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絶対的  作者: 川瀬時彦
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絶対的

 頭を地面に埋めようが、拳を地に叩きつけようが、声にもならない嗚咽を出そうが――何をしても目の前にあるのは全てが現実。

 小降りだった雨は大降りになり、通行人の姿は見えない。ただ一人の男が何もない空間でぽつんと、うなだれているだけ。

 あぁ、あぁ、あぁ、俺は、俺は、俺は……何度過ちを踏めば良いのか。

 そして訪れたゲームオーバー。それはあまりにも残酷だった。推測すれば分かることだった。しかし、そんなことも分からない愚人である俺に訪れた報いとしては妥当なものなのだろう。

 後悔とあきらめの感情が交錯する中、俺の目の前にはひとつの缶詰が。そして当然『絶対に開けないでください』との警告文が。

 しかし、今回は今までのとは少し違った。今まで、黒で書かれていた警告文は、赤の色に変わっていた。そのドス黒い赤を表現するならば年代物のワイン、または血。そしてこの色は俺の脳によって「危険」と判断された。これが最終警告らしい。開けるものか、もう二度と開けるものか。この後に及んで、なぜ開けようというのだ。

 どうでもよかった、全てが。俺は激しい自己嫌悪にさいなまれていた。いつだって同じ過ちを犯す自分に、そして不条理な世の中に。あの小包が家に来たところで俺はこうなると決まっていたのか。まあ、途中で絶つ手立てはあったはずだがあの文と、そして誰も言及しない状況、それを踏まえて考えると無理なものなのかもしれない。

 俺はとても巧妙な罠に掛かったのだ。「絶対に――」と人の本能に巧みに語りかけ、一切の干渉をせずに自発させる。

 誰だよ、こんなもの考えて奴は。俺は恨むぞ、そいつだ、そいつが悪いんだ。俺は被害者である。楽しい大学生活をエンジョイできるはずだったのだ。しかしそれはあの悪夢のような(本当は現実の)郵便物等によってぶち壊されてしまった。

 なぜ、俺なのだ。俺でなければならなかったのか? よりによってどうして俺を選んだのか。日本の中だけでも約十三億人いるというのになぜ俺だったのか。どうして他の奴には届かなかったのか? なんて不条理なんだ。俺以外全ての奴のせいなのだ。俺のせいではない悪いのは世界全てである。だから俺はこの世に復讐するのである。仇討ちをするのだ。

 そして俺はすばらしい方法を思いついた。

 この缶詰を開けるのだ。

 メモ帳でさえ駅校舎、人間そしてそれらに関する一切を排除できたのだ。いままでから推移すればそれ以上の惨劇が予想される。おそらく、開けた途端に爆発、水素爆弾並、いやそれ以上の破壊力を持ち、地球を破滅へと追い込むだろう。

 俺の人生を奪ったからにはそれぐらい意図も問わない。これで俺と一緒に三途の川を渡ってもらおう。それが制裁だ。もう俺は引き戻せないところまで来てしまった、いっそのことだ。

 さあ、世界が終わるまで後十秒。カウントは始まっている。

 左手で缶詰を引き寄せて、上部につけられたプルトップを爪で起こす。

 これを思いっきり引き抜いたとき今まで以上の何かが起こる。それは人類を破滅へと追い込みかねないようなことではないかと推測される。

 右手の人差し指をリングにかける。

 これで終わりだ。


 そこで俺は目を覚ました。

 全てを飲み込むようなあの出来事は本当に悪夢だったのだ。

 カーテンから差し込む朝日が壁の時計のガラスを輝かせ時刻ははっきり読み取れない。

 少しばかり立ち上がり時計を見てみる。八時十分。少しばかり遅れはしたが大学には間に合う。

 ベッドを見ると、俺が寝ていたところが人型の形に汗で湿っていた。着ている衣服のえり辺りはゴムがべとべとになっている。

 おもむろにテレビをつけて気付いた。今日は土曜日。大学には行かない日であった。

 俺は実に一日以上あの悪夢を見続けていたのであった。

 俺は、いまさらながら恐怖した。あの郵便物ではない。自分があの缶詰を開けそうになったことだ。世界規模の無理心中をあっさり実行に移そうとしていた。

 人間何かに引き付けられるとなにをしでかすか分からない。

 俺は「絶対的」な何かに魅了されていた。

 窓の外にはいつも通りの町並みが並んでいた。

 これは私がちょっとした思い付きで書いたものなので、特に見直しをしてません。

 最後は夢オチになってしまったな。正直、やってはいけないことですよね。(当初は考えていなかった)

 自分は今になって思うけどこれは童話調で書いたほうが良かったのではないかと思う。その方が逆におぞましいような気が……。

 そして、アドバイスをくれる方が居るならばありがたい。いや、ぜひぜひ評価してもらいたい。酷評でも構いませんから。

 それが肥やしになると思う。

 読んでくれてありがとうござしました。

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