地中に眠る者
ピィーリは地面に目を向けて、辺りを見回っている。
「レキスさんが言ってた地底人ってどこにいるんでしょう?」
だが、探しまわってもその手がかりが見つかるはずはない。
なぜなら、それはレキスのついた嘘なのだから。
…しかし、見つかるはずのない物がそこにあった。
それを、ピィーリは透視能力で見通していた。
「…見つけた!」
地中にある不自然な空洞。
そこに何もないと言うのは逆に不自然だと感じられる程。
「…掘るしかないです!」
ピィーリはひたすらシャベルで掘っていく。
やはり今まで見つけられなかった事も納得できるほど深い。
それでも、ピィーリは掘り続けた。
その先に何かがあると信じて。
一日中掘ってようやく、隙間が見え出した。
「…!」
ピィーリはその穴をなんとかこじ開けようとした。
すると、地面が抜けてピィーリは中に落ちてしまった。
「うわぁ!?」
ピィーリはそのまま地面に叩きつけられた。
「いてて…」
起き上がったピィーリは周りを見回す。
中は洞窟のようで、道は続いている。
「行ってみますか…」
暗い闇の中を僅かな視界を頼りに進んでいく。
幸い透視能力のお陰で光がなくても多少は見える。
と言っても、微かであるが。
しばらく進むと、大きな岩が見えた。
「なんでしょう、これ?」
ピィーリの目は奥にもまだ道があると示している。
「なんとか…!」
力一杯押そうとするが、全く動かない。
「仕方がありません…シリウスさんに頼みましょう」
…だがその時、シリウスは桜桃島。
シリウスの家には誰もいない。
「えぇ〜いませんね。ヴェルタナさんに頼みますか?」
ピィーリはヴェルタナの屋敷まで向かった。
「ヴェルタナさーん?いますかー?」
屋敷の扉を叩く。
「…はぁい」
力のない声が中から聞こえる。
「…?」
「あぁ、あなたは…」
「はい、以前お邪魔させていただきました。ピィーリです!」
「…今回はなんのようですか?」
「調査を手伝っていただきたくて」
「なるほど…皆さーん、動ける人いませんかー?」
ケインは屋敷の中に呼びかけた。
「…僕、行けまーす!」
誰かの声が聞こえる。
ケインとは違って元気がある。
クロが駆けつけてきた。
「じゃあ、お願い…」
「何を?」
「この子の調査を手伝ってください」
「いいけど」
「私は、オルスタ様の館の件でもうヘトヘトです」
そう言って、ケインは屋敷の中に戻っていった。
「お願いしますね…えっと」
「クロだよ」
「クロさん!」
「うん!」
ピィーリはクロをあの岩の前まで案内した。
「この岩?」
「そうです!」
「…じゃあ、後ろの方にさがって。絶対に近づいたちゃダメだよ」
「はい…?」
ピィーリは不思議に思いながらもその指示に従った。
「よし…天地崩壊!」
クロの力で、岩は歪んでいきやがて壊れた。
「終わったよ」
「すごいです!」
ピィーリは目を輝かせている。
「ありがとう」
「私にもこんな強い力が欲しかったですよ」
「そう?」
「はい!私にも力さえあればこんな岩なんて即粉砕ですよ」
「そっか…でも、僕は…」
クロは言葉に詰まる。
「どうしました?」
「いや、やっぱり強い力っていいよね!」
クロは笑顔を見せた。
「うんうん!そう思いますよね!?」
「さぁ行こう?目的はこの先だろう?」
「そうでした。行きましょう!」
クロ達はもっと先へと進んでいった。
「ねぇ、どうしてこの先が見たいの?」
「え?」
「あぁ、ごめん。分かりづらい質問した。どうしてピィーリはずっと探検してるの?攻撃特化の能力もなくて、危険なのに」
「あぁ、そう言う事ですか。特に考えた事はありませんね。…私が生まれた時、周りには何もなくて、日陰の中でずっといました。やる事がなかったけど、それを模索している時間が楽しかった。そして、こうして何かを探究するのが生きる意味になったんです」
「…へぇ、そうなんだ」
「クロさんにはないんですか?そういうの」
「僕?僕は…どうなんだろう?姉さんがいて、他のみんなもいて、それでいいって思ってた、かも」
「だったら、偶に私の事を手伝ってくださいよ。また、呼びにいくので」
「じゃあ、そうしてよ。僕も喜んで引き受けるから」
「えへへ」
「どうしたの急に?」
「いや、探検友達ができたみたいで嬉しくて」
「友達…」
