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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第130話 幼女、ご対面する

『こちらの?』


 その唐突な言葉にベラが眉をひそめたが、デイドンは弾むような声で語りかけていく。


『ええ、そうです。あなたは我が主にとてもよく似ている。私はね。あなたのそこが気に入ってるんですよ』

『へぇ。似てるねえ』


 鼻で笑うようなベラの返しにも構わず、デイドンがさらに言葉を重ねる。


『それにルーイン王国はもはや風前の灯火。あの王女を国外に連れだしたからといってどうなるというんです? あなたがルーインに義理立てする理由はないはずだ』

『まあ、ないねえ』

『ルーインの貴族と言っても私が与えた男爵位。今の私であればあなたにもっと良い地位を授けることも可能です』

『だから、裏切れっていうのかい?』


 ベラが持っている武器を下ろし、そう尋ねた。


『ええ、そうです。傭兵である矜持もアナタにはないはずだ。だから』


 竜機兵ドラグーン『エルダーグレイ』が、『アイアンディーナ』へと手を差し伸べた。対して『アイアンディーナ』が一歩踏み出す。

 それを見たデイドンが、三機の竜機兵ドラグーンたちを一歩前へと踏み出させた。『アイアンディーナ』回転歯剣チェーンソーも再び持ち上がっている。デイドンはその動きでベラの意志を察しながらも、なお問いかける。


『ふむ。駄目ですか?』

『ああ。ま、断るよ』

『何故?』


 デイドンの問いにベラが目を細める。


『何故って? あたしはあんたみたいな蜥蜴になるつもりはないからね』


 『アイアンディーナ』がさらに一歩前に出る。


『それにさあ。そのアンタの主ってのかい? あたしに似てる? そりゃあ、駄目だろう。最悪じゃあないか』

『それは何故です?』

『だってさ。そいつは間違いなく、性格が悪いよ。絶対に合わないさ。ほぼ確実に殺し合う』

『案外、気が合うかもしれませんよ?』

『とてもそうは思えないけどね。それに、真っ当な理由が実はもうひとつある』

『なんです?』

『ま、仕事は仕事だろう? で、あたしはひとまずそれを受けた。でだ。あたしの目の前には敵がいて、あたしはそいつを倒すことは難しくない。つまり……』


 そう言って『アイアンディーナ』回転歯剣チェーンソー竜機兵ドラグーンたちへと向けた。


『別にローウェン側に付くにしても、あんたを殺して片づけてから行きゃあいいだけってことじゃあないのかい?』

『なるほど、残念です。やりなさい』


 デイドンの指示と共に三機の竜機兵ドラグーンが駆け出し、『アイアンディーナ』が構えて迎え撃つ。


「たくっ、そんな連中であたしを殺ろうなんじゃあ……と」


 『アイアンディーナ』の回転歯剣チェーンソー竜機兵ドラグーンの一機を切り裂き、それと同時にブレスが吐き出される。それを『アイアンディーナ』は倒した竜機兵ドラグーンを蹴り飛ばして、ブレスの盾にして、後ろへと下がる。同時に周囲にいた竜機兵ドラグーンたちにもブレスがかかって燃えるが、デイドンの『エルダーグレイ』は気にすることなく、ブレスを吐き終わると『アイアンディーナ』へと仕掛けていった。


『仲間共々たぁ、卑怯な男だね』

『ほとんど避けておいて、よく言いますね。それにね』


 ブレスによって燃えた竜機兵ドラグーンたちが、内部から煙を噴き出しながらも立ち上がる。炭化した部分がすぐさま修復されていく光景がベラにも見えた。


『再生能力……か。面倒だね』

再生者リジェネーター支配者ドミネーターの力。竜機兵ドラグーンの力を強制的に引き出すことが可能なのが私の『エルダーグレイ』の能力。これが私が将になれた理由です』


 それこそが、かつてデイドンが竜機兵ドラグーンのいる戦場で生き残れた理由であった。襲いかかる敵を操作し、デイドンへと襲いかかったすべてを返り討ちにしていた。


『なるほどねえ。だけどッ』


 ベラにとっては、再生能力もただ面倒なだけ。連携も元々そこまでの強さはないデイドンによるものでは、驚異といえるほどのものでもなかった。ベラにとって驚異と言えるのは単純に『エルダーグレイ』の力と範囲の広い炎のブレス。


