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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第244話 少女、提案する

「申し訳ないねぇ」


 要塞アルガンナの攻防が終結した翌日の昼。

 ようやく目覚めたベラは状況の確認を終えた後にエルシャ王国のダイズ王子と四王剣のひとりであるアルマス将軍との初会合を開いていた。


「まぁだ、お子様なんでね。運動した後はちょいとお眠の時間を優先させちまうのさ」

「いや、あれだけの戦いを行なったのだ。当然であろうよベラ殿」


 アルマスがそう返す。

 もっともベラと対面しているダイズの顔はやや引きつっていた。言うまでもなくそれはベラの外見を目の当たりにした故のことだが、当然ベラも後ろに控えているパラやガイガンも、その手のリアクションには慣れたものでダイズの反応を問うたりはしない。どうであるにせよベラの外見は変わらないし、彼らが今話すべきはこの後の対応についてであった。


「ベラ殿が倒した獣神アルマの獣機兵ビースト軍団。あれの撤退先は旧王都だろうと見られています。そこにアルマの息子である獣魔ドルガがいる」


 その情報はベラもすでに把握している。

 獣神アルマと獣魔ドルガは親子ふたりともに八機将であり、父のアルマが前線で戦い、ドルガが奪ったエルシャ王国の領土をローウェン帝国エルシャ領として治めていた。

 元々エルシャ王国はジェネラル・ベラドンナが主導で侵略していたのだが、領土には興味がないのか現在はエルシャ王国攻略をアルマたちに任せてモーリアンの内乱に参戦している。


「ところで部下に聞いたんだけど、新王都より増援が来ているそうだね?」


 それから続いたベラの問いにダイズが頷く。


「ええ。すでに増援には状況を伝書鳥で送っています。急ぎの移動は止めさせましたが、今より十日後に彼らはこのアルガンナに到着する予定です。その後は各地の状況を鑑みながら反攻作戦を開始することになるでしょう」

「なるほどね。ならば、ここは安心かねぇ。だったら、あたしらが今動いても問題はないね?」


 その言葉にダイズが眉をひそめ、対してベラは目の前のテーブルに広げられた地図を見た。そこにはエルシャ王国全体図が描かれている。


「動く?」

「ああ、そうさ。ここに行きたいんだよね。要塞アルガンナより南東にある都市」

「山岳都市バルグレイズ……に、ですか?」


 ダイズの目がベラの指差した先に向けられた。そこにあるのはエルシャ王国が侵略された最初期に奪われた都市のひとつだ。旧王都からは離れていることもあり、優先度の問題から現在に至るまで奪還されてはいない。


「そうさ。あたしとしてはここを今のうちに頂いておきたいのさ」

「頂きたいとは?」


 ダイズが慎重な顔でそう問うと、ベラがマルクスの町からバルグレイズまでをスッと指でラインを引いた。


「バルグレイズを占拠し、マルクスの町においてあるヘイローの兵を常駐させたい」

「それは……いささか」

「アルマス控えろ」


 背後から声をあげたアルマスにダイズが制止した。その様子を見ながらベラが「ルーイン王国軍が若干苦戦していてね」と口にする。


「新生パロマが占拠していた王都の奪還はおおよそ成功の見込みなんだけどねえ。ただ、仕留めきれない。で、連中は北上してザッカバラン山脈のルーイン側の麓にある城塞都市ラミアスを拠点にするだろうってのが予測されているのさ。なんで戦争が長引けば夏まではかかるかもしれない」

「となると山道が開きますね」


 何を言いたいかの見当がついたダイズの指摘にベラが頷く。


「そういうことさ。山脈は大量の軍を送り込むには不向きだとしても、エルシャ側に新生パロマ王国の上層部が逃げ込んでくる可能性はある。ローウェン側から一か八かとルーインへと戦力を送り込む可能性もゼロとは言えないんだけどね。まあ、今更そこまでの価値が新生パロマにあるとは思えないが」


 その言葉にダイズとアルマスは頷くしかない。

 パロマ王国から軍部が分離してルーイン王国を乗っ取ったのが新生パロマ王国だが、現在は反撃に出たルーイン王国軍によって追い詰められている。すでに戦況は最終的な局面に近付いており、そこに今更ローウェン帝国が介入する余地はないと見られていた。


「どうであるにせよ、獣神アルマの戦力は旧王都へと一旦撤退しているんだろう。軍の再編がすぐにできるとも思えないし、状況が動く前にバルグレイズを押さえておきたいのさ」




