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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第115話 幼女、トカゲさんを見る

『ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハッハ』


 崩れ落ちた竜機兵ドラグーンの上に乗る赤い鉄機兵マキーニから、幼女の笑い声が響き渡った。

 それを見ていたルーイン王国軍の兵たちから歓喜の声が挙がる。

 唐突に空より飛来した赤い鉄機兵マキーニが、瞬く間に二機の竜機兵ドラグーンを下したのだ。そのまるで物語のような、反撃の幕開けに彼らの興奮が高まるのも無理はなかった。

 一方で、その様子を離れた場所で見ていた騎士型鉄機兵マキーニとその肩に乗っている老人は、呆気にとられた顔をしていた。

 彼らにとって、それは完全に想定外なものだった。目の前で起きた状況よりも、やってきた赤い機体の存在そのものが彼らにとって奇っ怪なものであった。


「翼をはためかせて飛んできた? あれはルーイン王国側の竜機兵ドラグーンだちでも言うのか? いや、違う。確かに竜機兵ドラグーンのパーツもあるが、あれは鉄機兵マキーニだ。竜機兵ドラグーンではない」

『それは……一体どういうことでしょう?』


 老人の呟きに、鉄機兵マキーニから怪訝な声が上がった。

 ローウェン帝国が生み出した竜機兵ドラグーンは、鉄機兵マキーニの上位機という位置付けとしてある。故に下位である鉄機兵マキーニへの互換性はないはずなのだ。

 だが老人の言葉が確かならば、ルーイン王国側の赤い鉄機兵マキーニ鉄機兵マキーニでありながら、竜機兵ドラグーンのパーツを装着し、なおかつ動かせているのだ。


『博士。あの鉄機兵マキーニはどういうことです? 竜機兵ドラグーンの装備は鉄機兵マキーニには使えないはずでは?』


 騎士型鉄機兵マキーニから発せられる問いに、老人は「ふむぅ」と唸った。その言葉通りに実際に確かめて動かなかったのだ。それが、今は目のまで動いている。しかも敵側の戦力として。


「少なくともこちらで確認した限りでは、鉄機兵マキーニに繋いだのでは、何も動かないはずだった。だがルーイン王国はこの短期間に研究し、竜機兵ドラグーンのパーツを鉄機兵マキーニで使えるようにした……と?」


 老人は、己の口にした言葉に「ありえん」と言って首を横に振る。


「しかし、現に鉄機兵マキーニの右手と翼、それに尻尾か……が付いているわけだから。可能ではあったということか。面白い」


 そう言って笑いながら、老人は己が乗っている騎士型鉄機兵マキーニへと顔を向けた。


「そんじゃあ、ウォートくん。アレ捕まえてもらえますかね?」

「あの鉄機兵マキーニをですか」


 老人の言葉に騎士型鉄機兵マキーニの中から、ウォートと呼ばれた男の難色を示した声が返される。


『あれは相当にやりますよ、捕らえるというのは難しいと思いますが?』


 先ほどの二機を葬った動きから見て、相当の手練れだろうとウォートは判断していた。しかし、老人は肩をすくめながら笑って答える。


「ええ、それがどうかしましたか? 最悪この戦争、負けても構いません。竜機兵ドラグーンの優位性を示すための場がここなのですから。イシュタリアの賢人の名に置いて最高の優先度でお願いします」

『ハァ、分かりましたが……』


 ウォートは気乗りしない声だが、それでも言われたとおりに指示を行おうと戦場へと目を戻した。そこでウォートは見たのだ。


『は、博士。あの……後ろの方からやってくるものは一体?』


 その言葉を聞いて、老人も視線をルーイン王国軍の後ろの方へと向けた。そして老人は目を丸くした後、興奮した顔をしながら笑った。


「……な、なるほど。ますます面白い」


 その彼らの視線の先にいたものは、巨大なドラゴンであった。

 それがノソリとこちらに向かって進んでいたのだ。しかし、それが戦場にたどり着く前に赤い鉄機兵マキーニ竜機兵ドラグーンに向かって動き出していた。後ろを待つつもりなどハナからないとばかりに、赤い鉄機兵マキーニは単機で戦いを開始したのであった。




