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天来  作者:
超越者達
74/78

ゾンビパニック

「来たぞ、この頭に駆け巡る電流のような衝撃!」

研究室で耀夏が叫んだ。

「どっ、どうしました?キョージュ」

シアンは耀夏の叫びを聞いて、駆けつける。

「ジョシュよ、これがひらめきというものだ!この配合で薬を作れれば、この世界を征服できるほどのものが作れると俺の勘が言っている!」

「そ、それはすごいです」


しばらくすると、薬が完成した。

「では、早速」

耀夏はなんの躊躇いもなくその薬を飲んだ。

「…」

シアンはワクワクしながら何が起こるのかを待っている。

「…うぅ!」

耀夏が急に苦しみ出した。

「キョージュ!?」

「ゴホッゴホッ………」

耀夏の発作は消えた。

「………キョージュ?」


「今日は定休日だから、耀夏の所に遊びにいっちゃおー」

創想は人形を持って楽しそうに歩いている。

「おっじゃまー!…」

景気良く研究室の扉を開けた創想の目に映ったのは、肌が緑色に変色し生気がなくなった耀夏とシアンだった。

「…え……?」

そして耀夏と目が合った。

「う、う、うわああああああああああああああ!」


シリウスの家。

いつも通り、竜人は寝ている。

しかし、その安息を乱すのは家中に響き渡るノックの音だった。

「なんだよ…もう…」

嫌々ながらも、シリウスは入り口のドアに手をかける。

ドアを開けるとそこには創想がいた。

その様子は、息が絶え絶えでひどく汗もかいていた。

「どうしたの…?」

「ゾ…」

「ぞ?」

「ゾンビが!」

「ゾンビ!?」

「早く逃げないと、僕たちまで…!」

「そんなのいるわけ…」

創想の後ろを見たら、遠くから大量のゾンビが迫ってきていた。

「なぁ、あれが…ゾンビか?」

「うん、あんなにいなかったけど…」

「ふぅ…」

シリウスはそっと一息をついた。

「逃げるぞ!」

「うん!」

シリウス達は一目散に逃げ出した。


シリウス達はアレスの武器屋の前を通りがかった。

「よお、シリウスと…こいつは?」

「そんな事を話している場合じゃない。逃げるぞ!」

シリウスはアレスの腕を引いて走った。

「うぉ!?」

「急げ、急げ…!」

「なんだってんだ」

アレスは後ろを見た。

そこにはゾンビがとんでもないことに形相で追いかけてきているのが見えた。

「なぁ、シリウス。これって夢か?」

「現実とかけ離れた事を目にした奴の感想は同じなんだって分かったよ」

「なんでこんなことになるんだー!?」

「絶対、耀夏だ!」

創想がそう言った。

「あの研究者が?」

シリウスは記憶を頼りにそう聞いた。

「あいつ、時々やらかすんだよ!」

「やらかしてるの範囲か!?」

「とにかく今は急いで逃げよう!」


「4人でお出かけなんて、珍しい事ですわね。ねぇ、かぐや様?」

月読、かぐや、千手、鏡の4人は桜桃島から離れて出掛けている。

「そうねぇ。月読様もついてきてくれるのも嬉しいです」

かぐやはそう言いながら月読を見る。

「ふん」

月読はそっぽを向いた。

「あ、そうだ、かぐや様。また、あれやってくださいよ」

千手がそうやって何かを求めた。

「…あぁ、あれ?」

「はい!」

「千手」

「…」

「黙れ…!」

「いやぁ!最高!」

千手は酔いしれている。

「何してんのさぁ」

鏡は呆れた様子で見ている。

(しくった、ついていくんじゃなかったさぁ。こんなのただの女子会じゃねえか)

