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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第220話 少女、進化を試す

『ギュギャァアアアア!』


 ロックギーガが咆哮して迫る二体の、否、二『機』の機械竜へとさらなる炎を浴びせていく。それに機械竜たちも対抗して炎のブレスを吐くが、出力の差でロックギーガには競り負けて二機同時に左右に避けて地上へと降下した。


『ギャッ』


 それにさらに炎を浴びせようとロックギーガが首を降ろすが、次の瞬間に上空より放たれた無数の槍がロックギーガに降り注ぎ、槍鱗を通って突き刺さる。


「落ち着きなさいロックギーガ。あなたの身体にはほとんど刺さっていないわ」

『ギュギッィイイ!?』


 背に乗っているリリエの言葉の通り、鱗を貫いた槍は二本ほどだ。それはベラの持つ捻れ角の槍ドリルランスに近い、巨獣用の装備であるらしかったがその機能が発揮される前にロックギーガは自らの炎のブレスで燃やして破壊した。


『グルルル!』


 見渡せば地上に落ちた機械竜たちにドーマ兵団の鉄機兵マキーニたちが攻撃を仕掛けていた。冷静になったロックギーガはそれを見て己は空に向けて火を吐いたのだが、すでに竜機兵ドラグーンたちは上空にいて届かない。小虫……そうロックギーガは心の中で毒づき、さらに唸りをあげた。この場にある竜種の頂点である己に対しての敬意のなさに怒りを覚えていたのである。

 そもそもがロックギーガにとっては機械竜も、竜機兵ドラグーンも、周囲を護る鉄機兵マキーニもすべて同種として認識する存在だ。それというのも鉄機兵マキーニとは、かつてフィロンと呼ばれる遠方の大陸で起きた戦争で死んだドラゴンたちの核『竜の心臓』を大量に入手したイシュタリアの賢人によって造られたものであり、言ってみれば鉄機兵マキーニとはドラゴンの亜種といえる存在であった。強心器によって乗り手と、さらには巨獣とも融合し、再び種として正しき姿へと戻ったロックギーガにとって彼らはあまりにも脆弱な存在だ。もっともだからといって油断はしない。

 ロックギーガの長は、それらと同じ脆弱な身でありながら己を凌駕した。それに地を這う二機の機械竜。あれらは歪だ。より色濃く竜の因子を持ちながら、機械としての特性も保持し続けている。


「ロックギーガ、アレを放置はできません。竜を冒涜する力を感じます」


 リリエの声が響き、それに応じる意思を込めてロックギーガが咆哮する。ロックギーガはリリエに従属しているわけではないが、長に与えられた道具として認めてはいる。己に代わって思考する外部装置のようなものだと考えていた。

 そしてロックギーガも獣人の娘の認識を正しいと感じていた。

 ロックギーガのように竜に還ることもなく、機械という枠組みに留められ続けているせいでアレらからは同種の悲鳴が聞こえてきている。矮小なる存在に邪魔され、正しき姿に戻れぬと鳴いている。それは竜種に対する不遜とロックギーガは感じていた。

 そして空を飛び回る半端者たち。下らぬ存在。再び降下し、攻撃を仕掛けてきた竜機兵ドラグーンに対してロックギーガはカウンターに紅蓮の炎を再び見舞うが、二機の機械竜が合わせて炎を吐いて相殺した。それをロックギーガは笑う。ロックギーガが放てるのは炎だけではないのだ。ただブレスを相殺しただけでは足りないことに彼らは気付いていない。


『槍が飛んできた!?』

『クソッ、離れろ』


 炎の中より槍のような鱗が飛び出して、二機の竜機兵ドラグーンを貫いて落下させた。

 そこにヘイロー軍の鉄機兵マキーニが突撃していくが、ムハルド王国軍の鉄機兵マキーニたちも黙っているわけではない。そしてその場で両軍がぶつかり合い、ロックギーガを中心に混戦の様相を呈し始めていた。 




  **********




『ベラ様、現在竜撃隊が竜機兵ドラグーン部隊と交戦を開始。状況は優勢との報告が入っています』


 戦いが続く中、ベラのいる『アイアンディーナ』の操者の座コクピット内にパラからの通信が響き渡る。それにベラは目を細めて『銀色の機体は?』と問い返した。

 相手がドラゴンであろうと、ただそれだけでロックギーガがやられるとベラは思っていない。問題なのはかつてベラが戦ったこともある銀色の鉄機兵マキーニを駆るローウェン帝国の八機将のひとり、ウォート・ゼクロムだ。アレが竜機兵ドラグーン部隊を率いていたとすれば、ロックギーガ、アイゼン、ガイガンであっても相手にするには厳しいのではという感覚がベラにはあった。


『報告には上がっておらず。確認できていません』

『ふーん。そうかい。ま、いいか』


 いないのであれば、今はそれを気にかける必要はない。それからパラが『それで、ディーナはよろしいのですか?』と声をかける。その意味するところは『アイアンディーナ』の現在の姿を見れば明らかであった。


『変わっちまったもんはしゃーないというか、ディーナが望んでこうなったんだ。なら必要だってことなんだろうよ』


 そう言ってベラが笑う。実のところ、つい先ほど『アイアンディーナ』の左腕内のクロノボックスの変異反応が臨界を越えて唐突に左腕が変化したのだ。デイドンの甲殻を元にした盾が変形し、噴射口のような形状に変わったのである。


『おい、ご主人様。バッカスでアクセスして調べたがそいつは竜気をチャージして使うもんだ。今はすでにチャージは済んでるが、再度充填するには竜の心臓デイドンハートを起動しねえとできねえから気を付けろよ』

『あいよ。ご苦労だったね、下がってな』


 つい今まで、変化した『アイアンディーナ』を調べていたボルドの言葉にベラがそう返事し、それから操者の座コクピット内を見回した。


『さあ行こうかディーナ。あんたが選んだ力だ。そいつをあたしに見せてみろ!』


 そのベラの意志に従い、『アイアンディーナ』が機竜形態へと変形していく。

 もっともその姿は以前とは違い、変形後には両腕がなかった。以前は右腕が機竜形態の頭部になり、錨投擲機アンカーショットが右腕の代用となって設置されたのだが、現在の錨投擲機アンカーショットは背に出た操者の座コクピットの横に配置され、背負っていた捻れ角の槍ドリルランスが装填されている。また変化した左腕についた盾の『噴射口』はさらに開いた形で尾の接続部へと回っていた。

 そして噴射口から炎を吐き出させると、ヘイロー軍の陣営から『アイアンディーナ』がまるで一本の槍のように一気に飛び出していったのである。

次回予告:『第221話 少女、奇襲をかける』


 今回は特にピンチになるまでもなく、進化が起きたようです。

 ディーナちゃんが用意したプレゼント。果たしてベラちゃんはちゃんといかせるでしょうか?

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