理解していた。表向きはひたすらにご機嫌を伺い、許しを得るしかなかった。

 また問題なのは目の前のベラドンナ傭兵団の団長が幼女だということもあった。見た目は上等そうな白いコートを羽織り、煌びやかな装飾品を身につけて悪目立ちしている子供だが、その顔は明らかにわがままを通り越して傲慢そうで、その口調も決して人の言うことなど聞きそうもない上からのものだった。

 町長は親の顔が見てみたいとも思ったが、それはすぐさま頭の中で訂正する。どう考えてもまともではない、これの親になど絶対に会いたくはなかったのだ。

 そもそも何故このような幼女が爵位を持つ貴族で傭兵団を率いているのかも町長にはまったく分からなかったが、しかし立場の違いだけははっきりしている。目の前の子供は権力でも暴力でも財力でも町長よりも上で、この幼女が癇癪でも起こせば、町長は何もかもを一瞬でなくしてしまう可能性もあった。

 それ故に町長は己の孫よりも小さい幼女に怯えていた。怯えきっていた。


「うん?」

「ッはぅ!?」


 そんな町長の後ろの扉からノックの音が響き、町長がビクッと震えた。その様子にベラは苦笑しながら扉の方を見てその先の気配を感じて「開けてやりな」と後ろに控えていたパラに声をかける。


「はっ、了解いたしました」


 そして、パラが開いた扉の先にいたのはバルであった。


「ただいま戻った」

「ああ、どうやら成果はあったようだね」


 そのバルは両腕に生首を掴みながら部屋の中へと入り、続いて全身をボロボロにして両手を縛り付けられた男がよろよろとしながらバルに促されて中に入ってきた。


「ろ、ロマオ、お前なんで……?」


 町長の声にベラが眉をひそめる。


「知り合いかい?」

「ワシの……息子です」


 ベラの問いに掠れるような声で町長が返す。その町長の前にバルが生首をふたつ落としてゴロゴロと転がした。


「ヒッ!?」


 その首を見て悲鳴をあげる町長を気にせず、バルが口を開く。


「慌てて町を出ようとしてた連中だ。問いつめたら襲ってきたので返り討ちにした。とりあえずはヴォルフに見張りを任せて私は首だけを持ってきたわけだが」


「ご苦労だったねバル。それで町長、この連中に見覚えはあるかい?」

「は、はい。モーガンの手下です。たしかジェッツとかいう……もう片方は名前までは分かりません」


 そう言いながら町長がロマオに視線を向けると、バルが口を開いた。


「この男は連中と共に町を去ろうとしていた。殺意はなかったから殺しはしなかったが、抵抗はしたし、質問にも答えなかったので少し手荒い真似をさせてもらった」


 バルの言葉に町長がロマオを改めて見た。全身に殴打の後があり、指も何本か折れているようだった。当の本人はすでに心の方も折れているようで涙を流し嗚咽しながら「すみません……すみません」と繰り返しているばかりであった。その様子にベラが肩をすくめて口を開く。


「こりゃあ、どういうことだろうね。なんで町長の息子がモーガンの仲間と組んで町を出ようとしてるんだい。こりゃあ、あれかい? やっぱりあんたらとモーガンは仲好しこよしであたしらぶっ殺すつもりだったってぇわけかい?」