「あぁ、なんで俺は…」

「鏡、何?ボソボソと」

かぐやはそう尋ねた。

「なんでもないさぁ」

「…?」

「かぐや様…あれ」

千手が指差した先には、何か具合の悪そうな人が1人。

「どうかしましたか?」

かぐやは優しく声をかける。

「放っておけ」

月読は冷たくそう言った。

「月読様?困った時はお互い様ですよ…」

その人はかぐやの手を噛んでいた。

「…!」

「…貴様!かぐや様の綺麗なお手を噛むとはどういう神経をしておるのだ!」

千手は声を荒げる。

「許さぬ、貴様を骨の髄まで切り刻んでくれるわ!…かぐや様もそうお思いですよね!?」

千手はかぐやの方を見た。

「っ!」

しかし、かぐやも手を噛んだ者と同じようになっていった。

「かぐや様…?」

「まさか、これは伝染するさぁ!」

鏡はこの仕組みにいち早く気づいた。

「何…!?」

「仕方ない、月読!かぐや連れて一旦…」

鏡は月読にそう言ったが、

「あぁ、可哀想なかぐや。1人では寂しかろう?ほら妾の手を噛むのだ」

月読はかぐやに手を噛ませていた。

「テメェ、何してるさぁ!?」

「しまった、その手が…!」

千手もかぐやの方に行った。

「かぐや様…私は首を噛んでもらっても構いませぬ」

そうして、千手も首を噛まれた。

「ふざけんじゃねぇ!テメェら…」

そうして、生気を失ったようになってしまった三人は鏡を見た。

「待て…俺は絶対嫌だからなっ!」

鏡は三人から逃げた。

(おい、竜人さんよ。お前が苦労して倒した渡月教はこんな簡単に壊滅しちまったぞ…)


「はぁ…はぁ…」

シリウス達は未だゾンビ達を振りきれない。

「こいつらの身体能力はなんでこんな高いんだ?俺は本気で走ってるのに…」

「多分、耀夏はゾンビの伝染に加えて身体強化もつけたんだ」

「うわっ!?」

アレスは地面の石に躓いて転けてしまった。

「アレス!」

シリウスは立ち止まる。

「止まるな!早く逃げろ!」

「でも…」

「生き残れよ!」

「…あぁ!創想、行こう…!」

「う、うん」

(こんな感動的な場面なのに、原因がこんな馬鹿馬鹿しいなんて…ほんとあいつ…)


アレスと離れてからもしばらく走って、鏡が向こうから走ってきた。

「お前…」

「竜人さんじゃないかぁ」

「今は、喋ってる暇はない」

「事情くらいは分かってるさぁ」

「助かる」

「にしても、逃げるしかないのかぁ?」

「…ヴェルタナの屋敷まで行くか」

「ヴェルタナ?」

「超越者の1人だ」

「そいつは頼もしいぜ」


シリウス達はヴェルタナの屋敷まで辿り着いた。

「こえぇなぁ」

「ここまで来たら安心だろう」

しかし、ケインが慌てて屋敷から出てきた。

「ケイン!?」

「逃げてください!」

屋敷の中からはクロとシロとヴェルタナがゾンビになって出てきていた。

「なっ!?」

「おいおい、話と違うさぁ!」

「ヴェルタナ様が面白そうだからって噛まれに行ったんですよ!」

「馬鹿なのかあいつは!?」

(楽しそう…?)

