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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第222話 少女、勝利を収める

「ギュギャアアアアアアア」


 ベラが自陣へと飛んで後退している頃、離れた戦場では槍鱗竜ロックギーガの咆哮が響き渡っていた。

 そして吠えているロックギーガの眼前には機械竜の一体が倒れており、ロックギーガが両腕で動きを封じていた。体躯も膂力も敵わず、頭部も押さえつけられた機械竜はもはや逃れるすべはなく、それを救助すべく空より攻めてくる竜機兵ドラグーンもロックギーガの背より飛ばされる槍鱗によって近付くことができない。

 射出される鱗は空を飛ぶ竜機兵ドラグーンに対してほとんど命中してはいなかったが、対空能力を持つというだけで竜機兵ドラグーンにとっては非常に脅威なのだ。何しろ空には踏ん張れる地面がなく、受けた反動で簡単に落下もしてしまう。そのうえ竜機兵ドラグーンは耐久力の高いドラゴンと違い、落下すれば自重で簡単に潰れてしまうのだ。空より一方的に攻撃できるのであればともかく、攻撃を受ければめっぽう弱いのは飛行型機体に共通した特徴だ。

 またロックギーガ周辺に集まってきているヘイロー軍とムハルド王国中央軍の激突は現在一進一退の状況となっており、もう一機の機械竜の相手にはアイゼンとガイガンが率いる隊が攻撃を行っていた。


『そうだ、取り囲め。機械の身体であろうとも対処は巨獣と変わらん。ドラゴンとて地の上であれば殺せるのは総団長が証明している!』

『そうだ。纏わりついてブレスを吐かせる隙も与えるな! 火を吐こうものなら喉を突け!!』


 アイゼンとガイガンがそう言い合いながら目の前で暴れまわる機械竜を追いつめていく。配下の兵たちも対鉄機兵マキーニ兵装を使って機械竜の動きを封じ、鉄機兵マキーニが攻撃を仕掛けていた。元より巨獣捕縛を起源としている対鉄機兵マキーニ兵装はドラゴンに対しても有効となる。

 それはロックギーガのように周囲に護りがない状態では、ドラゴンとて十分に対処可能な程度の脅威でしかないということでもあった。


『ふん。糸がよく効くようだな』

『ああ、ロックギーガとは違って機械の身体だ。関節の隙間があるから粘る糸が絡まりやすいんだろうよ叔父上。よしお前ら。左右から仕掛けろ。ここで仕留める!』


 ガイガンの言葉に全員が『オォオオッ』と声を上げて左右に分かれて動き出し機械獣を取り囲む。そこに機械の尾が振り回されるが、それを大盾持ちが三機並んで前に出て押さえ、長槍を持った鉄機兵マキーニたちが一斉に突いていく。


『キュギィィイイイイ』


 機械竜が堪らぬとばかりに全身を動かして逃れようともがくが、絡みついた捕縛用の鎖を鉄機兵マキーニたちが掴んで引いて一気に機械竜を前のめりに崩れさせる形で押さえつけた。


『ははは、ちょうど良い位置だな』

『動くなよ。痛みは一瞬だ』


 そこにガイガンとアイゼンが同時に飛び出した。どちらも同系統であるギミックウェポンのウォーハンマーを装備している。双方のウォーハンマーがギュリリリリリとモーター音を轟かせて加速し、そしてピック部分から炎を噴き出させながらガイガンが機械竜の首を右から、アイゼンが頭部を左から挟むように叩きつけた。


『くたばれローウェン!』

『これがドーマのケジメだ!!』


 左右の衝撃に機械竜の首がヒビ入り、千切れて頭部が宙に舞った。


「ギュギャアアアアアアア!」


 同時にロックギーガの戦いも終わりを迎えようとしていた。

 戦況の不利を悟った竜機兵ドラグーンたちが一歩を引いた隙にロックギーガが機械竜の胸部ハッチを噛み砕いたのだ。竜機兵ドラグーンたちがそれに気付いて再度突撃しようとし、乗り手が慌てて逃げ出そうと動き出したがもう遅い。

 逃がさぬとばかりに竜の爪に掴まれた乗り手が悲鳴をあげたが、次の瞬間に機械竜の乗り手は呆気なくロックギーガの口の中へと投げ込まれた。


「ウワァァアアアアア!」


 次の瞬間にはあぎとが一気に閉じられ、牙と牙によって千切れた乗り手の右腕が地面に落ちたが、それ以外の部分はロックギーガによって咀嚼されているのがその場にいた誰の目にも明らかだった。