『どんだけ操れようが、潰しゃあいいだけだろうが』

『速い。その反応速度、鉄機兵マキーニではない? 竜機兵ドラグーンに近い……が、どうやって』

『言うわけないだろ。馬鹿がッ!』


 戦いの中でベラは、己の感覚を研ぎ澄ましていく。敵の攻撃を避け、斬り返し、ダメージを与えていく。


(身体能力だけに頼った攻撃だが、巨獣に似て正確。こいつ、思ったよりも人間の部分が薄いんじゃあないかい?)


 それを肌に感じながら、ベラは敵の尾の攻撃を避け、左右の竜機兵ドラグーンへとウォーハンマーと回転歯剣チェーンソーを振るって牽制し、正面からのブレスを飛んで避けていく。


(操っているだけあって、連携にズレがないか)


 さらに『アイアンディーナ』はわずかに翼を広げることで滞空時間を延ばし、落下を狙った攻撃を避けると、隙を見せた竜機兵ドラグーンを一機葬った。


『あなたという人は、鉄機兵マキーニ竜機兵ドラグーンの力をそこまで操りますか』


 ベラは『ヒャッハハ』と笑いながらウォーハンマーを投げつけて迫るデイドンの勢いを止め、さらには倒れている竜機兵ドラグーンのそばにあったハルバードを拾って、一番近い竜機兵ドラグーンへと投げつけた。


『すっとろいんだよ』


 飛んできたハルバードを竜機兵ドラグーンは構えて受けたが、もう遅かった。迫る『アイアンディーナ』が回転歯剣チェーンソーを振るって、上段から竜機兵ドラグーンを切り裂く。


『残り、あんたを含めて2だ』

『まったく、ポンポンと武器を投げますね』


 いよいよデイドンにも余裕がなくなってきていた。

 

『戦場じゃあ、武器なんぞどこにでもあるからね。倒したヤツから奪えばいいんだし、使うのは当たり前だろ?』

『はっは、そういうのは常に倒す側のあなただからいえることでしょうに』

『そう、倒す側さ。そうでなければここにいないさッ』

『ぬぅっ』


 最後の竜機兵ドラグーン回転歯剣チェーンソーで切り裂かれ、そこに『エルダーグレイ』の頭部のひとつからブレスが放たれた。


『遅いッ』


 それを『アイアンディーナ』が右に避け、同時にみっつある頭部のひとつを回転歯剣チェーンソーで切り裂いた。


『クゥッ!?』


 デイドンが『エルダーグレイ』を操作して『アイアンディーナ』に対して槍で突く。それは回転歯剣チェーンソーに抗せるギミックウェポンではあったが、『アイアンディーナ』が回転歯剣チェーンソーで受けなければ真価を発揮できないシロモノだ。


『ヒャハッ!』


 槍を避けた『アイアンディーナ』のウォーハンマーのピックが『エルダーグレイ』の脇腹を貫き、そのまま『アイアンディーナ』はバックステップで『エルダーグレイ』と距離を取った。その腕には斬り落とした『エルダーグレイ』の頭部のひとつが握られていた。


『ヒャッヒャッヒャ。いいねえ、これ』

『それをどうするつもりです?』

『こうするんだよ』


 『アイアンディーナ』が『エルダーグレイ』から距離を取りながら、『エルダーグレイ』の頭部を竜腕ドラゴンアームへと近付けた。すると、竜機兵ドラグーンの頭部が竜腕ドラゴンアームへと結合していき、まるでドラゴンの頭部を模した盾のように装着された。


