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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第251話 少女、疑う

「なるほど。無残だねえ」

「全く以って。この場合、エルシャの騎士団が敗れたことよりも町を落とした敵の戦力の方が気にはなりますが」


 現在もログレスの町に駐留していたベラだが、山岳都市バルグレイズ経由からの報告にガイガンと共に眉をひそめていた。

 届けられた報告書には奪還した町のひとつであるオーリアルスが襲われ、ベラたちと分かれて駐留していたエルシャの騎士団が壊滅したと書かれていたのだ。

 そして読み上げたパラが「位置的に可能性はありましたが」と前置いて口を開いた。この場にいるのはベラとガイガン、それにパラの三人のみ。エルシャ王国所属のフォルダムは基本的にはこうした場には呼ばれることはなく、ケフィンとリンローは今はそれぞれ隊を率いて外を巡回している。


「あの町はアルガンナとの距離も近く、あちらからの部隊と合流するために残ると言って戦列から離れましたが……案の定の結果となってしまいましたね」


 そう言ったパラの顔には皮肉の笑みが浮かんでいた。その様子にベラは肩をすくめながら軽く笑う。


「まあ、仕方ない。あたしらは所詮雇われの身だ。お客さんが望んだのであれば従うしかないのさ」


 実際のところは主と従が変わっていたような状況であったし、ベラの言っていることは正しくはないのだが、エルシャ王国の騎士団が直接的ではないにせよその旨をベラたちに要求していたことは事実だ。

 パラとしてはその際のエルシャ王国の騎士団の対応に憤りも呆れもしていたのだが、ベラは特に気にすることもなく了承していた。

 ベラの予定では元よりエルシャ王国側にも花を持たせる気ではいたし、その程度で恩を売れるのであればむしろ安いだろうと考えていたのである。

 とはいえだ。襲撃されたオーリアルスという町はベラたちが占拠した中でも特に要塞化が進められていた町であり、例のごとく上空からの奇襲を以って短時間で攻略していたものの、セオリー通りに攻め落とそうとした場合には多少骨が折れただろうとベラは評価をしていた。

 だからローウェン帝国に襲撃を受ける懸念があったにせよ、そう簡単に落ちることもないはずだった。故にベラとガイガンの関心はすでに壊滅した騎士団よりも襲撃した敵の方に向けられていた。


「なかなか骨のある連中が送り込まれたってことかね。となると獣機兵ビースト軍団の再編も済んで、いよいよ獣魔ドルガが動き出したってことかね?」

「未だ情報は届いておりませんがそう考えるのが妥当ではないですかね。希少な斥候の獣機兵ビーストが何度か姿を現したことを考えてもすでに動き出している可能性は高いかと」


 ガイガンが己のあご髭をさすりながらそう返す。


「となるとアルガンナに狙いを定めるか、私を狙ってくるか」

「普通に考えればアルガンナでしょうが」


 現在ベラたちが拠点としている山岳都市バルグレイズは新生パロマ王国が旺盛だった頃ならばともかく、現時点でのエルシャ王国内における戦略的な価値は薄い。それよりも汚名を返上するという意味でも、要塞アルガンナを再び攻め入って落とすことこそが今のローウェン帝国の獣機兵ビースト軍団に求められているはずだった。


「ただねぇ。ドルガは随分とイカれたヤツだって話じゃあないか。父親の仇を取ろうとアホみたいな数で襲いかかってくる可能性もあるだろう。周囲に注意を向けて、最悪ケツまくって逃げる準備も整えておくんだよ」


 ベラの言葉にパラとガイガンも頷く。

 竜撃隊は鉄機兵マキーニを主体とし、高機動を誇る部隊だ。ケフィンを筆頭とした獣人部隊による警戒網と連携すれば、例え大量の軍と遭遇したとしても逃げ切れるだけの足があった。

 それは鉄機兵マキーニ『アイアンディーナ』と槍尾竜ガラティエの飛行と混機兵キメラ『レオルフ』の城門破壊と足並みをそろえるために必須な戦略の要であり、逃走においても遺憾無く発揮される。


「ま、こっちに向かってくれるんならむしろしめたもんなんだけどね」

「確かにこちらに戦力が集中しようものならば、アルガンナからエルシャ王国軍が進攻しやすくなりますからな」


 その状況になればベラたちは後退しつつ囮となればいいだけのこと。

 武功を立てるのが難しくはなるが、それはそれで対処のしようはある。


「そういうことだね。警戒はしつつも臨機応変に……さ。しかし、なんだね」

「何がですかい?」


 報告書を見て再び眉をひそめるベラにガイガンが尋ねる。


「いやね。襲った連中の部隊名がねえ」

「デュナン隊……でしたか。知っているので?」


 ガイガンの問いにパラも難しい顔をしてベラを見た。


「ベラ様、彼らだと思いますか?」

「さてね。いや、普通に考えれば偶然だろうよ。まあ、たまたま同じ名前のヤツでもいたんだろうが……デュナンか。それにしても久々に聞いたね」


 死んだ男の名を呟きながらベラは目を細める。

 デュナン・オルドソード。それは、かつて傭兵団を率いてベラと戦って敗れ、その後はベラの戦奴隷としてベラドンナ傭兵団に加わり、その後はローウェン帝国軍に囚われて死んだ男の名だ。

 そしてベラはデュナンと共に彼が団長を務めていた傭兵団の団員もかつて従えていて、ローウェン帝国に囚われた後に行方知れずとなっていた。他のベラドンナ傭兵団のメンバーたちとは違い、数は多いのに所在不明となっていた彼らが或いは……という予感が、ベラの中で大きくなっていた。

次回予告:『第252話 少女、異形と会う』


 すれ違いでお別れしてしまったお友達とベラちゃんが無事再会することができるのか、ちょっと心配ですね。でもきっと大丈夫。ベラちゃんの愛らしい微笑みを見れば、彼らも元気な姿で応えてくれるはずですよ。ベラちゃん、頑張れ!

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