  **********




(ああ、空を飛ぶってのはヤバいね。ありゃあんまやりたくはないね)


 ベラは『アイアンディーナ』が走りながら、そんなことを考えていた。またそんな思考とは別に身体は予定していた手順通りに動いていく。それから『アイアンディーナ』の背部と竜翼ドラゴンウィングの間にわずかな爆発を起こし、その勢いで翼を外して地面に落とした。火薬を用いた爆発ボルトをアタッチメントに仕込み、発動させたのである。

 それは元々|静音拘束具 ( サイレンサー )に使用するために用意したものであったが、移動後はデッドウェイトでしかない竜翼ドラゴンウィングを外すのに活用されたのだった。

 それからベラは目の前で構えている竜機兵ドラグーンたちを見回して呟く。


『はっ、やっぱり傭兵上がりみたいだね』


 彼らの動きを見てベラはそう判断した。

 前回の森で戦ったときも動きが我流であったことが気にかかってはいたが、再度相手の行動を見たことでベラは確信に至った。


(あのデイドンの時と同じ、訳の分からない強心器で鉄機兵マキーニを変化させたって感じだろうかね。まあ、変化は機体ごとの差がかなりあるようだけど)


 もっとも、竜機兵ドラグーンたちの動きも統制が取れていなかったというわけではない。軍隊特有の規律ある動きでもなかっただけで、今も走っているベラに対して二機の竜機兵ドラグーンが構えている。


『なんだ、コイツ。竜機兵ドラグーンじゃないのか?』


 竜機兵ドラグーンの一機から声が漏れると、そこにベラは飛びかかっていった。


『なんなんだよテメエは!』


 竜機兵ドラグーンがハルバードを振り上げるが、しかしわずかに遅い。ベラは持っていたウォーハンマーを投げつけ、竜機兵ドラグーンの持っていたハルバードを弾き飛ばした。


『くあっ!?』


 そのまま悲鳴を上げる竜機兵ドラグーンの懐へと『アイアンディーナ』は入り込むと、腰に下げていたショートソードを抜いて一気に突き刺した。


『動きが鈍い。なるほど、森の連中よりもさらに落ちるのかい』


 ベラはそう判断しながらも竜機兵ドラグーンへと突き刺したショートソードを手放して、続けて迫ってきている三機の竜機兵ドラグーンへと視線を向けた。


『続けてアンタらが遊んでくれるのかい?』


 そう言って笑いながらベラは落ちているウォーハンマーを蹴り上げて掴むと、そのまま竜腕ドラゴンアームの膂力を使って先ほどと同じように投げつけた。


『投げただと!?』


 ウォーハンマーのピックが竜機兵ドラグーンの一機の肩へと突き刺さる。さすがにそれで仕留められはしないが、だがその動きを止めることに成功した。それから迫ってくる残り二機の竜機兵ドラグーンだが、ベラは装着していた射出装置カタパルトを使用して剣を持っている竜機兵ドラグーンへと加速した。


『下駄が外れて、速度が速く?』


 竜機兵ドラグーンの乗り手が悲鳴を上げる。そのまま『アイアンディーナ』の竜腕ドラゴンアームの爪が伸びて、剣使いの竜機兵ドラグーンへと竜機兵ドラグーンはわずかに避けたが、避けきれずに胸部が切り裂かれ、胸部ハッチが破壊されて飛んだ。


