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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第13話 幼女、観賞をする

 戦奴都市コロサスの中心には闘技場がある。

 それはルーイン王国の王都にあるような豪奢なものではないが、鉄機兵マキーニなどにより大型建築物の建造は比較的ローコストで行えるために、広さだけならば十分にある闘技場だった。

 この闘技場では日々、鉄機兵マキーニ同士の仕合や、捕らえた魔獣、巨獣などと奴隷を闘わせたりもされるし、当然、人間同士の戦いも繰り広げられている。

 そしてこの闘技場の生身同士の仕合において、現在のコロサスで不敗を誇っているのが剣闘士バル・マスカーという男であった。


 アダマンチウム製のカタナと呼ばれる片刃の剣を使う褐色肌の異国の男。

 

 その男の仕合が今日も行われるということで、ベラとボルド、そしてマルフォイとその護衛兵が闘技場に来ていた。


「ハッ、湿っぽい場所だね。ここは」


 そのベラの言うとおり、石造りで出来た闘技場の通路はどこか狭苦しく、湿った空気が漂っていた。

「ま、中に入れば吹き抜けておりますしね。ここだけですよ」

 ともに歩いているマルフォイはそう言って、そのまま先へと進んでいく。

「ボルド、あんたはここで闘ったことはあるのかい?」

「あーいや、ねえな」

 ベラの問いにはすぐさまボルドは否と答えた。それにはマルフォイが笑って言葉を加える。

「まあ、売りに出す商品をキズモノにするわけにもいかんですしな。基本的にここで闘う鉄機兵マキーニ精霊機エレメントは奴隷ではなく、ベラ様と同じような者たちで、傭兵業の傍らに腕に自信のある連中が参加するのがほとんどです。よほど自信のある商品なら箔付けに仕合を組ませることもございますがね」

「は、そんな腰の抜けた話で大丈夫なのかい?」

 ベラのバカにしたような問いにマルフォイは肩をすくめる。

「生身ならともかく、鉄機兵マキーニ精霊機エレメントは使い潰すには勿体ないですからな。ま、どこぞの返品続きの精霊機エレメント使いならば、次に戻ってきたときには使い潰すことも検討せにゃならんでしょうがね」

 そう口にしながらマルフォイの視線にボルドは背筋に冷たいモノが走った。

「ははは、マルフォイの旦那。冗談がキツいぜ」

 冷や汗をかきながらボルドがそう返すが、だがマルフォイの顔に冗談の色はなかった。

「ま、そんときゃあたしも喜んで観にいってやるさ。あんたの最後をね」

 そしてマルフォイとベラの含みのある笑いとボルドの乾いた笑いが響く中、通路の出口に着き、そして眼下には円形闘技場が見えた。


「どうです? なかなかの見栄えでしょう」

「ビップ席ってわけかい。なるほどね」

 マルフォイの言葉にベラも頷く。それはやたらに豪奢な飾り付けの観客席であった。そしてベラたちの入る場所は闘技場でももっとも高い位置にある場所に設置された個別の部屋だった。

 要は下にある一般の観客席とは違い、一部の特権階級が使うための観覧室である。


「それでは、これを」

 そう言ってマルフォイがベラに、双眼鏡を渡す。

 ベラはそれを受け取って、マルフォイと共に席に着く。ボルドは当然、マルフォイの護衛と共にベラの後ろで立っている形だ。


「それで、バルだったっけ? そいつの仕合ってのはすぐなのかい?」

「ええ、もうじきです。今日のメインですからね」


 そのマルフォイの言葉通りに、すぐさま鐘が鳴り響いて、闘技場に褐色肌の男と、対して2メートル半はある巨人ダイナ族の男が現れた。


 周囲の声を聞けば、バル・マスカーへの歓声も多いが、対戦者の男に対しての歓声も同様ぐらいにはあるようだった。


「相手も中々の人気みたいだね」

「ええ。怪人ヴェルゼフ。鉄機兵マキーニを生身で潰したこともある巨人ダイナ族の男です」

 その言葉にベラの目が細まる。巨人ダイナ族は、精霊族に属すものではないが、その長身から鉄機兵マキーニに乗ることは出来ない。だが、代わりにその巨体にモノを言わせた怪力を誇り、やりようによってはマルフォイの言葉通りに鉄機兵マキーニとも闘うことの出来る種族だ。

