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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第119話 幼女、改修する

「話し合いはすんだようだねえベラちゃん」

「まあね。それでマギノ、出来映えはどうだい?」


 つい先ほどまでベンマーク商会の専用ガレージの横にある小屋で行われていたマイアーとの話し合いも終わり、ベラは予定通りにガレージの中へとやってきた。

 またマイアーはすでにその場を去っていたのだが、カルビン騎士団の団長マルスは鉄機兵マキーニの見学がてらにベラの元に残っていた。

 そのマルスの姿を見て反応を示したのはマギノであった。


「おや、マルス様かい」

「はは、マギノさんがこんなところにいるとは思ってもみませんでしたよ」


 その二人の反応にはさすがのベラとボルドも目をパチクリとさせて見ていた。反応がなかったのは、そうしたことにあまり興味のないバルぐらいなものである。


「知り合いだったのかい?」


 そのベラの問いにマルスは頷き「以前に鉄機兵マキーニの調整をしてもらったんだよ」と答えた。それにマギノが「ま、ジェド様に雇われる前だけどねえ」と返すと、ベラも納得いったようだった。

 マギノはそもそもが鉄機兵マキーニ魔術式研究者と呼ばれていた者で、ただの整備士ではなく研究者である。ベラの元にいる理由もアイアンディーナと腐り竜ドラゴンゾンビの特異性に興味が惹かれたためであった。

 故に以前にマギノがマルスと出会っていたとしてもおかしいというほどの話ではなかった。


「なるほど、さすがというべきですね」


 それからマルスはマギノからガレージ内部へと視線を移す。

 そこに並んでいるのは奥に隠れている『アイアンディーナ』を含めて、計十六機の鉄機兵マキーニであった。


「こいつら全部がベラドンナ傭兵団の鉄機兵マキーニなのか?」

「ああ、そうだね。この商会にはコネがあるから、余ってるのも全部買ったんだよ」


 マルスの問いにベラがそううそぶいた。実際のところはコネがあるどころか、この地域の支配人であるコーザが仲間にいるのだから、ベラドンナ傭兵団が鉄機兵マキーニに支払った金額はほとんど買い取った時の値段に近いものがあった。もっとも、それでも現状のルーイン王国軍の状況からすれば接収されてしまわないだけマシであるとも言えたのだが。

 また現在のベラドンナ傭兵団の鉄機兵マキーニの数だが、『アイアンディーナ』『ムサシ』『トモエ』『ザッハナイン』の四機に加えて、デュナン隊の元々いた機体とベンマーク商会から購入したものも含めた十二機の鉄機兵マキーニが存在している。


「うーん。盾持ちが多いみたいだね? 結構攻撃的な団だって聞いてたけど」


 そのマルスの問いにベラは肩をすくめながら笑う。


「残念だけど数合わせが多くてね。ロクに訓練も取れない状況なら盾と槍での密集陣形ファランクスで行くのが一番扱いやすい」

「なるほど、面白味はないけど……いや、そっちは君たちが動くわけか。まあ、僕の騎士団と近いところがあるね」

「へぇ……」


 ベラが目を細めてそう口にする。どうやらカルビン騎士団はマルスという実力者とその補佐で動いているようであった。それからマルスがこの場で見える中ではもっとも目を引いた『ムサシ』を見た。


「マギノ師の次の作品はこれですかね?」


 そのマルスの言葉にマギノが笑って「違う違う」と手を振った。それからマギノはベラの横で何も口を開かずに立って護衛をしているバルを指差した。


「そっちは彼のだね。僕がやったのは、彼の一族のギミックウェポンをその鉄機兵マキーニに合わせるように調整したぐらいさ。僕が今いじってるのはあっちの奥のヤツ」


 そう言ってマギノがベラに視線を送ると、ベラも「問題なし」という表情で頷いた。それからマギノがデュナン隊の整備班へと指示を出して奥のスペースの天幕を外していくと『アイアンディーナ』の姿が見え始めたのである。


「おお、あれが……」


 そう口にしてマルスが駆けていくと、床には鹵獲したらしい竜機兵の残骸ジャンクが、まるで食い散らかしたかのように転がっていた。

 それを見て訝しげな表情となったマルスだが、続けて置かれている鉄機兵マキーニの方へと視線を向け直すと、目を見開いた。


「これが……」


 そこにあったのは表面に波紋が描かれた赤い機体であった。

 右腕と背の翼、尻尾が付き、いわゆる竜機兵ドラグーンと同じ形状をしており、また右手にはウォーハンマーを、左腕には長方形で先からは大きな杭が出ている盾が装備されていた。さらには腰部の後ろには何かしらのギミックウェポンが設置されてもいた。


「話には聞いていたけど、本当に竜機兵ドラグーンのパーツを移植しているのか」

「なんでできるのかは分かんないけどね。ま、ディーナが特別なんだろう」


 ベラがそううそぶく。実際のところは、竜の血を浴びることでそれが可能になるのだろうとは予測が立っているが、それを素直に話してやる必要もなかった。そして、そのベラの言葉にマルスも「そうかい」と肩をすくめながら、残念な顔をしていた。

 その様子を見ながら、ベラがマギノに声をかける。


「そんで、その左腕の盾がガルドからの贈り物ってことかい? 無事に接続できたみたいだね」

「うん。ガルド将軍が融通してくれたものだし、セッティングも上手くいったよ。仕込み杭打機スティンガー付きのギミックアームに延長して付けてるから操作はほとんど変わらずさ」


