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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第235話 少女、来客を受ける

「ああ、戦闘だぁ?」


 町長の家の中でベラが不機嫌そうな顔でそう返した。

 ソファに腰をかけたベラの背後にはリンローとパラが控え、そしてベラの前へと報告に訪れたのは獣人部隊を率いているケフィンだ。

 ケフィンが持ち込んだ報告は、この町より東の森でいずこかの兵たち同士による戦闘が開始されたというものだった。それはマルカスの町で後続部隊を待ち構えていたベラたちにとっては寝耳に水の話だ。


魔獣使いテイマーが憑依したローアダンウルフが発見した。現在も監視中だが、片方は獣機兵ビーストだ。であれば、そちらはローウェン帝国の軍隊だろう」

「ハァ。つーと、もう片方はエルシャか。けど、どういうことだ。そいつは?」


 リンローが首を傾げながら、そう口にする。

 ローウェン帝国の軍が来ることは予想していたのだから、そこは問題ではない。予定外なのはエルシャ王国の軍がこの状況に入ってきたことだ。またリンローと同様にベラも眉をひそめて考え込んでいたが、すぐさま頭をかきながら苛立ちを顔に出していた。


「ふむ。後続を狙っての奇襲かい? というと……旗か、問題は。こりゃあ欲をかいたバチが当たったのかもしれないねえ」

「は?」


 ベラの呟きにリンローがさらに首を傾げるが、ベラは気にせずその場で立ち上がり、己の首に下げた竜心石を掴んで声をあげた。


「ディーナ、来い!」

「は? マジかよ。パラ、窓から離れろ!」

「あ、はい」


 直後に家の窓が鉄の巨腕によって破壊され、外から『アイアンディーナ』が姿を現した。そして、その手にベラが飛び乗ると『アイアンディーナ』は機竜形態へと変形していく。それから外にせり出てきた操者の座コクピットに飛び乗ったベラが家の中にいるリンローへと声をあげる。


「リンロー、ケフィンはガイガンと一緒に戦闘準備。東門に集合させろ! パラは各員への連絡を徹底!!」

「は、はい。で、総団長。そちらはどうするんで?」

『あたしはちょいと話し合いだ。まったく、早とちりじゃあなきゃいいんだけどね』


 ベラはそう言い残すと『アイアンディーナ』の翼を広げて、空へと舞い上がっていった。




  **********




『チィ。獣機兵ビーストどもめ!』


 ベラたちが動き出したのと同じ頃、マルカスの町の東にある森の中ではローウェン帝国の獣機兵ビースト部隊と戦うエルシャ王国の騎士団の姿があった。


『部隊を分けたのは痛かったか』


 騎士団団長であるフォルダム・シュレーケンは顔を歪ませて弱音を口にした。

 彼らは現在マルカスの町奪還を目的としており、町に向かっているローウェン帝国の獣機兵ビースト部隊との戦闘を行なっていた。

 事の始まりはマルカスの町から脱走してきた町人を彼らが偶然拾ったことにある。

 もっともローウェン帝国がエルシャ王国の南部に対して動きを見せているという情報を掴んでいたからこそフォルダム騎士団はこの周辺へと出向いていたのだから、それはただの偶然ではなかったが。

 また斥候がマルカスの町で『ローウェン帝国の旗』が掲げられていることも確認しており、町人の証言の裏付けも取れていた。

 地理的に見てマルカスの町はエルシャの王都を包囲するため、また傭兵国家ヘイローへの進軍のための中継基地として使われるであろうことは想像に難くない。それを捨て置ける事態では当然なく、またモーリアン王国の救援を望めぬ今、反ローウェンを掲げる傭兵国家ヘイローはエルシャ王国にとってか細い希望そのものでもあった。

 だからこそフォルダムがすぐさま団を率いて行動を開始したのは英断ではある。幸いなことにローウェン帝国の後続部隊の発見もでき、町からの増援を封じるために隊を分けて町へと向かわせてもいる。


(ああ、そうだ。そこまでは問題じゃなかった。見誤っていたのは、こいつらの力か)


 フォルダムが眉間にしわを寄せ、正面で戦う獣のフォルムをした機体を睨みつける。

 野営していた獣機兵ビースト部隊への襲撃には成功した。初手で二機の獣機兵ビーストを破壊し、乗り手も倒した。しかし、フォルダムたちの勢いはそこまでだった。

 元々不確かな情報を基に派遣されたフォルダム騎士団は精鋭とは言い難い騎士団だ。団長であるフォルダムを除けば、若き騎士たちで構成された、本来であればまだ鉄機兵マキーニで戦うことも許されぬ戦場も知らない者たちばかりの団であった。乗っている鉄機兵マキーニも乗り手が死んだ戦場で回収された機体ばかりだ。

 対して相手は獣機兵ビーストで構成された部隊だ。

 獣機兵ビーストは戦場に現れた当初こそはそのパワーに圧倒されて恐れられていたが、精密性に欠ける面もあり、侮らずに巨獣と相対するように戦えば対処できる存在として今では考えられていた。

 とはいえ、それもあくまで対処の方法の問題であり、未熟な乗り手にとって力が強い者は単純に強いというのは自明の理だ。


『団長、保ちません!』


 フォルダムは見誤っていた。

 相手はただの獣機兵ビースト部隊ですらなかった。明らかに彼らは獣機兵ビーストの中でも精鋭だ……と戦場で戦い続けてきたフォルダムは理解していた。対抗できるのは己ぐらいであり、自分が率いている団の戦力では分が悪いと。


(どうする? 逃げるか?)


 後退するしかない。それは分かっている。けれども、フォルダムには怒り狂った敵の気配を肌で感じている。それも取るに足らぬ相手に不覚を取った屈辱を雪ごうという気迫に満ちていた。

 このまま素直に退かせてはくれる相手ではないだろう。であれば、どうするべきかと考えながら戦い続けるフォルダムに『団長、聞こえますか?』という言葉が操者の座コクピット内の通信機から響いてきた。


『聞こえていましたら、生きておりましたら、すぐさま町に向かって後退願います!』


 その声は彼の副官パーリアンのものであり、町にいるローウェン帝国の獣機兵ビースト部隊を足止めするために、この場にはいないはずの人物からのものだった。


『パーリアンか。どうした? 町の方は制圧できたのか?』

『はい、すでに完了しておりました』

『よくや……。いや、すでに完了とはどういうことだ?』


 その不明瞭な報告にフォルダムが眉をひそめた。だが続く副官からの言葉に彼はさらに目を見開かざるを得なかった。


『その説明については合流後に。マルカス奪還部隊はヘイロー軍と合流しました。これより獣機兵ビースト部隊の殲滅に加わります!』

次回予告:『第236話 少女、仲良くやる』


 ベラちゃんの機転が冴え渡ったようです。

 それにしてもお友達が増えたようですがベラちゃんは一体何をしたのでしょうか?

 ベラちゃんもそろそろお年頃ですし、少し心配ですね。

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