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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第230話 少女、王都攻めをする

『ふん。まぁ、律儀なもんだね』


 鉄機兵マキーニ『アイアンディーナ』の操者の座コクピットに座っているベラが硬貨の入った袋をポンポンとお手玉のように扱いながら建物が建ち並ぶ大通りを進んでいく。

 ベラの後ろにはガイガン率いる鉄機兵マキーニ部隊と、ロックギーガと眷属となったドラゴンたち、魔獣や巨獣を従える魔獣使いテイマー部隊の混成である竜撃隊が続き、機械と魔獣の軍団に王都の住人は恐怖して息を殺して建物の中に潜んでいた。

 現在、彼女たちはムハルド王国の王都ゼッハナーンの中央通りを進んでいる。

 城塞都市前アルグラでムハルド王国中央軍に勝利してからすでに二週間が経っており、その間にベラたちはほとんど妨害されることもなくムハルド王国内を進軍し、今や王都ゼッハナーンを闊歩していたのである。


『何の音ですかな?』


 通信機から聞こえる異音にガイガンが疑問を口にすると、ベラが少しだけ間を空けてから小さく笑った。


『こいつはあの宣戦布告を持ってきた伝令兵があたしにって寄越したもんさ。ま、中身はただの金だよ』

『金?』


 そのことについては報告を受けていなかったガイガンが眉をひそめたが、ベラは『個人的なものだからねぇ』とだけ返した。それから周囲を見渡しながらガイガンに尋ねる。


『それにしてもガイガン、こいつをどう見る? どうにもあたしゃ、チグハグに感じるんだけどね』


 ベラの言葉にガイガンも『そうですな』と答えて頷く。

 王都の正門前と内部に入った際にも戦闘はあったが、特に苦戦もせず彼女らはここまで辿り着いている。拍子抜けするほどに呆気なく。


『無理やり動かされている雰囲気がある者と切羽詰まっている者の差が大きい。投降する兵たちの数も多く、内部でまったく意思統一されている様子がありません。これが同じラーサ族かと思うと……ワシらを破り好き放題していた者たちかと思うとやるせませんな』


 ガイガンがそう言ってため息をついた。

 己らを追いつめ、侮辱の限りを尽くしてきたムハルド王国の惨状にガイガンは失望の色を見せていた。

 ダール将軍率いるムハルド王国中央軍との戦いこそがどうやらムハルド王国との最大の戦いであったようで、こうも手応えがないことに忸怩たるものがあるようだ。


『これならチルチルヒを輪切りにして魚の餌にする方がやりがいがある』

『なんだい、そりゃあ?』

『いや、なんでもありませんよ。釣りをする機会があればお教えします』

『年寄りの趣味に付き合う気はないよ』


 ベラの言葉にガイガンが苦笑した。それに反応せず、ベラは通りの先へと視線を向ける。ムハルド王国の象徴ともいえる王宮ナハカルガの姿はもう見えていた。ベラとロックギーガで正門を破壊し、すでにヘイロー軍は王都内に侵入を果たし、全域を占領するために軍を分けて動いている。

 彼らにとって唯一の希望は自分たちの戦力ではなく、都市の強固な壁であったのだろうが、それも『アイアンディーナ』やロックギーガといった存在の前では意味をなさず突破されている。戦力差は最初から歴然。だからベラとしては、敵は逃げ出すか降伏するかと考えていた。

 それが宣戦布告をし、徹底抗戦をするから仕掛けてこいと言われるとはベラとしても現状は想定外の事態だ。


『それにしても、オマール王ってのはまあ能なしではないと思ってたんだがね』


 当てが外れたという感はあった。

 現ムハルド王であるオマールはラーサ族の戦士からぬという評価を受けており、戦いにおいての能力は秀でていないとの話だ。もっとも施政に関してはその限りではなく、決して無能ではない相手だとベラは報告を受けていた。


(御しやすい相手であれば、そのまま使ってやってもいいとも思ってたんだけど、何をトチ狂ったのやら)


 彼女が率いている者たちはともかく、ベラ自身にムハルド王国と北部族との確執に対して含む想いはない。オマールにしても降伏するならば生かしておく選択も考えていた。

 生涯軟禁状態にはなるが、ムハルド王国と北部族の確執の緩衝材として利用する価値はあると踏んでいたのだ。だが、ここまで来れば徹底的にやるしかない。抵抗を示すのならば、その流儀に則るまで。


『カイゼル兵団、都市部東の部隊を制圧。投降兵をまとめる部隊と分けて、王宮周辺を囲んでいく予定だ』

『こちらドーマ兵団、西のヤツラは片付けた。王宮の周囲を包囲する』


 そして移動途中にカールとアイゼンから報告があがってくる。どちらも王都内の制圧の報であった。もはや残りは王宮のみ。王都守護軍によって固められているだろうが、それも竜撃隊のみでカタが付く程度だろうとベラは判断していた。


『結構。それじゃああたしらは正面から王宮に入る。あんたらは王宮の包囲を継続。外に逃げるヤツがいれば拘束しな。さすがに王様逃がしたらあたしも笑ってすませらんないよ』


 その言葉にカールとアイゼンが了承の返事を返すと、ベラは己の背後にいる部隊を見た。


『それとリリエにケフィン、魔獣使いテイマー部隊はロックギーガと共に王宮前で待機だ。背中は任せる。竜撃隊は半分あたしについてきな』


 ベラの指示にガイガンたちが声をあげて従うと、先へと進んでいく『アイアンディーナ』へと続いて竜撃隊が王宮ナハカルガへと入っていく。そしてヘイロー軍とムハルド軍の最後の戦闘が開始されたのであった。

次回予告:『第231話 少女、さよならを告げる』


 ベラちゃんはお代をいただきました。

 自由を手に入れた彼女に祝福を。

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