双天
「奥義・双天!」
直後、月読の視界は澄み渡るような青に満たされた。
「…!」
上下左右前後、どこを見ても青い、そんな所に月読はいた。
(かつて…妾がベテルギウスに負けた時、最後に奴はこの技を使った。シリウスはこれと同じ技を…)
『流星』
この空間に刻まれたように唱えられた『流星』という言葉。
それを表すように四方八方から星が月読に迫ってきた。
「っ!」
月読は鏡を4つに分け、それらを迎撃した。
だが、無数に迫る流星群の全てを打ち砕くには至らない。
幾つかが月読に当たる。
「かはっ!」
月読は血を吐いた。
「そうだ…この技は…」
『奥義・双天』
シリウスの扱う竜技の中でも最大の攻撃力を誇る、まさに奥義。
この技を受けた者は月読と同じ空間に飛ばされる。
そして、この空間での損害は身体だけではなく魂にも刻まれる。
しかし、それ故にこの技で使う体力は非常に多い。
この技を受けた後、敵が立ち上がっていたら発動者の負けが確約すると言ってもいい程に…
(この技を食らった後、妾が立っていれば、即ち妾の勝ちだ…)
『天穿』
今度は月読を焦点として、無数の光線が放たれた。
月読は転移を繰り返して避けるが、この数をこれで避け切るのは不可能。
「…っ!」
月読にダメージが蓄積していく。
『天迷』
次は、この言葉が刻まれる。
その時、月読の体を何かが押し潰そうとしている。
「がはっ!」
月読はすぐに転移した。
月読は攻撃の正体が見えなかった。
攻撃の正体を必死に探る。
その最中、月読の腕の骨が音を立てて砕けた。
「ぐぁぁ…!」
鈍い痛みが全身に響き渡る。
(ここの空気が妾を潰そうとしているのか…!攻撃の予兆は魂の力の上昇!)
『天槍』
「この魂の力は…鋭い?」
先程とは違う、魂の形。
そこから離れるように転移した。
しかし、後ろから何かに貫かれた。
「グハッ…!」
背中から腹まで貫通していたが、貫いた物は見えない。
(やはりこれは空気を槍状にしている!)
追い討ちをかけるように槍が襲いかかる。
「っ!」
咄嗟に転移で避ける。
(奴の力は弱まってきている。次が最後の攻撃か…!)
『天没・対消滅』
空間が音も立てずに崩壊していく、上空にも足元にもある空が、自身をゆっくりと押しつぶしていく。
そうして、その存在を保てなくなった空間は残った力を発散させ、大爆発を起こした。
周りの空間を消し去り、元いた場所には大きな窪みができていた。
「はっ…!」
シリウスは膝をついていた。
それを先程までしていなかったかのように荒い息、全身が震えて力が出ない、座り込む体を支えるのでさえ槍に頼らなければならない。
(これで…終わらないと…負ける…!)
ゆらめく視界が定まり前方がよく見えてきた。
(立ち上がっているな…倒れていてくれ…!)
そう願いながら、シリウスは目の前を見ていた。
そこには全身が血だらけになりながらも立っている月読の姿があった。
「っ!」
絶望
その一言をよく現している。
「竜人…よ、妾の…勝ちだ…」
月読は鏡に力を溜める。
疲弊もあって遅いが、確かに溜まっている。
「っ!」
シリウスは力を振り絞って、立ち上がる。
うまく動かない体をなんとか月読まで運ぶ。
「貴様…まだ…!」
これは月読がシリウスを光線で貫くのが先か、シリウスが月読を槍で突き刺すのが先か、勝敗のつき方はそれだけだ。
シリウスが少しずつ距離を詰めていく。
月読の鏡が力を溜めていく。
シリウスが月読の目の前まで来て、槍を振りかざす。
月読ももうすぐで力が完全に溜まる。
次の瞬間に決着がつく。
しかしその刹那、何かが二人の間に割って入った。
かぐやだ。
月読を守るようにシリウスに向かいあう。
「…!?」
二人は突然の介入に動揺する。
(かぐやごと奴を貫けば、妾の勝ちだ。貫け…貫け…!)
しかし、月読は光線を放てなかった。
(まずい…槍を止められない…このままじゃ…!)
シリウスの槍がかぐやを貫こうとする。
次の瞬間、何かが槍を弾いた。
槍はシリウスの後方に飛んだ。
月読の鏡も何者かが蹴り飛ばした。
「なっ!?」
槍を止めた者をシリウスは見た。
鏡がそこにいた。
「勝負はここで終わりさぁ」
「えぇ、その通りです」
横から彩がそう言った。
鏡を蹴り飛ばしたのは彩だった。
「貴様ら…戦いの…邪魔を…」
月読の意識は途絶えた。
「月読様!」
かぐやは月読の方を見た。
「ありゃりゃ、これは竜人の勝ちかなぁ」
その様子を見た、鏡はシリウスの方は目をやる。
シリウスも意識を失って寝ていた。
「こいつは、引き分けだなぁ」
ルビでなんとなく分かってください。