『クソォッ!?』

『おんや、反射速度は良いね。と、なるほど、アンタらもかい』


 胸部ハッチが外れたことで中の乗り手の姿がベラには見えたのだ。そこには小汚い傭兵風の男が座っていて、その胸には竜心石が埋め込まれていた。


『どういう理屈かは知らないけど、それで機体との同期を強化してるってところかね。とはいえ元が元だ』


 そう言いながら、ベラは左手のライトシールドの先を操者の座コクピットの中にたたき込んだ。叫び声と共に、鮮血の赤が盾の先を染める。


『ヒャッヒャ、コイツら、ぜんぜん大したこたぁないね』

『コイツッ』

『殺せぇえ』


 挑発するように笑うベラの『アイアンディーナ』に、槍を持った竜機兵ドラグーンと肩をウォーハンマーに貫かれた斧使いの竜機兵ドラグーンが突撃していく。対してベラは今倒した竜機兵ドラグーンの腕の剣を奪い取って迎え撃った。そして、


『ヒャハッ』


 迫る槍をライトシールドで受け流しながら飛び込み、左の仕込み杭打機スティンガーを発動させ胸部を貫いた。中の乗り手は貫かれて悲鳴を上げる間もなく、灼熱ヒート化した鉄芯によって消し炭となった。さらには斧使いの攻撃だが、それを止めたのは竜尾ドラゴンテイルであった。


『バカな?』


 『アイアンディーナ』の鋼鉄の尾が動いて勢いが乗る前の斧へと先にぶつかり、その攻撃を防いでいたのだ。それに呆気にとられる竜機兵ドラグーン乗りへと、ベラは握っていた剣を振り下ろし、斧を持っていた腕の関節の隙間を狙って一気に切り落とした。


『そっちも尻尾のあるヤツもいるだろうに。なーにを驚いているんだか?』


 ベラはそう言いながら剣を手放すと、竜腕ドラゴンアームの拳を強く握らせて、そのまま上へと持ち上げた。それを見た竜機兵ドラグーンの乗り手が目を見開く。


『や、やめ』


 しかし、その声は最後まで発せられなかった。『アイアンディーナ』が全力で頭部へと拳を叩き落とし、操者の座コクピットまでも陥没させてその命を絶ったのだ。


『頭落としは、竜機兵ドラグーン相手でも有効だねえ』


 鉄機兵マキーニは、3〜4メートルのサイズで内部に人が乗り込む構造上、どうしても胸部付近の構造が脆くなるのだ。

 故に鉄機兵マキーニの戦ではいかに己の鉄機兵マキーニ胸部と頭部への攻撃を防げるかが重要であった。そして、それは竜機兵ドラグーンとなっても変わらぬようだったのだ。

 それからベラが周囲を見回すと、他の竜機兵ドラグーンは『アイアンディーナ』からは下がっていて、変わりに巨大なトカゲが四匹『アイアンディーナ』に向かって走ってくるのが見えた。


『主様ッ!』


 もっとも、やって来たのはトカゲだけではない。先行して戦場に到達したベラに、ようやくベラドンナ傭兵団の面々も追いついたのだ。それを教えるために通信のスピーカーから届いてきたバルの声に、ベラがニタリと笑った。


『あたしが全部喰っちまう前に追いつけたようだね。バル、そっちに一体は任すよ』

『承知した』


 バルの言葉を聞き、続けてベラは見えてきたデュナンの『ザッハナイン』へと視線を向ける。


『んで、デュナンは腐り竜ドラゴンゾンビと一緒に残りをテキトーに片づけな。どうも騎兵隊が集まり始めたみたいだしね。少し厄介かもしれない』


 ベラが視線を敵の軍隊に向けると、竜機兵ドラグーンの後ろに馬代わりのトカゲに乗った兵たちがいるのが見えていた。

 それは対鉄機兵マキーニ用兵装を抱えた騎兵隊。それを見ながらベラが眉をひそめる。


『はて、随分と集まりが良いじゃあないか。もしかして、デイドンにでもバレたかね?』


 そう言いながら、ベラは迫るヴェルラントリザードを見て構える。

 場の気配が自分へと向かってきているのが、なんとなしにベラには感じられていた。

次回更新は3月30日(月)00:00予定。


次回予告:『第115話 幼女、トカゲさんと遊ぶ(仮)』


 みんな幼女に夢中のようです。困ったものですね。

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