  **********




「よろしかったのですか?」


 ベラとの会合を終えたダイズが落ち着くのを見計らってアルマスがそう尋ねた。ダイズは結局ベラの提案をそのまま飲む形で容認してしまったのだ。その後のダイズの様子を見れば、己の言葉に迷っているのは容易に察せられた。

 もっともダイズの方は苦笑しながらも「仕方ないさ」と返してきた。


「兄上が到着したら勝手なことをと叱るだろうが、父上は容認するだろう。今我々はヘイローを手放せない」


 苦い顔をしつつもダイズはそう言って笑う。


「しかし、このままいけばバルグレイズの実質的な支配権はヘイローが握ります。手放してくれますかね?」


 バルグレイズは鉱山にも通じている街だ。実益は高く、ローウェン帝国が現在も鉱山を稼働させていることは調べでも分かっている。


「期待はできないな。それに、どのみちバルグレイズの領主などとうの昔に死んでいる。四年前、ジェネラル・ベラドンナが攻め滅ぼしたときにな。文句を入れる者もほとんどいないだろう」


 四年前の大敗。それは彼らの脳裏に深く刻まれた屈辱の記憶だ。

 ジェネラル・ベラドンナという怪物が指揮するローウェン帝国軍によってエルシャの兵たちはまるで霧散するかの如く蹂躙された。どうしようもないほどに彼らは負けていた。


「分かっているだろうアルマス。彼らに頼るのであれば報酬は用意せねばならない。このまま最大限うまくやって仮に国を奪還できたとしよう。けれども我々には金銭で報酬を返せるアテはない」


 今やエルシャの地は荒れに荒れている。獣機兵ビースト乗りの餌場に使われているようなものだ。元の国力に戻すのにどれだけの年月を必要とするか。その上にヘイローへの報酬など捻出するには、あるものを渡すしかない。


「我々はもう自らの体(エルシャ王国)を切り売りして報酬にするしかないのさアルマス。それにベラ・ヘイロー、彼女の傭兵団は四年前に山脈を越え、そして当時進軍していたジェネラル・ベラドンナに捕らえられて消滅したということもある。或いはその屈辱を晴らそうという思いもあるのかもしれない」

「あのときは四王剣もふたり死にました。誰もかれもが屈辱を晴らそうと考えておりますよ」


 補充として新しい四王剣が任命はされたが、かつてのソレに実力は及ばない。それはアルマスを苛立たせている原因のひとつでもあった。


「そうだなアルマス。けれども我々は晴らせなかった。あれが代わって晴らしてくれるならば我らはそれに乗るべきだ。我々には勝利が必要なのだからな」


 その第一歩がこの城塞アルガンナの防衛だ。

 ローウェン帝国軍を撤退させたばかりか獣神アルマをも倒したという事実は大きい。無論倒したのがエルシャの人間ではないのは隠せないが、それでも共に戦ったのだと言うことはできる。それは敗北続きのエルシャの民の心を震わせてくれるはずだった。


「確かに……そうですな。それに、あの少女から感じたものはかつての頃を思い出します」

「かつてというと、鷲獅子大戦か?」


 ダイズの問いにアルマスが頷く。アルマスもかつての大戦を生き抜いた者のひとりだ。


「ハッ。或いはクィーン・ベラドンナの生まれ変わりという話、あながち的外れとはいえないかもしれませんな」

「生まれ変わりと言っても本物は生きているのだろう?」


 ローウェン帝国軍の八機将の長ジェネラル・ベラドンナ。彼女こそがかつての英雄クィーン・ベラドンナその人であると自称しており、またそうであることを証明するほどの実績も上げている。だがアルマスは「さて」と言葉を返した。


「あれが本当に本物なのか……とは思いますね。実力は否定しようもありませんが。とはいえ、本物か否かは重要ではありません王子」

「ふむ?」


 その言葉にダイズが首を傾げるが、答えをアルマスはすぐに口にした。


「ベラ・ヘイローが真にクィーンにふさわしい存在であるならば、彼女自身を次代のクィーンとして担げば良いのです。そう、我々のクィーンに彼女ならばなり得るやもしれません」

次回予告:『第245話 少女、山に向かう』


 なんとアルマスPはベラちゃんのアイドル化計画を進めているようです。

 いったいベラちゃんはどうなってしまうのでしょうか!?

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