下層の戦い
彩は素早く刀を振る。
かまいたちが鏡に迫り来る。
鏡は刀でそれを防ぐ。
それを何度も繰り返している。
「俺に能力を使わせたいんだろ?」
鏡がそう言った。
「!」
「ほぉら、図星さぁ。甘いんだよ…!」
鏡が彩との距離を急激に詰める。
「くっ!」
彩の動きはぎこちない。
鏡が彩に対して何度も刀を叩きつける。
彩は防戦一方だった。
「かまいたちって能力は強い。でも、より強大な敵にはそれだけじゃ通用するしないさぁ。遠くから攻撃しているのが気が楽ってのは分かるけどなぁ」
鏡は彩を蹴り飛ばした。
「かはっ…!」
鏡の猛攻は止まらない。
「あんたは戦いの経験が少なすぎる。能力を警戒するあまりに何も行動しない。そんなんじゃあ、能力を使ってあげないぞぉ?もっと、俺に能力を使わせてみろ、縮こまったんじゃねぇ!」
「!」
彩の腕の力が強くなる。
彩は刀を押し込んで鏡を退けた。
「そうだ!それでいいのさぁ!」
「百花繚乱!」
無数のかまいたちが鏡を襲う。
鏡は避けたり、受けたりして攻撃を凌ぐ。
そこに集中している隙に、彩が鏡の間合いの内側に潜り込んだ。
「いい動きさぁ」
彩は刀を振るう。
(斬った!)
だが、確実に当たったと思われた攻撃はギリギリで届かなかった。
鏡が想定よりも速く遠くに後ろに避けていた。
「…能力を使ったな!」
彩は得意げに笑っている。
「あぁ、よくやったさぁ。ここからが俺たちの本当の戦いさぁ!」
彩はかまいたちを繰り出そうと構える。
「させないさぁ!」
それを阻むように鏡は彩に近づく。
「ちっ!」
彩は近づく鏡の対処に切り替える。
刀を振り抜いて鏡を切り裂こうとする。
しかし次の瞬間、鏡は彩を飛び越えていた。
「なっ!?」
鏡は彩の背中を斬った。
「くっ!」
彩は素早く鏡の方を向き、切り掛かる。
「落ちろ」
彩は床に立っているのにどこかへ落ちるような感覚を覚えた。
彩は壁の方へと落ちていった。
「っ!」
彩は壁に叩きつけられる。
(奴のふわっとした動き、そしてこの床に落ちる感覚。もしやと思ったが、確信に変わった!)
「鏡、お前の能力は重力操作か!」
彩は鏡を見上げる。
「へへへ、正解」
彩は壁を蹴って、鏡の元に飛び上がる。
「解除」
鏡が能力を解除し、彩は床に落ちる。
「ぐっ!」
そこに鏡が切り掛かる。
「っ!」
彩はすぐに起き上がり、避けた。
(一瞬の判断の余地しか残されないのに、それを一度でも誤れば致命傷になりかねない…)
「はぁ…はぁ…」
彩は息が上がっている。
「疲れてきたかぁ?」
鏡は揶揄うように言った。
「まだまだ…!」
「そうかい」
鏡は彩の周りの重力を強めた。
「かっ!」
彩は床から動けなくなってしまった。
鏡は動けない彩に近づく。
「ううっ!」
彩はなんとか力を振り絞ってそこから抜け出した。
「これを抜け出すのか!?」
彩は鏡に刀を振り下ろす。
鏡はそれを刀で受ける。
「っ!?重いっ!」
彩の力が鏡の刀を押し込む。
「うあぁっ!」
彩は鏡を吹き飛ばした。
「っ!」
鏡は壁に叩きつけられる。
彩はそこに複数のかまいたちで追撃する。
それらは壁を斬った。
「くそ…まさかここまでとは思わなかったさぁ。お前のその力は一体?」
鏡はかまいたちに斬られ、出血している。
「千年晩華!」
彩はこの狭い密室で、高密度のかまいたちを放つ。
「落ちろ…!」
鏡は重力で上の階の床落とした。
凄まじい重力を集中させたため、複数階の床を大きく陥没させた。
かぐやはいくつも階層を間に挟むようにして城を伸ばしていた。
つまり上の階には誰もいない。
鏡は上に逃げた。
彩のかまいたちが壁も床も天井も満遍なく切り刻む。
鏡は上からその様子を見ていた。
「とんでもないやつだなぁ」
加えて、下の階の彩を探した。
しかし、その姿はどこにもなかった。
「どこいった?」
鏡が彩を見失っていると、鏡の背後の壁を彩が外から突き破ってきた。
「!?」
鏡はそこに向いた。
が、少し遅かった。
鏡が後方へ避けるより先に、彩が胸部を斬った。
「ぐっ!」
それでも、鏡の動きは止まらず、穴を隔てた反対側へと飛んだ。
鏡は斬られた所を押さえている。
彩は戦いの決着をつけるべく、構える。
「負けるものか…!」
鏡は彩を重力で拘束しようとした。
しかし、彩はそれを避けた。
「お前は一気に重力を強くできない。なんであれ、能力を発動するには予兆がある」
「っ!」
鏡はさらに彩を追うように複数の地点の重力を強める。
しかし、全て彩に避けられた。
「お前の術は見切った!」
彩は穴を越えるため飛んだ。
しかし、飛んだ所を鏡は見ていた。
そして、そこを狙って鏡も飛んだ。
最も高く飛ばなければいけない所に能力で誘い込み、飛び上がった無防備な所を叩き落とすつもりだ。
「しまっ…!」
彩は咄嗟に構えたが、遅い。
(俺の刀をこいつの心臓に引きつけ、最大限の重力で刀を振り下ろす…!)
「終わりだぁ!」
鏡の刀は彩の刀を折り、彩の肉を裂きながら叩き落とした。




