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少年とエルフさんの逃避行 ~世界樹温泉逗留記~  作者: 九束


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折檻は嫌ー!通報も嫌ー!

僕はどこにでもいる日本人の9歳児。


自慢じゃないけど容貌は整っていると思う。


あとは普通……ごめん、嘘です。

僕は同世代の子よりもずっと頭が良い。

だから大人でもちょっとやらかさないようなやらかしをしちゃったりはする。


例えば?


うーん……。


8歳の時に反物質炉の設計をミスって北米の半分を消し飛ばしそうになったこととか、僕たち日本の宗主国になっているエルフ部族連合の最高責任者、前FTL文明首席保護観察官のエルフさんにハニートラップを仕掛けて、日本を600光年先の惑星にお引越しさせちゃったりとかかな。



そして僕が今いるここは都内の湾岸エリアに建てられた五つ星ホテル。エルフ部族連合の人たちが宿舎にしており、観察官事務所の最高責任者なエルフさんはその中でも最高級の部屋に滞在している。


そんなエルフさんは絶賛正座中。僕も正座中。

僕とエルフさんの正面にはエルフさんの地球人秘書官で――僕のお父さんが青筋を立てながら仁王立ちしている。


エルフさんが正座している理由はエルフさんの秘書官をしている僕のお父さんに秘密で日本を列島ごと日本が新しく領有することになった惑星――秋津洲にワープさせてしまったから。


僕が正座をしている理由はエルフさんを誑し込んで600光年先の惑星への『お引越し』をおねだりしたから。


今はその経緯を説明したところ。

お父さんからしたら日本列島が600光年移動するという大事件に対しての、あんまりにもあんまりな背景に頭を抱えてたあと、大きなため息。


それをエルフさんはあきらめととらえたのか、いい笑顔で「……自治国昇格おめでとう、よかったじゃない。一番乗りよ、日本」と言い放ち「うるっさいっわこのショタコン喪女(エルフ)!!!!」とお父さんに怒られている。


「お前もお前だ!前回のことといい今回のことと言い、自重って言葉を知らんのか!!!」

お父さんの矛先が僕に向く。


「でも今回はおねだりしなくても同じ結果になってたと思うよ?」


そう、経緯だけ考えると僕がおねだりした結果なんだけど、たぶん僕がエルフさんを誑し込まなくてもエルフさんは僕が『アドバイス』したら同じことをやってたと思うんだ。


「元々日本にはオークさんが余らせた火星が贈呈予定だったけど、それはお父さんでも止めてたでしょ」

「ぐぬ……まあ確かにそうなんだが……」


お父さんが言いよどむ。

そう、仮に僕がおねだりもアドバイスもしなかったとしても、元々の贈呈惑星だった火星の贈呈でよいかをお父さんにエルフさんが聞いていただろうし、そうしたら僕とおんなじ問題を提示して今の秋津洲が贈呈惑星になって結局秘密でお引越しになっていたと思う。


僕がエルフさんを誑し込んだことには複数理由があるし、僕が欲しい成果はもう何個も得ているけど、今回のお引越しについては僕は悪くないんじゃないかなぁ?

ハニートラップといっても、僕の体は子供なわけで、まだそういう機能もないから添い寝しただけだし。


「そういうわけで今回の件は僕もエルフさんも無罪ということでいいんじゃないかな?」

「いいわけあるかボケ!おまえ、小学生でハニトラとかお前、本当に何考えて……いや、そういえばお前、反物質炉の件の前にはそこの喪女(ボス)と知り合ったはずだよな……?まさか反物質炉の知識の流出元も喪女(ボス)か?」


言っていなかったもう一つの事実にもお父さんは気づいたようだ。

そっちは完全に言い訳できないので顔をそらす。

そらした視線の先ではエルフさんも顔をそらしていた。


「有罪!!ド有罪だこの……バカ!ども」


怒りのあまりお父さんの罵倒が単調になってしまう。

そして数秒後に回復したのか、顔を上げてお父さんは言い放つ。


「あぁもう!!お前の所業は母さんにも共有して折檻だ!前の比じゃないと思え。あとそこの喪女(ボス)!あんたも一回銀河連邦警察にしょっ引いてもらうからな」

「「えぇ―――!?」」


その言葉に、僕とエルフさんは青ざめる。


お母さんの折檻は勘弁してほしい。

前回の折檻ではお尻が割れるかと思うくらい叩かれてその夜は数日は椅子に座れなかったしうつぶせでしか寝れなかった。


あれのパワーアップバージョンは不味い。

お尻が本当に割れるかも。

あと坊主とかにもされるかも?

ちょっと勘弁してほしい。

恥ずかしすぎる。


エルフさんの方も非常にまずいのか、お父さんに縋りついている。


「田中ーーー許して!?まだ法制度整っていないとはいえ今の管轄エルフ族じゃないから絶対こってり絞られるわ!!!」

「絞られろっていってんだよこの馬鹿ども!!」


縋りつくエルフさんを振り払って窓を見ながら端末を操作するお父さん。

あ、本当に通報するつもりだ。


隣にはあーやめて―と頭を抱えるエルフさん。


僕は折檻は嫌、エルフさんは逮捕が嫌。



……じゃあやることは一つだよね。



僕はエルフさんに耳打ちする。


「ねぇねぇエルフさん」

「なぁに少年?」


ごにょごにょごにょ。




逃げるしかないよね。

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