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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第225話 少女、反撃を受ける

「敵襲! 敵襲ぅぅう!!」


 朝日が昇り始めようという頃。

 東に光が見え始めたヘイロー軍の陣地の中では狂ったように敵の襲撃を知らせる声が響き渡り、戦の開始を告げる鐘が鳴り続けていた。それがムハルド王国中央軍による奇襲を知らせるものだとは誰もが理解し戦闘態勢を整えている中、パラは急ぎベラのもとへと駆けていた。


「ベラ様。ムハルドが攻めてきました」

「わーってるっての。あんま騒ぐんじゃないよ。急かされてる気になる」


 そして天幕の中へと飛び込んだパラの目に入ったのは、すでに戦装束を身に纏って、オリハルコンのウォーハンマーを抱えたベラだった。


「早朝の寝起きを狙ったかい。けど距離は取ってるんだ。それだけで優位を取れると思ってるのかねえ?」

「それが……ムハルドの様子ですが、巨大な巨獣機兵ビグスビーストのようなものがいます。十五メートルはある……非常に大きい機体が」

「はぁ? そんな隠し玉があったのかい?」


 訝しげな顔をしたベラに、パラが頷く。


「そうなんです。巨獣機兵ビグスビーストか奇形の機械竜か。ともかく妙なものが先導しているんです。もうまもなく、前線がぶつかりますが……あ!?」


 その言葉を聴き終える前にベラは天幕を飛び出ると、外で待機していた機竜形態の『アイアンディーナ』に飛び乗って立ち上がらせた。


「なんだい。ありゃあ?」


 そして、ベラの視界にソレが映った。

 そこにいたのは城塞都市アルグラよりこちらに向かって闊歩する巨大な九つの首を持つ機械のドラゴンだ。

 それを見て『アイアンディーナ』がォォオオオオオンと咆哮し、呼応するようにロックギーガともう一匹のドラゴンの咆哮も響き渡った。その彼らの怒りの声にベラは眼を細めて、ソレを睨みつけて、こう呟いた。


「やってくれるね、まったく。随分と不細工なものを造ったもんだよ」




  **********




『はは、ははは。これが機械竜、これが機械竜『オロチ』。これこそが力だ。あのベラ・ヘイローと同じ、ドラゴンの力か』


 ベラたちがその怪物の姿を見て怒りを燃やしている一方で、当の怪物の中にいる男は笑っていた。それはムハルド王国中央軍を率いているダール将軍その人だ。

 もっとも今の彼の全身は以前とは違ってトカゲのようなものに変わっており、そのうえ身体の半分は竜心石と融合して水晶と化し、操者の座コクピットとも同化して内より赤い光を心臓のように脈打たせていた。

 それがローウェン帝国のロイ博士が施した実験の成果であった。

 竜の因子を多く取り込んだダールはドラゴニュートのごときは虫類の姿へと変貌していた。さらには竜心石と共に物理的に己が愛機と一体化を果たし、そこにロイより提供された竜機兵ドラグーンから変じた八機の機械竜をも取り込んだ巨大な怪物となっていた。

 もはや鉄機兵マキーニとは言えず、竜機兵ドラグーンとすらも言えず、強いて言うならば機械竜ではあったが、それもまた正確とは言えない。竜機兵ドラグーン巨獣機兵ビグスビースト獣機兵ビースト化という、ここまで未踏の変化を為したソレに付ける名は今はなく、イシュタリアの賢人ロイは実在する魔獣に似ていることから、便宜的に『オロチ』と名付けていた。

 そんな後戻りできぬ身体になったダールの生命は言うまでもなく早々に尽きるだろうとロイは予言していた。

 だから、そうなる前にダールは己の使命を果たすべく進軍を開始した。


『将軍に続け。ムハルドの栄光を!』

『ラーサの栄光を!』


 そしてダールの後をムハルドの兵たちが続いていく。

 彼らは昨晩のダールとロイの間のやりとりを知らない。機械竜のことも分からぬ。だが彼らは巨獣機兵ビグスビーストのことは知っている。あの兵器は、国のために覚悟を決めた鉄機兵マキーニ乗りが己が身を犠牲にして生み出したものだと。

 今回用意された巨獣機兵ビグスビーストも、元は国の未来を憂いた志願者たちであったと彼らは聞かされていたし、それは偽りではなく事実だ。だからこそ彼らはこう考えた。


 我らが将軍もまた、彼らと同様に国のために命を使うことを決めたのだろうと。


 故にその意気を汲み取ろうと考えた彼らの士気は昨日までとはまるで違っていて、それは確かな力として戦場に現れる。


『ええい。その大きさに惑わされるな』

『取り囲んで、動きを押さえろ』

『機械のドラゴン。巨獣と同じように対応すれば』


 対してヘイロー軍も先日の勝利から決して士気は低くない。ラーサ族という戦士の一族故に、オロチなる化け物に対しても恐れを飲み込んで戦うことができる肝を彼らは持っていた。

 もっとも、それでも『そこにある力』が違う。いかにヘイローの戦士たちが勇者であるといえども絶対的な差がそこには存在する。


『愚かな。この九つの首が見えぬか!』


 迫るヘイロー軍に対してダールは吠え、同時に九つの首から一斉に炎のブレスを吐き出すと、迫るヘイロー軍の兵たちが次々と火の海に沈んでいった。生身の兵はもちろん、鉄機兵マキーニといえども防げぬほどの熱量に為すすべもなく、あまりにも呆気なく彼らは崩れていく。


『は、ははは。これだ。これがあの女がやってきたことだ! これが我らの受けた痛み! 苦しみだ! 貴様らもとくと味わえ!!』


 叫ぶダールの声と共に炎の中から九つの尾が飛び出し、それは炎から逃れたヘイロー軍の鉄機兵マキーニを弾き、貫き、砕き、歩兵たちをはね飛ばしていく。炎の海の中、まともに動けぬ彼らにとって縦横無尽に動き回る巨躯の怪物など悪夢でしかない。それはドラゴンという存在が敵に回った場合の恐ろしさをまざまざとヘイローの戦士たちに見せていた。

 対してムハルドの兵たちは戦意を高揚させダールと共に咆哮し、ヘイローの兵たちを圧倒し始めていく。ダールという巨大な怪物の勢いによって戦場は先日とは逆の状況へと変貌していく。


『さあ殺せ、ムハルドの戦士たちよ。我らこそがラーサ。我らこそがこの地の正当なる支配者なのだと彼奴らに知らしめよ!』


 朝日昇る地で九つの竜の首が吠え、ムハルドの兵たちは狼の群れのごとく突撃していく。こうして城塞都市アルグラにおけるムハルド王国と傭兵国家ヘイローの戦いの二戦目はムハルドの優勢で始まったのであった。

次回予告:『第226話 少女、怪物と出会う』


 きゃあ、パラのエッチ! ……などというラッキースケベイベントがあるかと思いましたが、ありませんでした。残念です。

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