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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第二部 九歳児の楽しい戦乱の歩き方

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第146話 少女、対決の場へ赴く

「ベラ・ヘイローが現れた?」


 絞り出すような女の声がその場に響いた。

 ムハルド王国王都ゼッハナーン。その中央にある王宮ナハカルガの王の間で、オマール・ドーン・ムハルド王とともにいる王妃のエナが目を見開き、報告に来た兵を睨みつけていた。

 その殺意すら帯びた視線に怯えながらも、兵は己の職務を全うすべく「ハッ」と返事をした。


「本人かどうかは不明なままですが、カール・カイゼルからはルーイン王国の残党が仕掛けた偽物だろうとの報告が上がっています」


 その言葉に、オマールが眉をひそめる。報告にあったのはベラ・ヘイローの出没のみではない。ベラからカールへの決闘法フェーデの報告があったのだ。


「しかし、これはどういうことだ? ラハール領の所有権を賭けてカール・カイゼルがベラ・ヘイローと一騎打ちだと……馬鹿げた話だ。カールは何を考えている?」

「カール様からの報告によれば、かつてのムハルドの怨敵を名乗り挑んでくる愚か者を、見事を討ってごらんにいれます……とのことでしたが」

「戯言をッ」


 兵の言葉にエナが立ち上がった。そのエナにオマールが「落ち着け」と声をかける。この場にいるのはオマールとエナ、それに報告に来た兵だけではない。北部族の部族長の娘であるエナを快く思わない忠臣たちも並び立っているのだ。


「カールが謀反を目論んでいようとも、そのために獣機兵ビースト部隊を用意して監視させておるのだ。パロマからの協力もある。して、獣機兵ビースト部隊はどうしておる?」

「ハッ。現在、ラハール領のヘールの街に各獣機兵ビースト部隊を集結させているとの報告があります。カール様に不審な動きがあれば、各自の判断で……とも」

「であれば……」

「足りない。足りるわけがない」


 しかし、エナのヒステリックな声は収まらない。


「后よ。何をそんなに神経質になっておる?」

「オマール。あなたは弟のハシドが殺された話を聞いていなかったの? 前王が病に伏せた原因よ。あの化け物が来ているのよ」


 その言葉に周囲の臣下がざわめく。ベラ・ヘイローの存在。それの意味を、エナが言うまでもなく彼らは理解していた。しかし、実際にエナの口からその名が出ると彼らも反応せざるを得ない。


「足りるわけがない。竜機兵ドラグーンやドラゴンを倒したあの子供が、ベラ・ヘイローがムハルドを狙っているのだとすれば、獣機兵ビースト程度ではどうにもなるわけはない。それにあの子供は頭も切れる。何の算段なしに来ているはずがないのよ」

「王よ。エナ王妃の言葉にも一理ありましょう」


 叫ぶエナに続き、臣下のひとりが一歩前に出て口を開いた。

 オマールが目を細めて口を挟んだ人物を見る。それはムハルド王国内でも有数の鉄機兵マキーニ乗りでもあるダール将軍であった。


「それにベラ・ヘイローが本物か否かは問題ではありません。ルーイン王国の残党が動いているという情報もあります。カールはそれらと手を組み、反旗を翻そうとしているのやもしれませんな」

「ふむ。パロマも本国とルーイン領何やらもめ事が起きているとも聞く。分かった。であれば、北部族には悟られぬように軍を差し向かわせよう。場合によっては、カールを討ち取ることも許可しよう」


 それにダール将軍が頷く。


「最悪、ルーインの残党がパロマではなくルーインに攻めてくる可能性もあります。私自ら赴き、王妃の憂いを取り除きましょう」

「では、そのようにいたせ」


 そして王の決定の言葉が響くと、報告の兵とダール将軍が王の間より去っていく。

 だが、その間にもエナの強ばった表情が戻ることはなかった。エナの中にはかつての記憶が蘇っていたのだ。あの頼もしかった怪物ベラが今ムハルドをどうしようとしているのか、或いは自分をどう思っているのか……一国の王妃となったにも関わらず、エナには不安が消えなかった。己の背後に、あの小さな子供が近付いてくるような予感を感じていた。




  **********




「リンロー隊長。駄目です。キールとジェッソの部隊からの連絡がまだありません。単独部隊でベラ・ヘイローに挑んで、そのまま……」

「チッ、役立たずどもが」


 ムハルド王国でルーイン領についての懸念が話し合われている頃、ルーイン領中央のヘールの街ではタテガミを伸ばしたライオン顔の男が部下の報告を受けて犬歯を剥き出しにして唸っていた。

 ベラ・ヘイローの決闘法フェーデを領主であるカール・カイゼルが受けたたことで、ルーイン領内の獣機兵ビースト部隊はヘールの街へと集合していた。


「どうします?」

「どうするもこうするもなぁ。カールめ。完全に俺らと会うのを拒絶し続けていやがる。こりゃあ、本格的に謀反するつもりじゃねえか?」

「だとしても数はこちらが上。街の防衛拠点も押さえてありますから、何が起きても制圧は可能です」


 部下の言葉にリンローが「へっ」と笑う。


「ま、そうだな。だったら、カールの意を汲んで決闘は受けさせるさ。だが準備はしておけ。カールがそのベラっていう女を倒そうが倒すまいが、俺らで押さえる。抵抗するなら殺してもかまわねえ」

「よろしいので?」

「好き勝手やったんだ。なら、こっちもやってやるさ。それにこっちには多少無茶をしてもあまりあるネタがあるしな」


 その言葉に首を傾げる部下の後ろにある扉が開き、ゴブリン顔の男が慌てて入ってきた。


「隊長。きました。赤い鉄機兵マキーニです。ていうか竜機兵ドラグーンじゃねえんすか? 空飛んで、囲いの中に一人で入ってきましたぜ?」

「おいおい、早いな。そいつは竜機兵ドラグーンのパーツを使った鉄機兵マキーニだ。ローウェン帝国でもごく一部の部隊しか使われてねえって話のヤツさ。アレを捕獲すりゃあ、俺らも本国に返り咲ける可能性があるぜ」


 そう言ってリンローが窓を開けて外を眺める。そこから見える中央広場には、部下の言葉通りに動いている、赤い翼を広げた鉄機兵マキーニがいるの見えた。

次回予告:『第147話 少女、タイマンを張る』


本人のいないところで陰口を叩く人っていますよね。

ベラちゃんには、裏表のない明るく元気な子に育ってほしいものです。

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