 ベラの鋭い眼光に、町長はこの世の終わりのような顔をする。事実として町長を取り巻く世界は幼女の言葉次第では終わりを迎えることになる。


「ロマオ、お前は……」

「我々を襲撃者として伝えるようだったらしいな」

「そんなことはッ!?」


 町長の言葉にバルは首を横に振る。


「直接確認した。そうだな?」


 バルの言葉にロマオがコクコクと頷いた。それを見て町長がうなだれる。そして、諦めたように肩を落とすとボソボソと口を開いた。


「わ、ワシらはジェド様へは逆らえません。我々にはあの方に従う義務があるんです。あなたがたのことを報告しなければ町が……」


 その言葉をベラは鼻で笑う。


「知ったこっちゃないね。こっちはいきなり襲われて、身を守ったら襲撃者扱いされたんだ。この鬱憤、この町全部の血であがなってもらうしかないかもしれないね」

「それは……あんまりです」


 絶望的な顔の町長を見てベラが笑った。あまりにも都合のいい開き直りと被害者根性に笑うしかなかったとも言える。


「ハハハハハ、あたしらを売ろうとした男の言うことかい?」

「で、ではどうすれば良いんです? 我々は、ワシはッ」


 その言葉にズイと腰をあげたベラの顔が町長に近付く。その瞳に町長が狼狽えながらも、目を反らせなかった。逸らせば殺されると直感的に悟っていた。


「あたしの言うことに従いな。言うことさえ聞いてくれりゃあ、あたしらもとっとと去るし、あんたらへのお咎めもなしだ。どうだい、夢のような話だろう?」


 その言葉には町長の顔が若干明るくなり頷いた。


「ええ、それはもう。ですが、それはどう言った……」

「なーに。そこの町を抜け出して連絡しようとした連中と同じことをしてくれりゃあいいのさ。ただし、伝言はこうだ」


 それから続くベラの口にした言葉を聞いて、町長は目を丸くした。とても正気とは思えなかったのだ。


「なんてことをっ、一体何を考えて」


 しかし、町長が叫んだ次の瞬間には町長の前にあるテーブルが振り下ろされたウォーハンマーによって叩き壊された。凄まじい破壊音と共にテーブルが真っ二つに割れ、町長は顔を真っ白にしてへたり込む。

 そして、アンモニア臭とともに下腹部が濡れだした町長に向かってベラが「ヒャッヒャッヒャ」と笑いながらさらに顔を近づける。それからウォーハンマーを降ろし、両手で町長の顔を掴んでまさしく目と鼻の先でベラは告げる。


「いいからやりなよ。そうでないならあんたの頭がこうなるだけさ。何ならその後に次の町長にはそっちのロマオってヤツに指名して実行させてやろうかい? 駄目ならあんたの孫にでもやらせてもいいんだよ」


 そう口にしたベラの言葉に町長はもう思考することを放棄せざるを得なかった。目の前の気狂いにしか思えない幼女の命令を飲むしかなかった。それは町長の心が完全に折れた瞬間でもあったのだ。




  **********




「良かったのか」

「何がだい?」


 町長との話も終わりいくつかの物資を頂戴して、ベラドンナ傭兵団はその日の内にミハエルの町を去っていた。そしてしばらくした後、鉄機兵用輸送車キャリアの上でバルがベラに問いかけたのだ。


「内容もそうだが、あの男……訂正の伝達をするかもしれないぞ」


 バルのその懸念に、ベラは「ヒャッヒャ」と笑う。


「構わないさ。十の町に伝達を届けたんだ。全部を止めることなんて出来はしないし、訂正しようが関係もない。伝えたことがジェドに届きゃあそれでいいのさ」


 ベラはそう言って、すでに見えないミハエルの町の方に視線を向けた。


「ま、あの様子じゃあ、そんな真似ができるくらいになるのにも数日は要するはずさね。今は安堵すらできずにただ呆けてる頃なんじゃないかねえ」


 そう言うベラにボルドが訝しげな目で尋ねる。


「つか、何したんだよ。あの爺さん、もう哀れ過ぎて声もかけられねえぐらいの情けねえツラしてやがったぜ」

「ヒヒヒ、目の前で爆破でもしたら心臓も一緒に爆発しそうでしたよ」


 ジャダンがおかしそうに笑う。ベラは少しだけ目を細めながらボルドの問いに答える。


「なーに、大したことじゃあないよ。ただ単にジェドに決闘法フェーデを申し込んだだけさ」

決闘法フェーデって、何を理由にだよ?」


 決闘法フェーデを仕掛けるからには、その理由が必要だ。理不尽であろうとどうであろうと。そしてボルドの問いにはベラが歪んだ笑みで答えを口にする。


「そりゃあ、あれだよ。あたしの奴隷から奪った荷物の回収と、その詫び賃にラハール領をいただきますからよろしくお願いしますってね。それができないなら決闘法フェーデを仕掛けます……と、そう伝えるように頼んだんだよ」


 その言葉にボルドは呆れ、ジャダンは口が裂けんばかりに笑い転げた。一方でバルはベラの伝言には不満があるようで顔を背けていたが、主に不平を言うほどのものでもないようだった。

 そして、ベラドンナ傭兵団は腐り竜ドラゴンゾンビに牽かれ先へと進んでいく。向かう先はラハール領の中央街ヘール、ジェド・ラハールの本拠地であった。


次回更新は9月18日(木)0:00予定。


次回予告:『第76話 幼女、包囲される(仮)』


愛らしい幼女の頼みにはお爺ちゃんもタジタジです。もしかすると自分の孫と重なって見えていたのかも。

もう少し甘えてあげても良かったかもしれませんね。

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