 ベラが『アイアンディーナ』の左腕へと視線をむける。


「でだ。追加で付けたのはパイルの直径は以前の2倍。その長方形の盾の中に収納されてるし、隠し武器としての呈はなしていないが威力は当然増してるよ」

「反動も大きそうじゃないのか?」


 ベラの言葉にマギノは「まぁねえ」と答える。


「それとコイツは射出もできるよ。一応予備はあるけど、無駄遣いはしないで欲しいね」

「そいつぁ、戦場次第だね」


 ベラがそう返すとマギノも笑った。


「まあ、そりゃあそうだね。そんで、こいつの名は爆砕杭打機イグニススティンガーと言って威力重視のギミックウェポンだ。従来の仕込み杭打機スティンガーも使えるから、まあ工夫して使っておくれよ」


 そのマギノの言葉通り、元々の仕込み杭打機スティンガー付きの腕に組み込まれたものなので掌から出す杭と、盾から出す杭のふたつが存在している。


「まあ、やってみるさ。それで神造筋肉マッスルクレイの差し替えはどうだったんだい?」

「動作実験では問題なしと出てるね。こっちの説明は設置したボルドくんの方が良いだろう」


 そう言われてボルドが「了解だ」と言って、前に出る。


「つっても言えることは少ねえけどよ。ご主人様に言われた通りに、神造筋肉マッスルクレイ竜機兵ドラグーンのものに変えたってだけさ。マギノの爺さんは竜属筋肉ドラグマッスルって名付けてたがな」

竜機兵ドラグーンの? つまり、この機体は竜機兵ドラグーン並の出力があると?」


 横で聞いていたマルスが驚きの顔をするとボルドがニタリと笑う。


「まあ、そうですがね。つっても強力なタイプの翼が生えてたり尻尾の長い竜機兵ドラグーンからの竜属筋肉ドラグマッスルじゃあ、鉄機兵マキーニの魔力供給量が間に合わんのですよ」


 そう言ってボルドは『アイアンディーナ』の右腕を見て、口を開く。


「あの右手の必要魔力量だけでもギミックに近いんだから、それを全身にっていうのは無理な話です。だから用意したのは竜機兵ドラグーンでも性能の低い連中の竜属筋肉ドラグマッスルばかりですな。まあ、それでも同量での出力比は神造筋肉マッスルクレイよりゃ高いんですが」


 そのボルドの言葉を聞いてから、マギノが口を挟んだ。


「あの竜機兵ドラグーンってのは翼と尻尾が生えるっていう特殊な変化もあるけど、鉄機兵マキーニと比較しての違いは、主に外装の硬化と竜属筋肉ドラグマッスルによる高出力、それに伝達力の速さによる反射性能の高さにあるようだからね」

「なるほど……」


 マルスが頷く。その言葉は戦場で感じた竜機兵ドラグーンの強さを裏付ける説得力があった。


「そんでだ。まあ、原理は今調べてるんけどね。竜機兵ドラグーンの乗り手はみなここに竜心石を埋め込んでいるんだよ」


 マギノが胸をトントンと叩く。


「恐らくは竜心石と乗り手を直接繋げることで、鉄機兵マキーニよりもよりダイレクトに操作を行っているんだろうね。まあ、そこらへんも竜機兵ドラグーン鉄機兵マキーニに勝る理由なんじゃないかなー」

「埋め込む……」


 マルスが考え込む。


「どんな術を使ってそれを行ったんだ?」


 そのマルスの問いにはマギノは「さあ?」と返した。実際ベラたちもローウェン帝国製らしき強心器という魔法具が原因の可能性があるとしか分かってはいない。


「分からないけど、それが『アイアンディーナ』には使えるわけだから使わないと損だよねえ。とは言っても上位らしき竜機兵ドラグーンの右手を使ってきたベラちゃんには分かっているだろうけど、竜機兵ドラグーンと違って『アイアンディーナ』の操作方法自体は鉄機兵マキーニのものだ。過敏すぎてまともに操作ができない機体になってるはずだよ」

「構いやしないさ。使えるなら使いこなす」


 ベラが笑いもせずにそう言った。先の戦場で出会った銀の鉄機兵マキーニに対抗するにはその程度のことはこなす必要があるとベラは考えていた。それからニンマリと笑いながらベラはマルスを見た。


「つーわけでだ。マルス、あんたもこいつの慣らしに少しつき合ってほしいんだけどね」

「え、僕がかい?」


 マルスはそう言ったが、その顔は決して嫌がっているようには見えなかった。それどころか喜々とした。


「正直、時間もないしね。あたしゃ、バルと遊んでるからアンタも自分の鉄機兵マキーニを持ってきて付き合っておくれよ」


 その言葉にマルスが「よし来た」とばかりにガレージから出ていく。それを見送ったベラとバルもそのまま鉄機兵マキーニに乗る準備に入る。

 その様子を見ながらボルドが呟いた。


「時間か。マジなんだなぁ」


 それは先ほどのベラとマイアーの会話のことである。その場に居合わせたボルドは今後のベラドンナ傭兵団が何をするのかを知ってしまった。

 それはこのコロサスの街を出て、隣国であるエルシャ王国へエーデル王女を護送すること。


 未だ抵抗している王都を捨て、国を捨て、ルーイン王国の血を残す。


 それがガルド将軍の決定であった。

 ローウェン帝国と通じた三国の暗躍によりすでにルーイン王国の敗北は確定的となったと判断したガルド将軍は、次の未来のための行動をすでに開始していたのであった。

次回更新は5月4日(月)00:00予定。


次回予告:『第120話 幼女、夜逃げをする(仮)』


 ベラちゃんは新しい玩具を手に入れたようです。

 手に入れたのならすぐに使ってみたいと思うのは当然のこと。

 早く試せるお兄ちゃんが来てくれないかとベラちゃんもそわそわしているようです。

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