創想はその言葉を疑問に思った。


その後、世界中にゾンビの侵食が広がっていった。

シリウス達はとある洞穴に身を潜ませていた。

「この洞穴もどれだけ持つか…」

「対処法はないのでしょうか…?」

「…リゼアだ」

「え?」

「リゼアにゾンビを直してもらう薬を作ってもらうしかない」

「その手がありましたか!」

「とりあえず、リゼアってのを探せばなんとかなるのかぁ?」

鏡は確かめるように聞いた。

「あぁ、この大災害を乗り切るにはあいつの力を借りるしかない」

「こうなったら急ぎましょう」

ケインは洞穴から飛び出した。

「そうだな」

「…ま、まさか!」

しかし、急にケインがそんな事を言った。

「なんだ!?」

洞穴を抜け出した先にはアレスとリゼアがゾンビになって彷徨いていた。

「なっ!?」

「あれが、リゼアか?」

「あぁ…」

「終わったなぁ」

「く…」

「シリウス、逃げよう!」

創想がそう言った。

「あぁ」

「あと、多分だけど制限時間があると思うんだ!」

「制限時間?」

「そう、さっきのヴェルタナって人?その人が楽しそうだからってゾンビになったって言ってた」

「だから…」

「でも、そんなのでなると思う?」

「…!」

「あいつの事だからきっとそういう所は作ってると思うんだ。その人もそれを見抜いたんじゃないかな?」

「…ヴェルタナなら、確かにそうかも」

「だから、今は逃げるんだよ。どっちにしろゾンビなんてなりたくないしね」

「…創想!」

「え?」

創想のすぐ横にゾンビが来ていた。

(こいつら待ち伏せしてたのか…!)

シリウス達は取り囲まれてしまった。

「シリウス、空に飛んで逃げるさぁ」

「そんな事…」

「ここじゃそれしかないさぁ」

「…クソッ!」

シリウスは飛んで逃げていった。


7日後

シリウスは、天越山に隠れていた。

「創想の話だと制限時間があるらしいけど、何回か降りてもゾンビはいた。本当にあるのか?」

その時、遠くから何かが飛んできた。

「タナ…?」

しかし、肌は緑色に変色していた。

「っ!」

シリウスは下に降りるしかなかった。

だが、下もゾンビだらけ、もう逃げ場はなかった。

「…終わりか」

シリウスは諦め、目を閉じる。

「…あれ、俺何してんだ?」

不意にそんな声が聞こえて、シリウスは恐る恐る目を開ける。

そこには、さっきまでのゾンビのような見た目ではなく、生き生きとした人達がいた。

「これは…」

「やぁ、シリウス」

アレスがシリウスを呼んだ。

「アレス…」

「チェッ、追いかけっこも終わりかよ」

「まさか、本当に制限時間が?」

「なんだ、お前も気づいてたか」

「アレスもか?」

「俺は眼があるからな」

「…やられた、リゼアも気づいてたのか?」

「あぁ、そん時に薬で戻されたよ。そして、ゾンビになりきってたのさ。あいつらは体色でしか判断してなさそうだったから」

「あぁ、そういう事ね」

シリウスは疲れ切っているようだった。

「…ドンマイ」


「戻ってよかったです。ヴェルタナ様はしっかりと分かっていらしたのですね?」

「当たり前よ、ゾンビにしては魂が綺麗すぎた。すぐに戻るのは簡単に分かったよ」

「はぁ、それだったら一言言ってくれれば…」

「それじゃあ、私がケインを追いかける口実にならないでしょ?」

「うぅ、意地悪…」


「単刀直入に言う、お前らは3人で揃って外に出ることは禁止だ!」

鏡がかぐや達3人に説教している。

「いやよ、なんであんたなんかに指図されないといけないのだ?」

千手が反抗する。

「お前らが3人揃うと馬鹿になる!馬鹿三人衆さぁ!」

「貴様に馬鹿と言われる筋合いなどない」

月読も同じような態度をとる。

「はあ、ダメだこりゃ」



「テメェコンニャロー!ふざけたもん作りやがって!」

創想は耀夏の胸ぐらを掴んで前後に激しく揺らしている。

「ごめんよ、思いついたことは試さないと気が済まないのだ」

「一週間、いや一ヶ月は監獄にでも入って反省してろ!」

「うぅ、ごめんよ」

「全く、今日は…じゃ、ないか。とにかく疲れた」

創想は入り口のドアに手をかける。

「絶対、反省しろよ!」

「はい…」

そう吐き捨て創想は出ていった。

「…キョージュ」

シアンが耀夏に話しかける。

「なんだい、ジョシュ?」

「もう少し、先を見る力をつけるべきですね」

「トドメ刺さないでくれる?」

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