表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

286/390

第285話 少女、報告を受ける

 痛み分けで戦いが終わった後の要塞アルガンナ内ガレージの一角。そこには今戦闘においてもっとも戦果を挙げた亜種竜機兵ドラグーン『ヘッズ』とその乗り手マリア・カロンゾが戻ってきていた。

 もっとも戻ってきた際はともかく、この場での彼女らへの称賛の声はまったくなかった。それは彼らがマリアの戦果を認めていないから……というわけではない。何かしら声をかけて反応されれば、否応無しに暴れられるのではないかという暴力に対しての怯えによるものだった。

 なおマリアの側近は皆死亡しているため、現在の彼女の身の回りはフォルダム騎士団が現在固めている。さすがにフォルダム騎士団もベラやリンロー、ガラティエなどとも共に戦ってきただけはあり、それなりの胆力を持ってはいるのだが、それでもマリアと『ヘッズ』には触れるべきではないという空気があった。

 対して機体から出てそばの椅子に座っているマリアの顔には肉食獣の笑みが浮かんでいた。戦いが終わった後も彼女は先ほどまでの戦闘を思い出して悦に入っていたため、周囲が彼女に触れなかった判断をしたのも実のところ正しくはあった。触れば不機嫌になり当たり散らされていた危険性もあったのだ。

 何しろ彼女にとっては初めての大戦果だ。マリアが四王剣になってから自身の力で活躍したことなどここまでなかった。戦いになってもその多くは父の配下たちが代わりを務め、マリア自身は四王剣という名の御輿を演じ続けて来た。

 それが今やどうだ。殺して、殺して、殺し尽くした。

 やってきた獣機兵ビーストを燃やし、噛み砕き、潰し、蹂躙してやった。興奮は冷めやらず、先ほどまでの戦いの余韻は彼女の心を焦がし続けている。今の自分の状態を端的に言うならば生まれ変わった……という表現が一番しっくり来るとマリアは考えていた。


「よぉ。随分と雰囲気変わっちまったみたいな」

「あ、リンロー総団長副官ですか。変わった……というのは悪い意味ではないですよね?」

「ハッ。人としては最悪だろうが、戦士としてはまあ悪くはないだろうよ」


 遠巻きに見ているフォルダム騎士団の面々をチラ見しながらリンローが苦笑まじりにそう返す。なぜリンローがエルシャ王国軍のガレージにいるかといえば、彼はエルシャからの要請もあって同類であるマリアの様子を見てきていたのだ。またリンローにとっては将来的に部下となるであろう者の品定めの意味もあったのだが……


(周りビビってやがるなぁ)


 リンローが周囲を見渡すと、フォルダム騎士団こそ態度には出ていなかったが、そのほかのエルシャ王国軍の兵たちは腰が引けた形でうかがうようにマリアとリンローを見ているようだった。

 弱兵とはいえ戦慣れはしているはずの彼らをそこまで怯えさせているのだ。それほどまでに亜種竜機兵ドラグーン『ヘッズ』の戦闘は異常であったということだろう。

 戦い方も鉄機兵マキーニよりも巨獣に近いものがあり、味方であるにもかかわらず近付けば自分も襲われるのでは? ……と思われても仕方がなかった。

 とはいえ、最大の懸念であった味方殺しは行われていない。戦闘中の意識はかなりドラゴンに近いものになっていたようだが、敵味方の区別は付いていたようである。


「そうですか。それでなぜここに?」

「お前さんの様子を見に来たんだよ。マギノの爺さんももう少ししたら来るだろうが……どうやら以前の甘さは消えたみたいだしな」


 自身の成長によるものではないにせよ、闘争本能の増大がマリアの戦士としての覚醒を促しているとリンローは察していた。そのありようはローウェンの獣機兵ビースト乗りに近いだろうが、『ヘッズ』の戦闘力はひとまずは現状でも十分過ぎる。


「そう……ですか。戦士として認められたのであれば……ふふ、嬉しいですね。ふ、ふふ」


 初対面のときとはまるで違うマリアの様子にリンローが肩をすくめる。その表情からリンローの脳裏に狂犬という言葉が浮かんだが、誰彼構わず噛み付いているわけではないのだから大目には見るべきだろうとも考えていた。

 すでにベラはダイズと取引をして、このマリアを引き取ることは確定している。制約ギアスこそ組み込まれてはいないが現時点でマリアはベラを主人とした奴隷印を刻まれているため、形式的にはベラの奴隷となっているし、今後は協力関係になるとはいえエルシャ王国軍に『ヘッズ』を渡すつもりもなかった。

 またマリアの身柄は『四王剣の名』と共にベラへと渡されることにもなっており、それはつまり傭兵国家ヘイローがエルシャ王国の四王剣という権威を手に入れることともなる。そして、それはその後に向かうであろうモーリアン王国のことを見据えてのことであった。




  **********




「それで戦闘後のマリアの様子はどうだい?」

「マギノ博士からの報告はまだですが、リンロー総団長副官の話では思考が機体に引っ張られてはいるものの使えないほどではない……とのことでした」


 リンローがマリアの様子を見に行ってから数刻後、エルシャ王国が用意した要塞内の客室でベラはパラからの報告を受けていた。

 本日の戦闘におけるベラ側の被害はゼロ。そもそも出撃していないのだから当然ではあるが、獣機兵ビースト軍団の布陣が露骨に増援の戦力を調べるためのものであったために今回はエルシャ王国軍のみでの出撃としていたのだ。

 また次の決戦に温存させるべく、ガイガン率いる第一竜撃隊、リンロー率いる第二竜撃隊、ルーイン王国のモーディアス騎士団も待機こそしていたが今回の戦闘へは不参加とさせていた。


「なるほどねえ。ま、使えるならいいさ。マギノも今回は実益よりも好奇心を優先させていた節があったし、心配だったんだけどね」


 ベラの言葉にパラが苦笑する。マギノの気質からすれば、ベラの言う通りに今回は良い結果を……というよりもどういう結果が出るかの実験をしていたようにパラにも感じられていた。元よりベラはマリアを『ヘッズ』に乗せることには積極的ではなく、四王剣という権威を得るための付属程度にしか考えてはいなかった。だからマリア自身も使えるというのであれば万々歳と言える。


「それと、あっちが予想以上に引き際が早かったのは気にはなるね」

「それはベラ様。相手にはまだ他にも何か狙いがあった……ということでしょうか?」

「さてね……うん?」


 不意にベラが窓の外へと視線を向けた。その様子を不審に感じたパラが同じように窓の外を見ながら「何か?」とベラに尋ねた。


「ああ、いや……気のせいかね」


 そう口にしたベラが、すぐさま視線を窓から逸らした。わずかにだが竜眼、魔力を視る瞳にわずかながら違和感があったような気がしたのだ。しかし、今は何も感じない。

 それからベラは少しばかり何か考えた後、再びパラの報告を聴き始めたのであった。


次回予告:『第286話 少女、夜這いをされる』


 ちなみにマリアちゃんはお友達から降りてしばらくすると元に戻ります。なのでテンションマックスの自分を思い出してその日は自分の部屋でうーうー唸りながらゴロゴロしてました。マリアちゃん可愛い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