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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第二部 九歳児の楽しい戦乱の歩き方

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第183話 少女、諦める

 ヘイロー大傭兵団の名も宣言され、カールとリンローが副団長へと就任してそれぞれの部隊を率いることが決まり、次の戦闘においてのいくつかの打ち合わせを終えたところで、会議は終わりを迎えた。

 カールとカイゼル族へのお咎めがなかったことに獣機兵ビースト部隊の副隊長たちが若干の不満を漏らしたものの、今回のベラの決定により獣機兵ビースト部隊の待遇改善があったことは彼らにとっても魅力的であり、カイゼル族の方も不満こそあるものの口に出せる立場ではないうえに、またその後の展望を聞かされたことで興奮状態にあった。

 それからベラは、ジャダンを引き連れて『アイアンディーナ』の整備されているガレージに向かっていく。

 追われるカイゼル族を救いに行き、そしてここまで戻ってくるのにも鉄機兵マキーニ『アイアンディーナ』は無理を重ねてきた。先の戦いで竜翼ドラゴンウィングが壊れてしまったし、戦闘でのダメージこそほとんどないものの、内部の負荷が深刻なものとなっているとの報告もベラのもとへと届いていたのである。




  **********




「ベラ様。竜翼ドラゴンウィングは、やはりもう駄目のようです」

「ああ、やっぱりそうかい。ま、あれだけ酷使すりゃあそうなるかい」


 整備兵たちが申し訳なさそうな顔で返してきた言葉にベラは眉をひそめながらも頷く。

 ガレージに来て早々に尋ねたベラに対しての言葉がソレであった。そして、整備兵たちの返答はベラの予測通りのものではあったが、ベラにしては珍しく気落ちした顔でため息を吐いていた。

 その様子にビクビクとしながらも整備兵は言葉を重ねていく。目の前にいるのは彼の三分の一も生きていない少女ではあったが、今この場においてもっとも立場が上の人物であり、それも実力で奪い取ったのだと知っている。失言ひとつで己の首が飛ぶ相手なのだから、言葉には十分に気をつけざるを得ない。


「はい。メインフレームが崩壊を開始しておりまして、内部の魔導線がズタズタに千切れて、神造筋肉マッスルクレイも断裂しております。肝心の魔導回路がショートしており、魂力プラーナを注いでも再生させることが叶いませんでした。ここまで来てしまうと残念ながらアガリです」

「ふぅ。そうだろうとは思ったけど……仕方がないねえ」


 整備兵の言葉は、自身も一流の鉄機兵マキーニ乗りであるベラにも理解できている。鉄機兵マキーニは、他の鉄機兵マキーニや巨獣から得た魂力プラーナによって自己修復や自己進化を行うことが可能な存在だが、それぞれのパーツの再生を処理する魔導回路が死んでしまえばソレも叶わない。だから直せとは言わなかった。


竜翼ドラゴンウィングなどの竜機兵ドラグーンのパーツは、構造が複雑で扱いも難しい。負荷に対する耐性は鉄機兵マキーニよりも低いようですし」

「だろうね。まあ繊細なパーツだ。特に竜機兵ドラグーンは乗り手の意志をダイレクトに機体に反映させるからね。その分、反応もピーキーになっているし、制御も細かくなってんだろう。実際に扱ってるあたしにしても扱いは実際難しいと感じるしね。しっかし、参ったね」


 そう言いながら、なおも口惜しそうにベラは『アイアンディーナ』の横に置かれた、回収された竜翼ドラゴンウィングへと視線を送る。その様子にジャダンがヒヒヒと笑って口を開く。


「しかし、ご主人様にしては執着しますね」

「なんだい? 悪いかい?」

「あーいえ、空を飛べるってぇのがそんなに魅力的なことだとは思えないもんで。ヒヒヒ」


 あまり見ないベラの様子に思うところあったジャダンがそう言葉を返す。


「魅力的に思えないねえ。確かあんたにも一度味わわせてあげたはずなんだけどねぇ?」

「すいません。それが原因っす。死ぬかと思った記憶しかないっすから。二度と勘弁願いたいもんですよ。いや、本当に」


 話している途中で、だんだんと顔を青ざめさせたジャダンにベラが「ハッ」と笑う。

 以前に機竜形態の『アイアンディーナ』に乗せられて空中飛行を味わったことがジャダンにはあったが、それは爆破するためなら戦場で死ぬことも厭わぬ彼であっても二度とごめんだと思うほどの体験だったようである。そのことを思い出して少しだけ笑ったベラが再び整備兵へと視線を戻す。


「それで翼をもがれたうちのディーナだけど、他に問題はないかい? 道中にも結構無茶をさせたから気にはなってるんだけどね?」

「はい。仰る通りに全体に負荷がかかっていて、現状においても万全とは言い難い状態ではあります。可動部の損耗パーツの換装は終えておりますので戦闘は行えますが、一度フルチェックをかけた方がよろしいでしょう。もっとも我々ではなく、ボルド整備長に任せるしかないでしょうが」

「そうかい。まあ、そうなるわな」


 整備兵の言葉にベラが頭をかきながら頷く。他に比べて『アイアンディーナ』は文字通りに規格外な部分が多く、それでなくとも癖があり過ぎる機体だ。結果として、専属であるボルドなしではまともに手を付けることが難しいという問題が生まれていた。


「ま、戦闘が一区切り付くまでは騙し騙しやってくしかないか。それにしても翼は欲しいねえ」

「ムハルドに竜機兵ドラグーンはいないようですから、手に入れるのは難しいんじゃあないっすかね」


 ジャダンの言葉にベラが眉をひそめながら「そうだねえ」と返す。


「けど、ムハルドは無理でもルーインでなら手に入るかもしれないね。ジグモンドに連絡を取って手に入れられるようなら送ってもらえるように頼んでおくかい」


 ベラがそう嘯く。現在のルーイン解放軍が戦っている新生パロマ王国軍は、ローウェン帝国より技術提供されて竜機兵ドラグーンを多く所持している。であれば、それと対峙しているルーイン解放軍ならば竜翼ドラゴンウィングも手に入ることが可能なのではないか……とベラは考えたのだ。

 ともあれ現状ですぐに手に入れることはできぬし、ベラも渋々という顔で諦めると『アイアンディーナ』を改めて見て「そんじゃあ頼んだよ相棒」と口にした。そして、その声に反応して『アイアンディーナ』からは咆哮のような駆動音が発生し、ガレージ内に響き渡ったのであった。

次回予告:『第184話 少女、攻める』


お空を自由に飛ぶことはしばらくできなさそうとのことで、それを知ったベラちゃんが落ち込んでます。

遊ぶ相手はいっぱいいますし、早くいつもの笑顔を取り戻してくれると良いのですが。

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