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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第二部 九歳児の楽しい戦乱の歩き方

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第151話 少女、新しいペットを飼う

※総合評価10000ポイント超えたようです。読んでくださっている方々には感謝を!

「まさか、全部取り込んじまうたぁな」


 ラハール領を賭けたヘールの街での決闘が終了したとの知らせを受けたボルドたちは今、隠れていた街の外の森の中から出て、魔導輸送車マナキャリアに乗って街の中を移動していた。

 門から入った段階で魔導輸送車マナキャリアの前後には、カールの部下の鉄機兵マキーニたちが護衛として付いており、随分と物々しい光景で彼らは中央通りを進んでいた。

 もっとも、それでも二年半前に比べれば、まったくマシだとボルドは考える。その頃の彼らはこの街を占拠した後、奴隷であるにも関わらず様々な案件を背負わされて街中を走り回っていた。

 傭兵団も今よりは数が多かったが、それでも街を、領土を支配するには全く足りていなかった。結局のところはベラ・ヘイローという暴力により恐怖で支配し、己らはその盾を持って住人たちに要求し続けていたのが実体なのだ。

 一方で現状はそうではない。

 確かに街全体がザワザワと喧噪に包まれてはいる。だが、カールによる統治がすでに二年は続いており、獣機兵ビーストなどという問題を孕んではいるものの安定した支配が行われているようだった。

 その状況は、以前に比べれば地に足がついているようにボルドには感じられていた。


「とはいえだ。ところどころで獣機兵ビーストの姿も見えるし、落ち着かねえっちゃあ落ち着かねえかもな」


 獣機兵ビーストは、このラハール領に入ってからことあるごとに襲撃を受けた者たちが乗っていた機体だ。今もカール配下の鉄機兵マキーニに護られているとはいえ、身の危険は感じている。そもそもが現ラハール領の領主であるカール・カイゼル自体が味方であるという確証も今のボルドたちにはなかったのだが。


「ヒヒヒヒ。ボルドの旦那ぁ。確かにちと恐いっすけどねえ。けぇど、獣機兵ビースト鉄機兵マキーニが、仲良くとは行かないまでも並び立っているようですから、知らせの通りではあるんでしょうよ。さすがご主人様と……いうべきっすかね?」


 魔導輸送車マナキャリア内のガレージルームの中でボルドとともに外の様子を見ているジャダンがそう口にした。

 そもそもの予定としては、ラハール領の領主であるカールを取り込み、街の中に監視として用意されていたムハルド王国の獣機兵ビースト部隊を一掃する……そういう予定であったはずだ。

 ところが、カールの使いからの知らせでは、倒すはずの獣機兵ビーストすらもベラは従えることに成功したとのことなのだ。

 どうしてそうした状況になったのかが情報のないボルドたちには理解できなかったが、少なくとも伝えられた言葉が事実であることは、彼らも街に入って把握できていた。


「しっかし。予定とはどうも違うみたいっすけど、どうするんすかね? あっしは早く燃やしたいんすけどね」


 そう言ってジャダンが手をギュッギュと握る。

 今回の戦いが相当な混戦となると予想していたジャダンは今回、盛大に爆発させるつもりであったのだ。血の雨を降らせて、喉を潤そうと下半身をずっと怒張させていた。それが吐き出せない状況になったと知って、今は相当な苛立ちを覚えているようだった。

 だがボルドはそれを呆れた顔で見ながらも「抑えとけっての」と返す。


「どうせしばらくすりゃ、嫌でも戦場に連れ出されるだろうさ。何をするのかまでは知らねえが、ムハルドと一戦する気なのは確かだからな」

「ま、そうなんですがね」


 これからそう遠くない内に、次の戦いが待ち受けているだろうことは、ボルドもジャダンも理解しているところだ。


「それに兵隊は多い方が良いと思うぜ。ちゃんと使えるんならな……って、ご主人様の野郎。アレ、使ったのかよ」


 そう口にしたボルドの目に映るのは領主の館だ。その入り口の前になぜかドラゴン形態のまま立っている『アイアンディーナ』の姿があったのだ。


「ありゃ、ドラゴン形態じゃないっすかボルドの旦那。ガレージには入れてないんすね」


 ヒューと口笛を吹くジャダンに、ボルドが肩を眉をひそめながら言葉を返す。


「確かあの館のガレージにゃあ、ノーマルサイズの鉄機兵マキーニしか入れられねえ規格になってたはずだ。ドラゴン形態は頭部が長いからな。ああなっちまうと普通のガレージにゃあ、首が邪魔して入れられねえんだよ」


