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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第23話 幼女、模擬戦をする

 ジャカン傭兵団は、団長ゴリアスの乗る鉄機兵マキーニ『ヘッジホッグ』、そして地精機ノーム風精機シルフィを中心とした32名ほどの小規模な傭兵団である。

 マイアー率いるローゼン傭兵団と共に南方の貴族ロウア卿に雇われていた彼らだったが、前回の戦闘でロウア卿が戦死し、護衛任務も含まれていた彼らの契約もまた破棄されていた。

 その死因が貴族の三男坊が名声欲しさに前に出過ぎたことによるものだったとしても、文句を言う相手はもう天へと昇り魔力の川ナーガラインに流れて神の世界へと向かっていた。


 そして彼らは雇い主を失い、その場の仕事も失った。


 だからといって彼らもすぐさま前線での再契約というわけにもいかない。急場の雇われは外れを引くことも珍しくなく、次の進攻まではまだ時間があるようでもあったので、モルソンの街へと戻って雇い先を探すことにしたのである。

 そして昨日のことだ。ロウア卿の元で共に雇われていたローゼン傭兵団の団長マイアーから連絡があり、ある傭兵団にならばそれなりに好条件で雇われるとゴリアスは聞いて、その誘いに乗ったのだ。


 そして、その顔合わせにと呼ばれたモルソンの街近隣の岩場へとジャカン傭兵団は今たどり着いたのである。


(……ほぅ)


 ゴリアスは周囲を見渡す。そこは時折、鉄機兵マキーニの訓練にも使われる場所で鉄機兵マキーニ同士が動き回っても問題のないひらけた場所だった。そして、その場にいたのはマイアー率いる51名のローゼン傭兵団と、それより少し離れた場所に鉄機兵マキーニ2機、そして精霊機エレメント2機が立っていたのである。


(あれが、マイアーの言っていたベラドンナ傭兵団か? 数は鉄機兵マキーニ精霊機エレメント2機ずつとそれなりだが、他にいねえのか?)


 遮蔽物などに囲まれている場所での戦闘でならば鉄機兵マキーニと生身の兵の勝負は成り立つ。実際、対鉄機兵マキーニ用の兵装があれば、5人で鉄機兵マキーニを仕留めることも不可能ではないのだ。

 加えて鉄機兵マキーニと随伴戦士の連携があれば、鉄機兵マキーニ同士で組み合ってる隙に生身の戦士で鉄機兵マキーニを倒すことも可能だ。その逆も然り。それ故に状況にもよるのだが、鉄機兵マキーニと随伴戦士は基本的にセットで行動するようにと考えられていた。


精霊機エレメントで代用してるのか?)


 贅沢な話ではあるが、それもまた正しい運用だ。

 もしくはそれを自分たちに補わせるつもりなのだろうかとゴリアスは考えるが、とりわけ目を引くのは黒い騎士団仕様の鉄機兵マキーニだった。

 傭兵として、そんな鉄機兵マキーニを持っている時点でかなりの力を持っているということに他ならない。ゴリアスはベラドンナ傭兵団の団長がその黒い鉄機兵マキーニの乗り手であろうとこの時点では考えていた。


『お、来たねえ』


 しかし近付いたゴリアスに対して声をかけたのは、黒い鉄機兵マキーニではなく、隣にいた小さい赤い鉄機兵マキーニだった。


(なんだぁ?)


 ゴリアスはその様子を訝しげに見る。その立ち位置を見る限り、ベラドンナ傭兵団のトップはその小さな鉄機兵マキーニに見えるのだ。まだ生まれて大して経ってもいなさそうなくせに、やたら目立つ赤色の塗装をしている。あれでは戦場では良い的となってすぐさま終わるだろうとゴリアスは考えるが、ひとまずはその考えは置いて口を開いた。


『ゴリアスとジャカン傭兵団、ここに参った。ベラドンナ傭兵団の団長ベラはいるか?』

『ああ、あたしだよ。ベラドンナ傭兵団の団長ベラ・ヘイローだ』


 ガシャンとさきほど声を出した小さい方の赤い鉄機兵マキーニが前に出た。


(本当に赤い方か。黒い方じゃあないのか?)


 そうゴリアスが考えるのも無理はない。未だ若い鉄機兵マキーニだ。


(それも随分と若い?……女のようだ。変に声を造ってなければだが。それによく見れば精霊機エレメントの一機はあの貴族様の奴隷の一体だった奴だな)


 ゴリアスは火精機ザラマス『エクスプレシフ』を見ながら、その姿を思い出してた。ロウア卿のそばに仕えていた精霊機エレメントだ。やたらと爆発させるクセに腕は確かであったのでゴリアスはそれを良く覚えていた。


『分かった。ベラ団長、そちらはそれで全部か。鉄機兵マキーニ精霊機エレメントの4機だけの傭兵団というわけか?』

『ま、こっちも出来たばかりでね。いろいろと足りない部分はあるんだが、まあそのためにアンタたちを雇いたいワケなんだよね』


 その言葉にゴリアスが反応する。


『出来たばかりだぁ? マイアー、お前、そんなのを相手に俺を誘ったのか?』

『ま、そう言うわよねえ』


 ゴリアスの言葉にマイアーがそう返す。その言葉からは言われるであろうことは分かっていたという風な諦観の念が感じられた。


『経験の不足分は腕でどうにかするさ。それに経験はアンタたちでも補わせてもらう。そうすりゃ問題はないさね?』

『ないわけあるか。第一にそんな貧相な鉄機兵マキーニで実力があるなんて言われても納得いくわけないだろうが』


 そう口にするゴリアスに『ヒャヒャ』と笑い声が響いた。明らかにバカにした笑いだ。


『だったらまずは実力を見せようかい?』

『なんだ? 俺とやり合う気か?』


 そう返したゴリアスの鉄機兵マキーニ『ヘッジホッグ』は3.8メートルはある。ベラの『アイアンディーナ』と比べては大人と子供ほどの差がある機体だ。だが『アイアンディーナ』からの提案は『ヘッジホッグ』との一対一の対決ではなかった。


