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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第二部 九歳児の楽しい戦乱の歩き方

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第209話 少女、処理をする

「ふん。たく、シンドイねえ」


 大きく息を吐いてからベラがそう口にする。

 それから用意された天幕の中にある台座の上でゆっくりと肩の力を抜いた。

 体力はすでに限界に近い。囮役を買って出たとはいえ、ここまで大立ち回りが過ぎた。体力だけでなく、集中のし過ぎで気も張っている。それから水筒の蓋を開けると一気に自分の頭にふりかけた。


「ちょいとハシャぎ過ぎた。あんの巨獣機兵ビグスビースト相手にして熱くなっちまってたみたいだね」


 ベラの言葉に後ろに控えているガイガンとパラが苦笑する。

 ムハルド王国東部軍からは蒼竜協定にて指定されている敗北を宣言する白き旗がすでに揚げられており、今は戦いが終結して後始末を行う段階だ。


「それで総団長、あちらの代表をこのまま通して問題ありませんか?」


 ガイガンがそう尋ねる。

 天幕の裏には『アイアンディーナ』が仁王立ちをした構えで待機していて、周囲には竜撃隊の鉄機兵マキーニが、さらには警護の兵たちも並んでいる。守りは万全。けれども今のベラの消耗は著しい。だがベラは「大丈夫さ」と返す。


「これから負け犬を拝もうってんだ。まだ寝てらんないさ。ま、さっさと出迎えてやろうじゃないか」


 ベラがそう言うとガイガンが天幕の外へと出ていった。

 すでにムハルド王国東部軍の一団もこちらに到着しているのだ。そして、それはアイレーン騎士団を名乗る騎士団であり、彼らは東部軍の代表であるとのことだった。




  **********




「直接には、お初にお目にかかります。アイレーン騎士団、マズダ・アイレーン騎士団長であります」


 そしてガイガンに呼ばれて天幕に入ってきた男は、緊張した面持ちで膝を突きながらそう自己紹介をした。


「ヘイロー大傭兵団、総団長ベラ・ヘイローだ。顔を上げな」


 そのマズダを値踏みするように見ながらベラがそう口にする。

 この場に来たのはアイレーン騎士団の団長と副官。それ以外は距離をとって待機させている。鉄機兵マキーニもないうえに、この状況であればたとえ相手に害する意志あろうとも対処は可能だ。

 問題なのは、ただの騎士団である彼らがムハルド王国東部軍の代表を名乗っていることだった。


「確かあたしは、ムハルドの代表が来るって聞いていたんだけどねえ。ザモス・カイターン将軍はどうしたんだい?」


 そうベラは言いながらも、実のところ予想は付いていた。

 マズダの副官が持つ血の臭いがする包み。それが何かをベラはよく知っている。何しろ、自分が以前に売っていたものだ。


「はい。ザモス将軍閣下はこちらに。ムロン、お見せしろ」


 その言葉に、マズダの副官が前に出る。

 それには天幕内の警護の兵たちが前に出ようとしたが、ベラが手を挙げて制止する。

 火薬の臭いも、魔力も感じない。血の臭いが漂う塊の正体はひとりの男の首だろうとすでにベラは理解していた。それから副官は包みを地面に置くと、その結びを取って中身を広げた。

 それを見たガイガンが眉をひそめて、ベラに口を開く。


「ザモスですな。間違いなく」

「そうかい。味気ない対面だねえ」


 そう返しながらベラはそこに置かれた首を見た。

 顔はベラの奇襲によって焼かれた痕が残っているが、その表情が穏やかだ。恐らくは死後に化粧を施され、飾り付けられたのだろうが、ともあれその首は話に聞いていたザモスの特徴とは一致していた。


「ザモス将軍は、自らの首で敗北の責任を……と」

「そうかい。ならばその首、貰い受けよう。その意も汲もう。無論、これは全面降伏だ。それは理解してもらうがね」


 そう言いながらベラがマズダを見た。


「それで、今のムハルド王国東部軍を率いているのはアンタという認識で良いのかい? いまいち、そこが見えてこないんだが」

「はっ。副官のモーゼル様はまだご存命ではありますが、ドラゴンの炎を受けて重傷を負って身動き取れぬ状態です。代わって現在の代表は各団長の承認を受けて私となりました。全軍の同意の印はこちらに」


 そう言ってマズダが広げた巻物をその場に置く。

 そこには恐らくはムハルド王国東部軍の各団長たちなのだろう名前が並び、血判が押されてもいた。それを見てベラも「そうかい」と言って頷く。


「ならば、それも受け取りはしよう。けれども、マズダと言ったね。あんたが、或いはあんたらの誰かが粗相そそうをしようものなら遠慮なくあんたの首をはねる。それは忘れないようにしてもらいたいもんだ」

「承知いたしました」

「ああ、いい返事だ。ま、あたしらも蛮族じゃあない。蒼竜協定に沿って執り行いはするさ。細かいことはパラ、あんたが指揮しな」

「はい」


 ベラの言葉に背後にいたパラが頭を下げる。

 それからベラはマズダたちを下がらせ、続けて警護以外を天幕から出すと、ゆっくりと背もたれに寄りかかって大きく息を吐いた。やるべきことは終えたし、ベラ自身がもう限界でもあった。


(レオールは落とした。であれば、まずはここを足場にして、北部族や反抗勢力を集める。ムハルドはすぐに来るだろうが……背後の憂いは取っておきたいし、ルーインと協調も考える必要はあるね。まったく、やることばかりが溜まっていくね)


 そう考えながらもベラの瞳がゆっくりと閉じられていく。

 目覚めればまた次の戦いが待っている。それまでのしばしの休息。そして、少女はゆっくりと意識を闇の中に落としていったのであった。 

次回予告:『第210話 少女、国を興す』


 お疲れさまベラちゃん。お友達がたくさん増えましたね。 

 まだ足りないものはたくさんありますけど……そろそろみんなで遊べる場所、造りましょうか?

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