 ここまでそのまま作業のできた魔導輸送車マナキャリアや軍用のガレージで整備を行っていたジャダンは、そのことまでは知らなかった。それにジャダンが「へぇ」と口にしたところで魔導輸送車マナキャリアが止まる。

 ようやく、領主の館前に辿り着いたのだ。




  **********




「遅いんだよ、このノロマ」


 ボルドたちが領主の館の敷地内に入ると、そこには獅子顔と鬼顔の大男を従えたベラが立っていた。そして、魔導輸送車マナキャリアから出たボルドにすぐさま罵声を浴びせてきたのである。

 それにボルドが嫌そうな顔をしながら「いやいや」と首を横に振る。


「連絡が付いてからソッコーで飛んできたっての。これ以上早くなんて……ああ、や、すみません。拘束呪文とか唱えそうな口の動き止めてください。ホント、勘弁してください」


 すぐさま返ってきたボルドの謝罪の言葉に、ベラが舌打ちをしながらクイッと顎を動かしてその場に置かれている『アイアンディーナ』を示した。


「分かってないんだよ、アンタは。あたしは忙しいんだ。ディーナをさっさと直しときな。言い訳なんざ聞きたくないんだよ」


 その言葉に、不満顔ではあるがボルドが頷く。


「まーやるけどよぉ。実戦じゃまだ使わないって言ってたじゃねえか。自力じゃ戻せねえってのに」

「え、それマジかよ。あのとき俺ら騙されたのか?」

「今更だ。余計なことを言うなリンロー」


 話を聞いていた獅子顔の男の呟きに、鬼顔の男がそう注意を入れる。そのやり取りにベラがチラリと睨み付けると、ふたりともビクリとなって口を閉じた。

 その瞳に恐怖を宿していることを感じたボルドが眉をひそめると、一緒に降りていた魚人マーマンのマギノが「なるほどねぇ」と頷いていた。


「そういえば……竜種に魔獣は本能的に恐れを抱くという説があったね。竜機兵ドラグーンでは効果がなかったけど、ドラゴンやそれに近い相手ならば、獣機兵ビーストはかなり動きが鈍くなるらしいし」

「へぇ、そうなのかい?」


 それはベラも初めて聞いた話のようであった。


「うん。獣人の魔獣使いテイマーってのは、ドラゴンの鳴き声を真似て魔獣を操るらしいから」

「ああ。ヴォルフがドラゴンに拘ってたのは、そういうことかい。となると今のあたしは魔獣使いテイマーの適正があるのかもしれないね」


 そう言ってベラがヒャッヒャと笑う。魔獣を操るベラの姿を想像したボルドがあまりにも似合っていると感じたが、その場でひとり怒気を荒くした者がいた。


「魚のジジィ。俺らがドラゴンってのにビビってるってのか?」


 獅子顔の獣人がマギノを睨んで声を荒げるが、マギノは特に気圧されることもなく笑って頷いた。


「うん。まあ……ベラちゃん怖いからさぁ。単純にそれで怯えてただけかもしれないけど。でも、魔獣が本能的にドラゴンに恐れを抱いてるのは事実だよ。実際に試したしね。竜の血を浴びてベラちゃんも恐らくは竜人というものになってるようだから、ベラちゃん本人も魔獣に対して支配力がある可能性はあるね」