『繋げたですって?』

『ヒャッハッハ。いやー、やってみりゃできるもんだね。こっちはムハルドの雑魚ども殺しまくって魂力プラーナが有り余ってるし、竜機兵ドラグーンの再生力も今見せてもらったからね。竜腕ドラゴンアームでならイケるんじゃないかと思ったが、こりゃあ正解だったか』

『だからといって、ここでブッツケでやりますか。けれどね』


 『エルダーグレイ』が刺さったウォーハンマーを抜くと、その傷跡がみるみると修復されていく。切り裂かれた首の切断部も噴き出していた銀霧蒸気が止まり、傷口が塞がっていく。


『こちらにも再生力があればッ!』

『遅いッ』


 素早く踏み込んだ『アイアンディーナ』の回転歯剣チェーンソーが『エルダーグレイ』の腕を斬り飛ばす。


『クッ』

『避けたかい。だけどね』


 すぐさま『アイアンディーナ』の竜腕ドラゴンアームの竜頭から炎が吐き出されるが、その威力は弱い。『エルダーグレイ』に炎が照射された時間はわずかであった。


『ありゃ、出が悪いね』

『くぅ。だがこの距離であれば!』


 デイドンが左の手で持った槍を突き出そうとするが、次の瞬間には地面に落ちていたウォーハンマーを『アイアンディーナ』の竜尾ドラゴンテイルが巻き付けて、第三の腕として動いてピック部分を『エルダーグレイ』の手の甲へと貫かせた。そのまま槍が弾かれて、地面に転げていく。


『まさか……あなたが、その尾までも使えると』

『ま、あたしもガラにもなく相当に練習したからねぇ』


 竜尾ドラゴンテイルはベラが温存しておいた隠し玉だ。ここに至るまで一切使用せず、使えないという認識をデイドンに植え付け続けていた。そのベラのペテンにデイドンはまんまとハマったのだ。


『そんじゃあ、終いかね』

『まだですッ!』


 回転歯剣チェーンソーが振られると同時に『エルダーグレイ』の翼が開かれる。魔力の風が吹き荒び、回転歯剣チェーンソーの軌跡がわずかにズレて斬り裂けたのは『エルダーグレイ』の胸部ハッチだけであった。


『へぇ、男前だねえデイドン』


 そして、胸部ハッチの先にあるデイドンの姿が『アイアンディーナ』の水晶眼を通してベラにも見えた。それはもはやドラゴニュートどころではなく、ただのは虫類のような姿であったのだ。その上に操者の座コクピットと身体のほとんどが結合していて、操者の座コクピット全体が脈を打っている。それはもはや生物の内部にしか見えなかった。


『ま、元々大したツラじゃあなかったんだし、ちょうどいいんじゃないかい』

「ここまできて、よくもまあ……だけど、私はここで……死ぬつもりも」


 そう口にしたデイドンの周囲の操者の座コクピットがボコッと膨れ上がる。それをベラが訝しげな目で見た。


『あん?』

『なるほど、報告にあった通り、これがドラゴンになれる可能性……』


 『エルダーグレイ』の内部では、操者の座コクピットが脈打ち、次第にデイドンを包んでいく。同時に『エルダーグレイ』全体が銀霧蒸気を噴き出しながら膨張を開始していた。


『まあ、いまさら。ここで死ぬよりは……はは、ベラさん』


 そう言ったデイドンの胸元の宝玉が強く輝き、肥大化し、デイドン自身も周囲の操者の座コクピットへと飲み込まれていく。


『まだ、勝負……終わってないみたい……ですよ?』


 そして胸部が完全に埋まり、装甲は鱗となり、十メートルを超える双頭のドラゴンがその場に誕生したのである。

次回更新は、7月20日(月)00:00予定となります。


次回予告:『第131話 幼女、双頭竜と会う(仮)』


デイドンおじさんはイメチェンしたようで、ベラちゃんも大はしゃぎみたい。

サプライズは大成功です。やったねデイドンおじさん。


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