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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第215話 少女、みんなを集める

「総団長、俺が来てから一斉に攻撃を仕掛けると聞いていたんだが」


 ムハルドの軍を退かせ戦闘を終えた翌日、ラグナル砦にカイゼル兵団を率いてやってきたカールが受けた報告は戦闘の終了であり、その言葉はカールからこぼれたものだった。

 昨日、砦に再度の侵攻を行ったムハルド王国軍をベラが返り討ちにし、彼らは大敗して退却していたのである。


「ヒャッヒャッヒャ、悪いね。こういうのは早い者勝ちなのさ」


 そしてカールに対してベラがそう返して笑う。

 当初の予定では機動力のあるベラたちが先行して砦の防衛に努め、カイゼル兵団が合流してから攻めるというはずだったのだが、決着はすでについている。鼻息荒く勇んでここまでやってきたカールが気落ちするのも仕方のないことではあった。


「ま、今回は巨獣機兵ビグスビーストが出てきたからね。正直、あれがなければあたしも少しは我慢してたと思うよ」

「絶対嘘だ」


 そう小さく呟いたカールの言葉に、この場の誰もが心の中で頷いていた。攻撃を受けたベラが防衛に徹するわけがなく、どうであるにせよこの状況が起きないわけがなかったのだ。

 なお、今ベラたちがいるラグナル砦の軍議室内には竜撃隊隊長のガイガン、竜使いのリリエ、リリエの護衛兼竜撃隊の獣人たちを取りまとめて副隊長の役割に付いているケフィンと、砦を任されている部隊長たちがいる。

 それからカールは頭を振ってため息をついた。そもそも敵を追い払ったことに文句を言う筋合いもないのだ。ただ、気落ちしている気分は嘘ではなかった。


「終わったんならそれはそれでいいんですがね。まあ、ベラ様もそうですが、竜撃隊の隊長殿も無事なのは何より。もうお年ですからね」


 その言葉にカールの父親でもあるガイガンが眉をひそめたが、この場で言葉を返すことはなかった。わずかに「後で覚えておけ」とだけボソリと呟き、カールの肩が少しだけ震えたのもいつものことである。


「と、ともかく、移動中に早馬で連絡を預かってきています。早々に人を集めてもらったのもこれを見てもらうためですんで」


 カールがそう言って懐から地図が描かれた羊皮紙を取り出すとテーブルに広げ、その場の全員がそれに目を向ける。そこには傭兵国家ヘイローとムハルド王国の区域や現状の軍の経路が細かく書き込まれており、その中でも新しく書き込まれた部分に注目したベラが口を開く。


「へぇ。ムハルドの中央軍の動きに確認が取れたと。そりゃあ、ようやくという感じだねえ」

 

 その言葉にカールが頷く。交易都市レオールを奪ってから彼らはずっと勢力を伸ばしてきたが、それでもムハルド王国の軍の本隊との衝突は今までなかった。ベラたちが上手く立ち回ったということもあったが、主な原因はムハルド王国内部でのゴタゴタによって中央軍が上手く動けていなかったことの方が大きく、今になって動き出したのはその問題が解決したから……ということだろうとも予測されていた。

 

「早馬でここまで飛ばしての連絡だったね。で、報告ではここのアズロー高原で連中の確認が取れたと。時間を考えれば、アイゼンに任せた城塞都市アルグラへとそろそろ辿り着く可能性が高いわけだ」

「総団長、次の予定はすでに落とされた南西のザラの街の奪還に向かうはずでしたが、こうなれば予定変更でよろしいですな?」


 ガイガンの言葉にベラが頷き「さっさとアイゼンのところに向かうよ」と返した。


「最近の襲撃の多さはこっちの軍を散らばらせるための囮だろうってのは分かっていたけどね。竜撃隊とカイゼル兵団はこのまま城塞都市アルグラへと向かう。こっからはスピードが肝だ。それにレオールよりもここからの方が近いってことを考えれば、むしろあたしらはツいてるとも言えるわけだ。日頃の行いがいいからかね?」


 ベラの口にしたその言葉に全員がドッと笑ったが、ベラが睨みつけることでピタリと止まった。どうやら冗談のつもりではなかったらしい。それからベラは地図に書かれた一文を指さして口を開く。


「ともあれ、問題はローウェンだ。兵数こそ少ないが竜機兵ドラグーンがいるって書いてあるし、巨獣機兵ビグスビーストを実戦でまともに使えるようにしたのも連中だろうからね」


 その言葉にカールが挙手して口を開く。


「総団長。その巨獣機兵ビグスビーストだが、今回も出たと聞いたが」


 その言葉にベラが目を細めて「ああ、そうさ」と口にした。

 それもまた、頭の痛い話ではあった。外法によって生まれた機械の怪物。それはこれまでにない存在であり、非常に厄介だからこそ先の戦いでもベラは最初に巨獣機兵ビグスビーストを仕留めていたのである。


「火の玉を吐き出して砦に砲撃してきた。後何発か喰らえば砦の扉が破壊されてたかもしれないね。それだけの威力はあった」


 その言葉にはカールも眉をひそめざるを得ない。

 それは、リンローの機竜形態や槍鱗竜ロックギーガを有しているヘイロー軍の優位性を覆すシロモノだ。それも今後も生産は可能だという。


「広範囲で、離れた距離も攻撃できる新しい兵器。ザラの街でも確認できていたからそいつを鹵獲したかったんだが……まあ、今はいいさ。どうせ、これからぶつかる中央軍でも使ってくるんだろうしね」


 そう言ってベラが窓の外を見る。その先の方角には城塞都市アルグラがあり、今もアイゼン率いるドーマ兵団が駐留しているはずだった。

 けれども、ベラたちはまだ知らない。この時点ですでに状況は一歩先へと進んでいたのだということに。ベラたちがラグナル砦でこうして話し合っている頃、アルグラではすでに戦いの火蓋は切られていた。それも一方的な状況で……




 **********




『なんということだ。燃えている。アルグラが。ワシの任された街が!』


 そして、アルグラの街中では鉄機兵マキーニに乗ったアイゼンが怒りに歪められた顔でその様子を見ていた。それはあまりにも突然に訪れた。警戒はしていたはずだった。敵に竜機兵ドラグーンがある以上、そうした行動を取る可能性はあるだろうと。

 しかし、そこにある数が違った。それに何の迷いもなく彼らは街を焼いた。街を焼く炎の中では二体の巨大な怪物の影が揺らめき、また周囲には翼を持つ竜機兵ドラグーン隊と、さらには竜翼ドラゴンウィングを装備する銀色の鉄機兵マキーニの姿もあった。

 それはある種の意趣返しであった。

 かつてベラがレオールをドラゴンを使って攻略したように、敵はこのアルグラをドラゴンを用いて攻略してきた。

 こうしてドーマ兵団は多くの兵を失いつつもアルグラを放棄し撤退することになり、ヘイローとムハルド、国同士の最初の本格的な衝突の勝利はムハルド王国に軍配が上がった。もっとも燃える炎の中ではためく旗に描かれているのは、ムハルド王国ではなくローウェン帝国の紋章であったが。

次回予告:『第216話 少女、負け犬を見る』


 どうやらベラちゃんのペットであるロックギーガちゃんのお友達が来てくれたみたいですよ。

 これはペットのためにベラちゃんが一肌脱がないといけませんかね?

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