クロの頭の中にその言葉が強く残った。
「友達ってこんな感じなんだ」
「クロさんって友達いなかったんですか?」
「姉さんは姉さんだし、ケインさんはヴェルタナさんにつきっきりだから、友達は君が初めてだよ」
「そうですか、クロさんの初めてになれて嬉しいです」
「ピィーリはいい奴だな」
「え…?」
「さぁ、行こうか。まだ道は続いている」
「はい」
闇の中を随分と進むと先の方に何か光が見えた。
「ピィーリ!なんかあるよ!」
「はい!行ってみましょう!」
この大きな発見が2人を昂らせる。
2人は光に向かって走って行った。
そして、その光の源にはとある人が寝ていた。
「誰だ、こいつ…?」
クロは不審そうにその者を見る。
「あの!すいません!」
「ちょっとピィーリ!」
しかしクロとは対照的にピィーリは大胆だ。
「うん、誰だ妾の眠りを妨げる奴は…」
そして、その寝ていた者は起きた。
「お、起きた…」
「何だ貴様らは…?」
その者は明らかに不機嫌だった。
「す、すいません…」
クロは怯えている。
「ふっ、別に怒鳴ったりせん。そう怯えるでない」
その様子を見て察したのかその者は優しく声をかける。
クロの緊張が少し解けた。
「あなたの名前は…?」
ピィーリはそう聞いた。
「妾は天照、太陽から生まれた、太陽の化身じゃ」
「太陽の…?」
クロはその言葉を聞いて、ある事を思い浮かべた。
その事はクロにとっての一つの逃げ道だったのかもしれない。
「ねぇ…」
クロは無意識にそう言った。
「なんだ?」
「太陽の化身なんだよね」
「そう言っておる」
「じゃあ、日蝕ってあなたが関係してるの?」
無茶苦茶な事を言っている事は分かっている。
でもあの罪から少しでも心を軽くしたい、そんな思いがクロの頭の中を支配する。
「…無いな。化身とは大袈裟な事を言ったかもしれん。勘違いさせてしまったからな。妾は太陽から生まれただけ、太陽に対して何もできはせんよ」
「….そうか、ごめんなさい。分かってるんだ」
クロはもう耐えられなかった。
罪からの逃避行を潰されたことではない。
自分がこの期に及んで罪から逃げようとした。
その事実が胸を酷く締め付けた。
「うっ…」
「クロさん?」
ピィーリが声をかけた時、クロの頬に涙が伝っていた。
「急に泣き出して、どうしたというのだ?」
天照も急な出来事に困惑している。
「く…ぅ…」
「…全く仕方のない子だ」
天照はクロを抱き寄せた。
「…!」
(…すごく…暖かい)
クロは眠ってしまった。
心がかなり参ってしまって、疲れたのだろうか。
「お前はこの子の友達か?」
「はい」
「この子は一体どうしたのだ?」
「分かりません…」
「そうか、この子に親か何かはいないのか?」
「お姉さんならいるって」
「呼んで来てはくれぬか?」
「はい!」
「クロ!」
シロがピィーリに呼ばれてきた。
「お前がこの子の姉か?」
「そうですけど、あなたは?」
「名乗りは一日に二度もするものではない。…この子を頼んだ」
クロをシロへと渡す。
「ありがとうございます」
「お主の妹は、日蝕に何か畏怖でもあるのか?」
「…!」
日蝕、あの悲劇の火種となった出来事。
(まさか…!)
「…どうしてそんな事を?」
「急にそんな事を聞き出して、急に泣き出したのでな。何かあると思った方が自然だろう?」
「そう…ですか…」
シロはそう言って、洞窟を出ていく。
「ん…あれ?姉さん?」
クロはいつの間にかシロに抱き抱えられていたように感じたので、困惑している。
「クロ…あの事はもう、気にしないで」
「姉さん、あの人から聞いたの?」
「そうよ、全くあんたって子は」
「だって…」
「あれは、私が悪いの。日蝕なんかに負けてしまった私が。クロのせいじゃない」
「そんな事…!」
シロはクロを宥めるように頭を撫でる。
「いいの。生まれただけで罪なんて、そんな酷い事ないわ」
「…分かった。ありがと」
「もう寝てなさい」
「うん…」
天照は洞窟の中で1人でいる。
「おかしな姉妹よ。…妾も目覚めた暁に、姉妹としてお前に会わねばな。なぁ、月読よ」
時系列 分かりづらいので(上から順)
シリウス達対渡月教
ピィーリがレキスの所へ
シリウス一週間程度桜桃島
ヴェルタナ達がオルスタの館に
今の話
ep.63




