表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/390

第283話 少女、竜の首と共に出る

 オルガン兵団が要塞アルガンナに到着した翌日。

 雲ひとつない青空の下をローウェン帝国獣機兵ビースト軍団が進軍していた。再びの要塞攻略だが彼らの士気はそれほど高いものではなかった。前日の刃合わせの感触からすでに趨勢は決したとのドルガの宣言は早朝に撤回され、彼らは再び様子見の進撃を言い渡されていたのだ。


『クソッタレ。今回で決着つけんじゃなかったのかよ?』

『ザーレ、口より足を動かせ』

『やってるだろ隊長。だいたい今止まっちまったらえらいことになるっての』


 ある程度の距離をとってはいるが、獣機兵ビーストの足が止まれば立派なバリケードだ。後方の部隊が次々と転げて大惨事になりかねない。戦う前に全滅などあり得ないが、それは実際に時折起こり得る事故でもあった。


『しっかしよぉ。昨日だって様子見だったじゃねえか。大将ビビってんじゃねえの?』

『ザーレ、冗談でも口にするな。ドルガ様に殺されるぞ』

『ウグッ』


 その指摘に実際に殺されている者が幾人もいることを知っているザーレが言葉に詰まった。それから少々調子に乗ったと感じたザーレが口を閉じると隊長と呼ばれた男が苦笑する。


『それにだな。今じゃ残りカスのゴミしかいないエルシャと違って、ヘイローとルーインの軍はやばいって話だ。そこにヘイローから追加の増援が来たってんなら慎重にならざるを得ねえんだろうよ』

『ルーインなんざ大したこたないっしょ。雑魚じゃん』


 ルーイン王国はエルシャ王国よりも小国であり、ローウェン帝国の協力を得たパロマ王国に占拠されて消滅した国だ。もっとも現時点においてルーイン王国が復活していることを彼らはまだ正式には知らされてはいなかったのだが。


『それでも今のエルシャよりはマシだろうよ。それにだ。どうも参戦しているのはガルド将軍らしい。鉄機兵マキーニのくせにオーガタイプよりでかいらしい』

『マジかよ。それ、巨獣に鎧着せてんじゃねえっすか?』

『かもしれんがな。それにベラ・ヘイロー。獣神アルマ様を破ったあの化け物。ありゃぶつかった時点で生存を諦めろって言われてる。どうにも嫌な感じがしてならんよ』


 ベラ・ヘイローの名前を聞いてザーレがブルッと震えた。

 赤い魔女の異名を持つ怪物。今やローウェン帝国に従属しているはずのクィーン・ベラドンナの生まれ変わりとも言われており、傭兵国家ヘイローという国を興したにもかかわらず、なお血を求めて軍のトップに留まっている戦闘狂だ。曰く機体の赤は敵の血で染め上げたものだとか、未だ十になるかならぬかの幼子であるとか、実はドラゴンの化身で従えているドラゴンは失踪した2年半の間に産んだ子供であるとか……どうにも眉唾な噂が先行しているが、その実力だけは確かなのはザーレも理解している。


『機械竜をお供にしてるってんでしょ。竜機兵ドラグーンやドラゴンってのはうちローウェンの専売特許じゃねえんですかい?』

『ベラ・ヘイローは雲隠れする以前からドラゴンを操っていたらしいからな』

『うちが技術を奪ったから仕掛けられてるんじゃないかって話もありましたね』


 鉄機兵マキーニをドラゴンに変えた強心器はローウェン帝国産ではあるのだが、そうした事実を末端の兵が知る由もなく、噂は今も拡散していた。


『ま、この先にいるのはエルシャの兵だ。その上にテキトーに殺してテキトーに戻れってんだから気負わずに……む、なんだ?』


 すでに戦闘が開始されたのか、正面が騒がしくなっている。しかし届いてくるのは戦いというよりも魔獣に奇襲された際の悲鳴のような声だった。その様子にザーレが眉をひそめた。


『隊長……何かおかしくないですか?』

『分かってる。総員、この場で陣形を維持しつつ、速度を落とせ。後軍にも通達だ』


 その指示の下に並んでいるゴブリンタイプの機体が構えながら、ゆっくりと速度を落としていく。ゴブリンタイプは目立った特徴はないが機敏な動きをし、また魔力消費も少ないために固まった行動が取りやすい。また獣血剤投与後の安定性も高く、鉄機兵マキーニからの伸び幅は小さいもののローリスクでの強化が可能なタイプであった。


『隊長、なんかヤバくね? 地面が揺れて』

『いや、違う。これは……揺れているのは機体だ』


 その言葉にザーレが目を見開くと同時に前方から『来たぞぉぉおお』という悲鳴のような声があがった。さらには前方から炎がその場を覆う。


『炎? ブレス?』

『ギャアアアアアアアアアアアアアア』

『は? 隊長!?』


 それは一瞬のことだった。炎の中から何かが飛び出し、つい今まで話していた隊長の機体に激突した。いや、『喰われた』のだ。


『なんだぁ!?』


 驚くザーレの前で隊長機がバキバキと噛み砕かれ、咀嚼されていく。そして、それを為しているのは巨大な竜の首だった。


『ドラゴン? 機械竜の……首? 手足が生えて……不味い』


 隊長機であった残骸が吐き出されたと同時にドラゴンの首が回転して口から炎を吐き出していく。それをザーレは盾で受けて直撃を防ぐが、その熱量は機体内部にまで届いた。


『ぐ、熱ッ。このままだと……クソォ』

『キキャァアアアアアア』


 直後に手足のついた竜頭が翼を広げながら咆哮し、炎の壁を飛び越えてザーレに向かって盾を振り下ろす。


『棘付きの大盾二枚を持ったドラゴンの首だと。なんの冗だ……グッ』


 竜頭は大盾を台にしてザーレの機体を潰そうと上空から降下したが、ザーレはそれを盾で受け止めギリギリで踏み止まった。けれどもそれは悪手だ。


『ギキキキャァアア、キュキャヒャハハハァアアアアアアアア!』

『止めろ。動くな。ァアアアアア』


 竜頭を受け止めたザーレの機体はさながら竜頭の砲台だった。

 そして竜頭回転して炎を吐きあげながら周囲を火の海にし、台となったザーレの機体は棘付きの大盾の回転によって盾も腕も機体そのものも削られていく。

 そして足元の獣機兵ビーストがもはや形を留めぬほどに削り潰された頃には、周囲の獣機兵ビーストたちは燃やされるか、その場から離れるか……という形になっていたのだが、その陣形が崩された状況にエルシャの軍が突撃したことで一方的な戦いが展開され始めた。

 亜種竜機兵ドラグーン『ヘッズ』。その鮮烈なるデビュー戦は圧倒的な蹂躙という形で幕を開けたのである。

次回予告:『第284話 少女、観察する』


 マリアちゃん大活躍。

 ベラちゃんもニッコリ。エルシャの人たちもニッコリ。マリアちゃんもニッコリですね。 ちょっと性格変わっていますけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