「なーに言ってるんだい。別にあたしゃ恐がれてたりはしてないだろ、別にさ。なあボルド?」

「あ? あ、ああ。そうだな。アンタは奴隷にも優しい人だよ」


 眉間にしわを寄せて睨み付けたベラに、ボルドが冷や汗をかきながらそう言って頷く。

 それを見たベラが満足した顔をしていたので、微妙に本人も気にしているのかもしれなかった。それからボルドが獅子顔と鬼顔の男たちを見て口を開く。


「で、ご主人様。そっちのふたりは誰なんだよ? ツラ見りゃ何となくは分かるんだけど」


 ふたりとも、明らかにただ獅子や鬼に似ているというレベルを超えた顔の作りをしている。それが魔獣の血を受けた獣機兵ビーストの乗り手たちであろうことは当然ボルドにも理解できたが、どういった立場なのかまでは分からない。その問いにベラはふたりを見てから首を傾げた。


「おんや。そうだねえ。ええと。なんて名前だったっけね?」

「おい。ベラ……いや、そのベラ様」


 名前を呼んだところ睨み付けられて、獅子顔の男が様を付け直して言葉を返すと、ベラがヒャッヒャと笑いながら「冗談さ」と返した。


「けどね。敬意って奴は忘れちゃいけないよ。それがアンタの命がこのまま残るか捨てられるのかを分ける結果にもなるんだからね。で、ボルド。こっちの猫っぽいのがリンローに、鬼っぽいのがオルガンだ。獣機兵ビースト部隊はこいつらが率いているのさ」

「やっぱり、獣機兵ビースト乗りか。だから、その面構えってわけかい。まあ、精悍でいいんじゃねえの」

「世辞はいいさ」

「ドワーフのジジイめ、言いやがるな。まあ、よろしく頼まぁ。そっちの爺さんとかもな」


 リンローとオルガンが笑いながら、そう返した。

 それからすぐにベラがボルドに指示を飛ばす。


「ともかくだ。ボルド、ディーナを元に戻しておきな。頭が埋まったままじゃああんまりにも可哀想なんだよ。さっさと助けてやっておくれ」

「へいへい」

「埋まってる? 頭ならあるじゃねえか?」


 リンローの問いに、ボルドが肩をすくめながら答える。


「こいつの変形機構だと、人型のときの頭部が操者の座コクピットの中に収納されちまってるんだよ。元々そうした仕組みは出来上がりつつあったんだが、まだ完成してなくてな。今は手動で引き上げてるし、調整も徐々に進めていってるところなんだ」


 それはデイドンの『竜の心臓』をマギノが組み込んだ際に起きた『アイアンディーナ』の変化であった。未だに成長途中のようで、ボルドが再会したときには変形自体ができない状態だった。

 その後、ボルドの調整によって一応変形は可能となったものの、現状でもいくつかの不具合も生じており、実戦での使用については危険視されていたのである。


「別に変形しなくても、普通に動かせんだぜ。ご主人様も無理にやんねえ方がいいって。こればっかしは結構危ねえからよ」

「ボルド。アンタの言いたいことは分かっている。だけどディーナが見せたがってたんだ。それは察しな」


 その言葉にボルドが眉をひそめるが、それには何も言い返すことはなかった。ベラと『アイアンディーナ』の奇妙な繋がりについてはボルドも何となくは理解している。


「で、その場合、俺たちがもし従わなかったらどうなってたんだよ?」

「皆殺しだ。使えると判断してなきゃ、そうしてた。当然だろう?」


 ベラの声とともに『アイアンディーナ』の竜頭がリンローに向けられ、リンローの口から「ヒッ」と声が上がる。それを見てオルガンがため息をつきながら「馬鹿が」と肩をすくめた。

 どうやら、魔獣サーベルライオンの血を受けた半獣人リンローは一言多い男で、魔獣オーガの血を受けた半獣人オルガンはそれを止める立ち位置にあるようであった。

次回予告:『第152話 少女、紹介する』


ボルドお爺ちゃんたちも無事合流できたようです。

あと、大きい子猫ちゃんと子鬼ちゃんがペットに加わりました。

彼らの餌はちょっと特殊なので、なんとかしたいところですね。


※1/4(月)0:00は正月休みです。次回の更新は1/11(月)0:00となります。

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