『雇う側と雇われる側の実力をちゃんと把握出来た方が良いだろうね。マイアー、ガウロと一緒にあっちに加わってやんな』

『え……ああ、分かった』


 ベラの言葉にマイアーが生身の仲間たちに下がるように言って、ガウロの機体と共にジャカン傭兵団へと進んでいく。


『つまりは4対5というわけか?』


 ゴリアスが生身の部下たちを手振りで後ろへと下げながら、そう口にする。ベラドンナ傭兵団の4機と、ジャカン傭兵団とローゼン傭兵団合同の鉄機兵マキーニ3機に精霊機エレメント2機。数の上ではゴリアスたちが一機分有利だが、確かに勝負としては悪いものではない。


『いんや。相手はあたし一人でするよ』

『主様、私も加わる』


 ベラの言葉にバルがそう進言するが、ベラは『ダメだ』と返す。


『今のあんたじゃあ、まだあっちを傷つけちまうよ。戦争いく前に鉄機兵マキーニを壊して欲しくないんだよね』

『そりゃあ、てめえだったら無傷で俺らをやれるっていう風に聞こえるんだがな?』


 額に青筋を立てながらゴリアスがそう返した。

 岩場の開けた場所に『アイアンディーナ』が進みながら、ベラはさらに笑う。


『実力を見せると言ったはずだよ』


 そのベラの挑発にマイアーが頭を抱える。バルから聞いた話によれば確かにベラの実力は非常に高いレベルにあるらしい。しかしマイアーにはだからといって、この数の差を覆せるとは思えない。


(ここで殺しちまったら別の雇い先を探さないといけないよねえ)


 などと悲観的に考えているマイアーにガウロが後ろから声をかける。


『本気でやっちまっていいんですよね?』


 その言葉にマイアーはガウロが昨日の件を引きずっているのだなと理解する。傭兵組合所でその場の全員が見ている前で粗相をしてしまったのだ。周囲からは笑うどころか同情的な目で見られていたこともガウロのプライドを刺激したのだろう。無理もない話だが。


『構わないよ』

(殺す気で良いって言われてるしね)

 マイアーはベラからは事前にそう聞いていた。バルはその機体からして実力が高いのは見て分かるが、ベラに関しては未だに未知数だ。

 すでに色々とベラにしてやられている分をここで取り返すのも良いとマイアーも考え直す。やりこめてやりたい気持ちはマイアーもガウロと同様にあるのだ。


 そして、各機体がそれぞれ並び立って対面する。そうして並んでみればやはりベラの『アイアンディーナ』の小ささは目立つ。精霊機エレメントよりは当然大きいにしてもだ。


『そんじゃあどうやって勝負する? なんでもいいけどね』


 向き合うベラの言葉にゴリアスが笑う。この時点でゴリアスの心情は、お調子者の目を覚まさせるためのお仕置きの場とこの状況を考えていた。そしてゴリアスたちは騎士団ではない。一対一で向き合うような騎士道もない。彼らは傭兵なのだ。


『そいつぁ』


 そしてゴリアスは己の左腕に設置していた丸い盾を手に取り、


『これで決めるッ!』


 そして円盤投げの要領で投げつける。


『あ、汚ねえ』

 後ろで地精機ノームに乗りながらボルドが声を上げる。

『あー、なかなか良い性格ですねえ』

 その横ではジャダンがチロチロと舌を出しながら賞賛している。ボルドを挟んで、その逆にいるバルは身体を震わせた。己も参加したくてウズウズしているようだった。

 そしてベラは、飛んでくる盾を、


『思い切りがいいね』


 そう口にしながら、左腕で掴んだ。高回転する丸い盾を苦もなく片手で、その指で受け止める。生身ではないのだ。特に鉄機兵マキーニの指というのはグリップのボタンの力加減と、首裏の感応石による思念のふたつで動かしている。武器を握ったり、ゆっくりと荷物を持ち上げたりというのならばまだしも、高速移動の物体を掴みあげるなど、それはもう神業に等しい……が、相手はそんな芸当など関係はないとばかりに突撃してくる。


 すでにゴリアスの思考は戦いへと映っている。例え、相手がどういう存在だろうと戦うのみ。ゴリアスの鉄機兵マキーニ『ヘッジホッグ』はその手に握る武器、名の由来でもあるトゲ付きの鉄球のメイスを正面に向け、


『ぶっ飛びな嬢ちゃんッ!』


 鉄球が爆発音と共に飛んだ。そして、ジャラジャラと鎖が延びながら、鉄球は高回転してアイアンディーナへと向かう。

 ギミックウェポン『鉄球』。それはベラの左腕のギミック『仕込み杭打機スティンガー』と同じ、魔力を動力とした特殊な機構を持つ武器であった。

次回更新は3月17日(月)0:00。


次回予告:『第24話 幼女、蹴散らす』

大きなお友達たちが幼き少女に乱暴を働こうと襲いかかります。

あと、幼女流説得術(物理)が炸裂します。

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