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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第237話 少女、遅れて来る

『俺はローウェン帝国獣兵戦団、バクト部隊の隊長バクトだ。まあ、これから死ぬお前が覚える必要はないだろうがな』


 豚ヅラの獣機兵ビーストがバトルアクスを構えながらそう口にした。


『お前ら下がってろ。こいつは俺がる!』


 そしてバクトの言葉を受けて周囲の獣機兵ビーストたちが距離を取り始めている前で、リンローとバクトの機体が互いの武器を振るってぶつけ合い、弾きあった。


『チッ、弾かれただと!?』

『パワーは互角か? だがなぁ』

『まだまだ!』


 それは6メートルはある大型の機体同士の戦いだ。

 片やハルバード、片や棘鉄球鞭とどちらも間合いの長い武器を装備しており、並みの機体では近付くだけでも弾き飛ばされてしまいそうな激突を繰り返していく。


『しかし、そのなり。お前も獣機兵ビースト乗りか?』

『だったらなんだってんだよ?』


 バクトの問いにリンローが眉をひそめながらも言葉を返した。その間にも武器同士がぶつかり合い、力を込めた互いの機体の足元の地面が割れていく。


『見たこともない形状の機体だな。稀少魔獣の獣血剤でも使ったか。だが、所詮は選ばれなかった種だ』


 バクトの獣機兵ビーストの背部装甲が開いて、背部のパイプが増えて霧蒸気が一気に噴き出していく。同時にハルバードを振るう速度が加速した。


『おっと、はえぇじゃねえか』


 リンローが攻撃を避けて一歩下がり、また鞭をしならせて棘鉄球をバクトの機体の横腹へとぶつけると、巨大な獣機兵ビーストが転げて大木に激突しメキメキと木が折れていった。


『やるなリンローとやら。だが、こちらは最新型だぞ』

『最新型だぁ?』


 眉をひそめるリンローにバクトが『そうだ!』と声をあげながら、機体を立ち上がらせる。


『このベへモスタイプこそが次世代の獣機兵ビーストだ。出力もサイズもこれまでの魔獣のタイプを大きく凌駕し、戦場は今にこのべへモスこそが主流となるだろうよ』

『ハッ、そうかい』


 そう返したリンローの乗る『レオルフ』に対し、バクトの機体がハルバードを構えてにじり寄っていく。


『そうなれば、鉄機兵マキーニは元より竜機兵ドラグーンや有象無象の亜種たちをものともせぬ最強の軍団が生まれるわけだ。貴様らのような出来損ないを礎としてな。それを光栄に思いながら死ね、ヘイローの獣機兵ビースト!』

『戦場の主流ねえ。人喰いを量産することがそんなに喜ばしいことかね?』


 リンローの言葉にバクトが笑いながら『レオルフ』に向かって走り出した。


『ハッ、人喰いで結構だ! 我らはもはや半獣人などという半端なものではない。人を超えた上位種となったのだ。であれば下位種を餌とすることに何の問題がある? 家畜を食らって何が悪い?』

 

 そして再び両者の機体がぶつかり合った。


『まったく緩いなヘイローの獣機兵ビースト乗りは! ハッ、お前もアレか。半獣人でも血をすすれば大丈夫だと考えてる口か。マヌケだな。まだ人間に囚われている。哀れな男だ!』

『んだと? む!?』


 力押しでは『レオルフ』よりもべへモスタイプの方が出力は上だ。バクトの機体に圧されて、リンローの乗る『レオルフ』がジリジリと後ろへと下がらされていく。


『なぁ、リンローとやら。お前とて人を喰ったことはあるのだろう? 口にした瞬間、満たされた気持ちになったはずだ。アレを否定するのか? 心に従えよ。血を舐めるだけで飢えは満ちぬぞ』

『ケッ』


 リンローが吐き捨てるように舌打ちしながら一歩下がると、棘鉄球鞭をバクトの機体へと投げつけた。


『貴様、武器を投げ捨てるなど……な!?』


 そして棘鉄球をハルバードで防いだバクトが驚きの表情に変わる。さらに下がった『レオルフ』の両肩についた装甲が腕の先へと移動し重なって大砲へと変わっていく姿をその瞳で捉えたのだ。


『俺はもうその飢えはなくなったんだよ』

『この気配。竜気……『竜の心臓』持ちだとでも? まさか本当に竜機兵ドラグーンだとでもいうのか?』

『さてな。もっともコイツはビースト由来のものだがな』


  魔力が大砲の内側で充満し、魔術式に従って巨大な火球を生み出していく。その濃密な魔力の炎を見たバクトが叫び声をあげた。


『こいつ、不味い!? お前ら、それを止めろ!』


 けれどもその言葉は遅い。距離を取っていた獣機兵ビーストたちでは当然『レオルフ』には届かず、バクトが逃げようと機体を動かすが大砲の内部に火球はすでに完成している。


『じゃあな上位種さん』

『やめっ』


 そして次の瞬間に砲身から火球が飛び出してバクトの機体へと直撃すると、火球が破裂して炎が全身を包んでいく。


『馬鹿な。バクト隊長が!?』

『今のは何だ?』


 それはマギノが巨獣機兵ビグスビーストを解体して取り付けた巨獣兵装と呼ばれるものだ。だが、現時点において巨獣機兵ビグスビーストの存在を知らされてもいない彼らには分からぬこと。ただ、彼らの目の前でバクトが炎に包まれて死んだのは間違いようのないことだった。


『駄目だありゃ。胸部ハッチの内側から炎が漏れてる』

『だが、あんな巨大な炎だ。二度目は撃てん』

『そうだ。バクト隊長のカタキを討て!』

『貴様ひとりでこの軍勢を屠れるなどと思っているのか!』


 獣機兵ビーストたちがそう口々に言い合うのを見て、リンローが苦笑する。


『いや、確かに俺ひとりでは難しいかもしれねえけどな。ただよ』


 リンローの言葉を聞くまでもなく、獣機兵ビーストたちは周囲の気配に気付いた。周囲はすでに取り囲まれていたのだ。


『来たのが俺ひとりのわきゃねえだろ?』


 それに囲んでいる鉄機兵マキーニはエルシャ王国のものではなかった。それらの掲げる旗が見えていた。


『連中が掲げているのはヘイローの旗か。つまりヤツらはラーサの戦士!?』


 エルシャの兵は弱兵なれど、ラーサ族の戦士は百戦錬磨のツワモノ揃い。力こそ勝るローウェン帝国の獣機兵ビースト部隊といえど、ラーサ族の戦士を前にはそこまでの差は生まれない。


『クソッ、先ほどとは違うぞ。死ぬ気で迎え撃て!』


 その事実に彼らの内からは油断が消えた状態ですぐさま戦闘態勢に入ったのだが、それだけでは足りぬのだ。なぜなら彼らはラーサ族の中でも精鋭、ベラによって鍛え上げられた竜撃隊だ。

 そして両軍はすぐさま激突し、さらには空より飛来したベラの乗る『アイアンディーナ』と引き返してきたエルシャ王国軍も参戦したことで、獣機兵ビースト部隊が一気に駆逐されていき、そのまま壊滅するまでにそう時間はかからなかったのである。

次回予告:『第238話 少女、もてなす』


 ずーっと身内で争っていたしベラちゃんが相手で実感が難しかったのですが、ラーサの人たちは実は結構すごい人たちなんですよね。今後は彼らがベラちゃんに変わって気持ちよく接待してくれることになるでしょう。

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