「王座に居座り続けるバルがいい加減、邪魔になってきたのでしょうね。最近は他の剣奴を扱う商人からもきわどい相手を立て続けにぶつけられています。ま、すべて返り討ちにしてますし、本人も気にしていないようですが、このままではいずれは潰されてしまうでしょう」

 それがマルフォイがベラに薦めてきた理由なのだろう。

 マルフォイとしてみれば、バルは特に労力なく仲介するだけで、数百万は入ってくる美味しい話だ。だが、それも本人が潰されてはすべてパーとなる。

 実際、マルフォイもここ最近は積極的にバルを売りに動いていたのだが、折り合いが付かず、すべてオジャンとなっていた。そこにきてベラである。渡りに船とはまさにこのことと考え、こうしてまた精力的に動いているのであった。


「お、始まりましたぞ」

 マルフォイが双眼鏡で見ながら、そう口にした。

 そして試合が始まった途端にヴェルゼフが飛び出した。

 このヴェルゼフという巨人ダイナ族の男の得物はトゲ付きメイスだ。その身体スペックによりヴェルゼフはメイスを縦横無尽に振るうが、対するバルは僅かな動作で次々にそれを避けていく。バルの動きにはベラも思わず感嘆の声を上げた。

 その動きはあくまで最小限。一度メイスのトゲがバルの頬をかすめて鮮血が舞ったが、それをバルはまったく気にも止めず、ヴェルゼフの攻撃範囲に潜り込みながらも、その攻撃を避け続けた。


(目はいいようだね)


 ベラはそう評する。当然のことながら自分の体を動かすのと鉄機兵マキーニを動かすのとではまるで勝手が違う。だが、実際に動けるものならば、それを鉄機兵マキーニで再現することも不可能ではないし、今のバルのように敵の動きを見切る目があれば、それは鉄機兵マキーニでも再現可能な能力を持っているのだとも考えられる。


 そうベラが考えている内に、ヴェルゼフも散々に避けられて息を切らしてきていた。そしてこのままではじり貧だと感じたのか一気に最後の大勝負に出た。

 ヴェルゼフは唐突に突撃したかと思えば、地面を強く踏み込んで土塊を巻き上げながら、バルに対して大きく振り上げたメイスを一気に振り下ろしたのである。


 そして観客席から悲鳴が上がる。それが直撃すれば、確実にバルは死ぬだろうというのは誰の目から見ても明らかだった。


 だが避け続けていたバルがついにその攻撃に対して動いた。

 土塊を避けもせず踏み込んで、振り下ろされた腕を狙ってカウンターでカタナを斬り上げる。そして次の瞬間には、ドンッと地面に叩きつけられるメイスと、唖然とするヴェルゼフ、さらには切断され宙を舞う手首があった。


 それにはベラも思わず魅入ったほどの一撃。


 仕合は、呆然としたヴェルゼフの隙をついて、バルが相手の後頭部にカタナの峰で叩きつけることで崩れ落ちさせて終了した。

 そして、そのまま静まりかえった闘技場にバル・マスカーの勝利が告げられたことで歓声が爆発したのである。


「どうです。あの男の出来は?」

 仕合終了。闘技場が熱気に包まれた歓声を送る中、マルフォイは得意げな顔でベラにそう尋ねる。それに対し、ここまで演出を仕掛けられてはベラも肩をすくめるしかなかった。

「ま、会ってみないと分からないけどね。感触は悪くないよ」

 故にそうベラも口にせざるを得なかったのである。


 剣闘士バル・マスカー。その男の剣の技量は確かなものであった。 


次回更新は2月10日(月)0:00。


次回予告:『第14話 幼女、男と会う』

新しい仲間の登場に、ドキドキのベラちゃん。

でもバルはベラちゃんの姿を見て驚いてしまいます。一体何に驚いたのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファンタジーなのに、“むせる“ リアリステイックな戦闘に現代倫理なんて欠片もない主人公。某“騎士と機械“のなろうロボットファンタジーがファンタジーとガンダムの融合ならこちらはファンタジーと…
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