 二機の機械竜はこうして敗れ、ついに竜機兵ドラグーンたちはその場から離脱し始めると、合わせるようにムハルドの兵たちも退却を開始する。


「ギュギャアアアア!!」


 獲物が逃げてしまう。その様子にロックギーガが吠えながら翼を広げたが、


「待ちなさいロックギーガ」


 それを止めたのは背に乗っていた竜の巫女リリエだった。

 ロックギーガは咆哮し不満げな視線をリリエに向けたが、リリエの視線は自陣の方に向けられている。


「ベラ様からの指示です。どうやら、此度の戦いは終わりのようですよ」


 リリエの言う通り、ヘイロー軍の陣地からは進軍停止の鐘が鳴り響いていた。どうやらこれ以上の追撃はしないとの判断のようで、ひとまずこの場の戦はヘイロー軍の勝利で終わりを迎えるようだった。




  **********




『よろしかったのですか?』


 すでに自陣に戻っているベラに対し、パラがそう尋ねた。

 進軍停止の鐘は鳴り響き、わずかな跳ねっ返り以外は逃げ出すムハルドの兵への追撃を止めて、その場で警戒の状態で待機している。


『このまま追撃をかけるという選択もありましたが』


 始まる前の戦力比にそこまでの差はなかったはずだが、結果を見てみれば戦いはヘイロー軍の有利で終わっていた。実際にこのまま追撃してさらに損害を与えるという選択肢もあっただろうとパラは考えたのだが、ベラはそうしなかった。


「ひゃはは。パラ、あんたもずいぶんと好戦的になったもんだね?」

『いえ、そういうつもりはないのですが』


 通信機からのパラの言葉にベラは「ヒャッヒャ」とさらに笑って返した。


「別にあたしゃ戦争が好きなわけじゃあない。うちの被害を考えれば、ここで終わるならそれが一番いいってだけの話さ」

『終わりますか?』

「さてね。馬鹿でなければ終わるんじゃないかい?」


 ベラがそう返す。そしてベラはムハルド王国中央軍を従えているダール将軍が馬鹿だとは考えていない。


「アイゼンたちが城塞都市の門を破壊してるから籠城が叶わないうえに、街の住人(お荷物)をかかえてる。それにだ。パラ、連中にここから先援軍が来ると思うかい?」


 その言葉にパラが少し考えてから『可能性は薄いでしょうね』と返した。


『こちらの兵力を拡散するために、あちらも兵を分けています。そのうえ内乱も続いている。こちらがけしかけているものですが、良い具合に効いています』


 ヘイロー国からの工作もあってムハルド王国内の状況は日に日に悪化しており、ムハルドという国はすでに機能不全に陥りつつあった。そのための起死回生のための進軍の結果が今だ。最低でも城塞都市アルグラを支配できれば、そこを拠点に再度挑む算段もついただろうが門はアイゼンによって破壊され、城塞都市は現在盾としての機能を失っている。

 ベラたちは知らぬことだが、ラーサ王国中央軍はローウェンの派遣軍との溝によって生まれた致命的な状況によって窮地に陥っていた。


「そういうことだね。一旦休息をとって降伏勧告を行いな。白旗を揚げるなら良し。無視して門の修復に乗り出すようなら明日の朝にでも進軍して皆殺しだ。敵の要であるドラゴンも巨獣機兵ビグスビーストも潰した。その上に今回の勝敗を考えれば、連中の士気は底なしに落ちているだろうさ」


 そう言って笑うベラのもとに、慌てた様子に連絡兵が近付いてくる。それを護衛の兵たちが止めようとしたのをベラは手で制し「なんだい?」と連絡兵を見て尋ねた。それに連絡兵が「ハッ」と声を上げて膝を突くと快活な声で報告を口にした。


「総団長、竜撃隊ガイガン隊長からの報告です。竜撃隊は竜機兵ドラグーン部隊を退けることに成功。また、ドラゴンを一体捕縛したとのことです」

次回予告:『第223話 少女、ペットを増やす』


 ベラちゃんは優しい心の持ち主です。逃げているおじさん達の追い打ちを掛けようなんて思ってもいませんでした。

 そして次回ペットが増えるようです。生き物を飼うときは慎重にね、ベラちゃん!

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