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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第286話 少女、狙われる

『中の様子はどうだった?』

『連日の戦闘だ。張り詰めてはいるが疲れている兵も多い。魔獣使い テイマーの魔獣でもこちらを察知できる種はいなかったな』


 今は日の昇る時間よりもわずかに前の、普通であれば寝静まった頃合い。そんな時間に要塞アルガンナ周辺の何もないはずのひらけた場所では、機体同士の通信によって何者かが会話を行なっていた。

 そして、その何者かとはイシュタリアの賢人ロイ直属の実験部隊デュナン隊に属している四機の混機兵キメラに乗っている者たちであった。

 その場にいる混機兵キメラたちはすべてマッシブカメレオンの因子を得て光学迷彩を可能とした機体だ。彼らは昨日のローウェン帝国軍獣機兵ビースト軍団の侵攻に便乗して要塞アルガンナの近くまで接近し、こうして深夜まで見つかることなく潜んでいた。

 そもそもの話ではあるが昨日の戦いはローウェン帝国軍がヘイロー軍の増援に探りを入れるもの……と見せかけて、彼ら混機兵キメラたちが要塞に接近するためのカモフラージュをこそ真の目的としたものだったのだ。それを知っているのは獣魔ドルガを含めたごく少数ではあったが。


『ベラ・ヘイローの部屋は?』

『確認済みだ。ただ……』

『ただ、なんだオーグ?』

『いや……何でもない。大丈夫だ』


 オーグと呼ばれた男は少しだけ逡巡したが問題なしと判断して首を横に振った。

 彼は一度部屋の確認をした際、近付いた瞬間にベラが窓際を確認しようと視線を向けていたことを思い出したのだ。もっともその後の様子からして気付かれた……とは思えなかったし、無意味に仲間を不安がらせる必要はないとも考えていた。


『それとアイアンディーナと竜撃隊のガレージにはドラゴン二体と自律している小型の機械竜がいた。鉄機兵マキーニと違い、即座に動くだろうからこちらから仕掛けるのは厳しいだろう。かといってオルガン兵団かルーイン王国軍を狙うよりは……エルシャの王子か将軍を潰した方が良いかもしれないが』


 戦力の要はヘイロー軍だが彼らはあくまでエルシャ王国軍の協力だ。エルシャ王国軍の頭を潰しておく方がその後の戦争では有利になるのでは……というオーグの提案に隊長であるアルキスが『狙うのはベラ・ヘイローたちだ』と返した。


『我々にとってローウェンとエルシャの……ましてやあのドルガの勝敗などなんの意味がある。それとも生きて帰って褒美でも望むつもりかオーグ?』


 その問いにオーグが苦笑して『いや、そうだったな』と返した。


『ここで俺たちの幕を降ろすんだったな』


 ローウェン帝国軍賢人実験部隊デュナン隊。

 彼らは今、獣魔ドルガの指示によってベラ・ヘイローの暗殺を目的として動いていた。生身でも光学迷彩を使えるほどに変異しているオーグが要塞内を探索し、その間アルキスたちは光学迷彩持ちの機体でこの夜更けの時間帯までここで待機していたのである。

 暗殺のために人数は絞られたため、彼らの仲間たちは未だローウェン帝国軍の陣地にいるが、その場にいない全員の分まで彼らは今回ですべてを終わりにするつもりでいた。


『ああ、そうだ。ベラ・ヘイローに刻むことこそが俺たちの生きる意味だ』


 その言動も行動も支離滅裂と言っても良いだろうが、彼らの中では論理的に成立しているものとなっていた。まったく正常であるのに、一部分だけは狂っている。それがひとりだけならばまだしも、彼らは全員がそう判断していた。故に原因は共通しているものなのだ。

 ローウェンを憎むことも攻撃することも許されぬ条件付けをされている彼らにとってベラ・ヘイローとは一種の吐け口であった。それでもベラと対峙する前はそこまで歪んではいなかった。実際に戦って、さらにはドルガに接触を禁じられ、徐々に歪みは肥大していった。そして、もう彼らは止まらない。歯止めは外された。


『デュナン団長。あの人の名を刻む』

『ベラ・ヘイローに忘れさせはしない』

『パラ、ボルド、ジャダン……彼らにもデュナンの名を』

『そうだ。忘れるな。そのためのこの機体だ。そうだな『ザッハナイン』』


 アルキスの機体がブルルと震えた。

 それはかつてのベラの奴隷デュナン・オルトソードの愛機にして、今はアルキスの混機兵キメラと化した『ザッハナイン』。それはデュナンの忘れ形見であり、彼らの象徴とも言える存在だ。かつてこの機体が装備していた蛇腹大剣スネーククレイモア強化の四肢アッパーリムも『ザッハナイン』が混機兵キメラ化した際に変異したもののまだ残っている。


『我らは死ぬ。だがエルシャの王子や将軍を殺してもデュナン団長に手向けにはならない』

『ああ、そうだ。我らもベラ・ヘイローもベラドンナ傭兵団もみなデュナンの名を刻み、地獄にて再会を!』

『ではデュナン隊、最後の作戦を開始する!』


 アルキスの声と共に四機の混機兵キメラが一斉に動き出す。

 機体に乗ったまま要塞内に侵入することなど彼らには造作もないことだった。何しろその機体に宿っているのは光学迷彩と共に壁を登ることにも特化したマッシブカメレオンの因子であり、アルキスたち混機兵キメラ部隊に本来求められていたのは敵地に潜入しての奇襲であり、今彼らが為そうとしている暗殺であった。

 そして、彼らは本来の力を発揮できる舞台を整えた形でベラ・ヘイローへと挑むべく動き出したのである。


次回予告:『第287話 少女、夜這いをされる』


 真夜中の出会いが近付いています。一夜の過ちは少女を大人に変えるのでしょうか。それとも?

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