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天来  作者:
超越者達
56/59

鬼の血

刀を振り切った鏡はそのまま穴へと落ちていった。

その途中でかまいたちがいくらか飛んできた。

「まだ、動けるのかぁ!?」

狙いの定められていない攻撃は当たりはしなかった。

鏡は着地すると彩の方を見た。

彩は胸部から腹部まで大きく切られており、その傷を手で覆っている。

鏡は彩の刀を見た。

さっき一緒に切ったはずの刀が元に戻っている。

「ふーん、特殊な刀か。でも、体は元に戻らないだろう?」

彩はもう立てる様子でもない。

跪いて鏡を睨むのが精一杯だ。

息が上がって疲弊しきっている。

僅かな動きでも、傷が広がり致命傷になりかねない。

「終わりさぁ」

「ま、まだ、だ…」

「あ?どう見ても俺の勝ちさぁ」

「…これは、私自身…大きく疲弊する…だから…この力は…いざというときにしか…使わないことにしていた…」

「…!?」

鏡はその言葉に値の知れないものを知覚し、構えた。

「これが…私の…能力。

鬼血開花!」


大きな轟音が夜空に響き渡る。

「何…!?」

城の頂上のかぐやはそれに気づいた。

シリウスもその音に気づいていた。

「下の方だ、彩…?」


城の壁すら砕き、鏡は外に大きく吹き飛ばされた。

鏡の刀は粉々に散っていた。

(…な、何が、起こった?)

鏡の体は大きな衝撃を受け、動ける状態ではなくなった。

意識も朦朧としていて、保つのがやっとだった。

(凄まじい速さの動き、ギリギリ刀で守る事しかできなかった。それにこの力。何よりあんな怪我でこんな動きをしたら内臓が飛び出てもおかしくない…)

鏡の目の前に何かの影が現れた。

「…!」

視界がぼやけていても、それは彩であると認識した。

視界が定まってきて、少し乱れた着物の奥に見える肌に刻まれた傷は塞がっているのが見えた。

いや、筋肉で無理やり塞がれているようだった。

信じられない光景に鏡は彩を凝視した。

そして、大きく伸びた頭の角をみて全てを察した。

「…なるほど、あんたぁ鬼か。能力は身体強化、鬼の力を強めるのか…。てっきりかまいたちかと思っちまったさぁ」

「あれは私の家に伝わる術だ」

彩は倒れた鏡を見下ろしてそう言った。

「そうかい。俺が迂闊だったか」

「いや、お前は強かった。私の力を隠していたから効いた攻撃だ。次戦ったらこれを使ってもどうなるか分からない」

「お褒めに預かって嬉しいねぇ」

「揶揄っているのではない」

「ははは…」

鏡は乾いた笑いをあげる。

「あんた気に入ったさぁ」

「そうか、私もいい好敵手ができた気持ちだ」

「あぁ、嬉しいねぇ。欲を言えばこんな時に戦いたくなかった」

「…?」

「俺は、元々用心棒として色んな街の金持ちの護衛をして金を稼いでいた。相手は人間だったから負けるわけなかったさぁ。…そうして、かぐやに出会った。最初はただ面白そうだから着いて行っただけで、かぐやの事なんて心底どうでも良かったのさ」

「…」

「でも…なんかさぁ、一緒に色々する内にあいつにも、最初は馬鹿みたいだと思ってた渡月教にも愛着が湧いてきちまったのさぁ。俺にもよく分かんないけどさぁ」

「…そうか」

「だから、頼む。あいつを止めてくれ。あいつは変な奴を信じてる。見えない何かに囚われてこんなくだらない戦いを起こしたんだ。敵に頼むなんてお門違いな事は分かってる。でも…」

「安心しろ、かぐやはシリウス殿が必ず止める」

「本当か…?」

「あぁ何故なら、この私が信じたからだ」 


「鏡がやられたか…」

かぐやはそう呟いた。

「竜技・天雷!」

「氷壁」

雷を氷の壁が阻む。

「竜技・紅蓮!」

炎がそれを溶かし砕いた。

すると、その奥から美しい花がシリウスの視界を覆った。

「!?」

それは、シリウスの意識を持っていった。

戦いの場において、この隙は命取りだった。

「青の薔薇」

花弁が棘に変わってシリウスを突き刺そうとする。

「竜技・堕天!」

咄嗟に口から高エネルギー物質を放ち、爆風に乗って後ろに飛んだ。

「…しぶといな」

いくらか棘が掠って傷ついている。

「本気を出せ、竜人よ」

「言われなくとも、顕竜化!」

戦いはさらに激しくなる。

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