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天来  作者:
超越者達
59/59

捨ててしまったもの

「乱糸殺!」

細かい網目を作る鋭い糸が迫る。

「業火風来!」

熱波が風に乗って訪れる。

網は秩序を失って、崩れた。

「…こいつ!」

「シリウス殿が言った、奴の弱点。糸は熱で溶ける、貴様の術はもう私に多用しない」

「舐めるな!籠目」

「硬度の低い糸は熱に溶けづらいが、風で切り裂ける。塵旋風!」

この網はバラバラに引き裂かれた。

「く…!まだだ!」

千手は城の内部へと逃げ込む。

「私の糸は室内でこそ力を発揮する。この罠だらけの城を突破できるものか!」

千手は城の至る所に糸を設置した。

「私の風を舐めすぎだ、大旋風!」

巨大な竜巻は城の壁を破壊して、千手の姿を露わにした。

「馬鹿な…!」

「業風!」

突風が千手を吹き飛ばした。

「わあぁ!」

城の外、空中に千手は投げ出された。

(なんとか…糸を…!)

千手は城に捕まろうと、糸を伸ばすも届かない。

「ここまでか…」

千手はそのまま下に落ちた。

冥はその様子をただ眺めていた。

(このまま、奴が落下死して終わりだ…)

その時、いつか聞いた言葉が頭の中に流れた。

「…っ!」

冥はその言葉に突き動かされるように、千手の方へと飛んでいった。

落ちている千手を冥が抱えた。

「お前…!?」

冥はそのまま、大地へと彼女を下ろした。

「な、なぜ…」

「勘違いするな、命を助けただけ。敵は敵だ早く失せろ」

冥は冷たい言葉をかける。

しかし、千手は冥とかぐやを並べてしまう。

「そ、そんな。わ、私がお慕いするのはかぐや様だけなのにー!」

そんな事を言って千手はどこかへ行ってしまった。

冥はあの時の言葉を頭の中で反復させている。

「…無闇に殺す選択をしてはならない、か。あの時の彼の言葉を私は正しく出来ているのだろうか?」


「八岐大蛇!」

八首の竜を氷で創造した。

「竜技・光霧弾!」

シリウスは自身を中心に無数の光の粒を放った。

(冥が言ってた奴の弱点)

その光弾はある所を狙っていた。

それぞれがシリウスを飲み込むのに十分な程の大きさの八首の竜の体は少しずつ崩壊していく。

「っ、こいつ…」

(弱点…それは、氷の構造物には節がある。かぐやはこの巨大な創造物を一度に生み出してるわけじゃないんだ。一度に出せる氷は限られている、だから氷同士を繋ぎ合わせて大きな物を作る。だが、その接着面は脆い!)

シリウスのこの光弾は無数に出せるが、威力が低い。

そんな物でも節を狙う事で巨大な八岐大蛇を砕ける。

「あの天狗め、竜人に何か吹き込んだか!」

八岐大蛇を砕き切り、シリウスはかぐやの元に近づいた。

目の前まで来たシリウスはかぐやに槍を突き立てる。

「氷剣!」

かぐやは氷で作った剣でそれを受けた。

「お前の…」

かぐやは何かシリウスに喋っている。

「…?」

「お前が言った強さなどは、幻想だ!」

「…!」

かぐやはシリウスを剣で弾いた。

「お前は現実を見てない、光り輝く理想しか見てない」

「…」

「幼稚な戯言だ…!」

「…」

「間違ってるんだよ!」

「…そうかもしれない、俺はこの世界に降り立ってまだ間もない。一体どんな闇がこの世界に渦巻いているのか見当もつかない」

「そうだ!お前は…」

「でも、間違ってるなんて思ってない!」

「…!」

シリウスの強い言葉にかぐやは飲み込まれそうになったが、それでも次の言葉を捻り出す。

「間違ってる、間違ってるんだ!お前の言ってる事はただの綺麗事だ!」

「綺麗事で何が悪い?光り輝くものを見ずに、闇ばっかりを見てたら、前になんて進めない!」

「私は前に進める!光り輝く大地に、不浄なる月に!」

「そこに行って何がある?」

「何が…?皆がいれば私は…」

「皆は付いてくるのか?」

「…っ!」

かぐやは唐突にあの時の雪那を思い出した。

あの懐疑的な目が胸を締め付ける、あの雪那の手はかぐやを拒絶していた。

「だ、黙れ…」

冷気が流れ込む。

「…!」

「黙れ!」

氷が大きく、高く広がっていく。

「八岐大蛇!」

またかぐやは八岐大蛇を出現させた。

しかし、弱点である節は氷で補強されていた。

「っ!」

「噛み殺せ、八岐大蛇!」

竜の頭達は殺意の赴くままに、シリウスへと向かった。

「…」

シリウスはそれを避けようと飛び回る。

「鬱陶しい…!」

かぐやの苛立ちが加速する。

すると、竜の頭同士がぶつかった。

「なっ!?」

かぐやはシリウスに夢中で気がつかなかった。

その綻びをシリウスは見逃さなかった。

「螺旋双竜!」

巨大な二つの竜が螺旋を描きながら、氷を削り取っていく。

「…!」

そして、それはかぐやの元まで届いた。


氷の城はその形を失っていく。

「…本当にかぐやを倒しちまったのかぁ?」

鏡は驚きながら崩れゆく城を眺めている。

「ふっ」

彩は当然というように自慢げに笑った。


「シリウス殿、やりましたか…」

冥もその様子を見ていた。


「そ、そんな。かぐや様…」

千手は悲しそうにそれを見ている。


氷の破片の中、かぐやは倒れている。

「私は…間違っていたのか…?」

かぐやは声を絞り出すように言った。

「分からない。でも、俺は誰かを見捨てるような事をしたくない」

「…そうか…そうかな」

かぐやはなんとか起き上がる。

「今回は私達の負けだ。…お前の方が強かったと認めよう」

「そいつは、どうも…」

次の瞬間、シリウスの胸に光線が打ち込まれた。

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