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昼夜と青年

作者: ラウム
掲載日:2025/12/15

昔々、どこかの世界。

その世界には夜がなく、昼しかありませんでした。

太陽の光と熱は水を枯れさせ、植物は萎れ、人々を焼きました。

人々は昼から逃れるため、地下に潜り生活することを余儀なくされました。

そんなとき、ある青年は「ヨル」という真っ暗な冷たい存在があることを噂で聞きました。

青年の弟妹は、外に出て生活することを夢見ていたのです。

家族思いの青年はいても立ってもいられず、地下を出て「ヨル」を探しに行きました。

「ヨル」は、世界で一番高い山の上にある、世界で一番高い塔の頂上にあるというのです。

青年はそれ以外の情報を聞かず、地下からとびだしました。

引き止める声も無視して。


そこまでの道のりは、大変険しいものでした。

いくつもの干からびた街を巡り、大荒れの海を渡り、太陽に焼かれながらも、青年は歩みを止めませんでした。

いつしか、青年の肌は焼け爛れ、瞳は干からび、喉は枯れました。

それは、見るに耐えない痛々しい様でした。

生きているだけでも痛みを感じ、何も見えず、話すことすら叶いません。

それでも青年は歩みを止めませんでした。

歩き続けました。

目指し続けました。

本当にあるのかもわからないものを、探し求めて。


青年は遂に、世界で一番高い山にたどり着きました。

その山は雲を突き抜けるほどに高い、大変険しい山でした。

それでも青年は突き進みました。

もう何も見えないのですから、少し登るだけでも一苦労です。

それでも青年は登り続けました。

山の頂上につくための場所、あと少しの場所には、崖しかありませんでした。

頂上に行くためには、崖を登る必要があります。

ただ山を登るのとは訳が違います。

それでも青年は登り続けました。

荒々しい岩肌によって肌が引き裂かれても、さらなる昼の熱に焼かれながらも、登り続けました。

山の頂上につきました。

青年の肌はさらに焼け爛れ、そして引き裂かれていました。

それでも青年は歩き続けました。


山頂には塔がありました。

青年は塔の中に入りました。

塔の中は外と違って少し冷たく、とても過ごしやすいものでした。

青年は喜びました。

塔は目が見えなくとも安易に登れるのもでした。

青年はどんどん登り進めて行きます。


塔の頂上につきました。

頂上の部屋には、真っ黒なナニカが鎮座していました。

青年は、躊躇うことなくそれに触れました。

なんとなく、でもはっきりと「ヨル」だと認識したのです。

ナニカに触れた途端、青年の体は変貌しました。

メキメキという音を立てながら、腕は翼に、肌は羽に、足は鉤爪に、頭は鳥のそれに。

青年は鳥になりました。

青年は絶望しました。

これでは弟妹に自分だとわかってもらえません。

青年は怒りを覚えました。

結局、外を焼く昼は変わりませんでした。

青年はすべてを諦め、塔から身を投げ出そうとしました。


その時です。

青年が通ったところは、まるで世界から隔離されたかのように、夜になりました。

青年は希望を持ちました。

青年は飛び続けました。

昼の熱で羽が燃えながらも。


青年は遂に、世界中をヨルにすることに成功しました。

世界は昼の時とは違い、凍てつくように寒く、全てが凍りつきました。

水は氷となり、植物には霜が這いました。

青年は絶望しました。

こんなことをしたかった訳ではないのでです。


世界はまた凍てつきました。

青年のような人間は、過去に何人か居ました。

しかし、その誰もが噂を最後まで聞かずにとびだしました。

そのせいで、正しい順序があるというのに、それを無視するかたちになりました。

青年は世界を救う英雄ではなく、少し意地の強いただの人でした。


「どうしてこうなったのだろう。」


青年の疑問に答える声はありません。

青年はひとり寂しく凍りつきました。




青年は最後まで無念を胸に、死にました。




きらきらと瞬く星のもとで。




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― 新着の感想 ―
 昼が長すぎるのも考えものですが、安易な時刻や事象変動も考えもの、なんでしょうか。  行動力に思慮が伴ってない青年が、弟や妹を置き去りにしてでも得たものが日照りと別種の災難とは悲哀なのやら滑稽なのやら…
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