決戦
満月を背後に構え、月光を碧く反射する巨大な城の前にシリウス達は来た。
外の静かさは、まるでこちらを誘い込んでいるかのようだった。
「行くぞ…みんな」
シリウスは冥と彩にそう言った。
2人は頷いた。
3人は前へと歩き出した。
城の前まで進むと、氷の階段が石垣の上にある入り口へと向けて積み上げられていった。
「…」
シリウス達は誘われるがままに、その階段を一段一段上がっていった。
城の扉は鈍い音をたてながら、ゆっくりと開かれた。
開かれた間の中央に1人、シリウス達を迎えるように立っている。
「よぉ、来たなぁ」
鏡が歓迎の言葉を投げかける。
「奴は私が、2人は先に」
彩がシリウスと冥にそう言った。
それを聞いた2人は鏡の横を通り抜けようとした。
鏡は何もせず黙ってそれを通した。
「案外、素直なんだな」
彩は鏡にそう言った。
「俺の目的はあんたらの足止めじゃない。1人を確実に仕留める事さぁ」
鏡は刀を引き抜く。
「…」
彩も鞘から刀身を露わにした。
「なんとなく、俺とやるのはあんただと思ったさぁ。同じく刀を扱う者。気が合いそうだと思ったからなぁ」
「お前の性格とは相容れないが、私もその気持ちは同じだ」
「俺の名前は陽映 鏡。あんたは?」
「鬼幻 彩」
「そうか、じゃあ始めるさぁ」
2人は向き合って構えた。
先に仕掛けたのは鏡だった。
前に飛び出し、彩の心臓を狙い突きを繰り出した。
「…」
彩は冷静に攻撃の軸から外れた。
しかしその刀の切先は急速に、横に避けたはずの彩の心臓に向いた。
「っ!?」
彩は咄嗟に刀でそれを曲げるも右肩に刺さる。
「ぐっ…!」
「驚いたぁ?」
彩は鏡を振り払うように、刀を振った。
鏡は刀を右肩から抜き、後ろに避けた。
彩は右肩を押さえている。
「こいつ…!」
「これが、俺の術だ。見破らないとなぁ」
シリウス達は回廊を突き進み、階段を駆け上がり2階へと辿り着いた。
「次は私」
また、鏡と同じように開けた部屋の中に、千手がいた。
「私が奴を請け負う」
冥がそう言った。
「あぁ」
シリウスは先へと進む。
「ふふ…」
千手は不敵な笑みを浮かべる。
「かまいたち」
冥がシリウスの前方を塞ごうと密かに仕掛けられていた糸を切った。
「ちっ、気づいていたか」
千手はつまらなそうにした。
「無粋な真似をするな。小娘」
「私が目指すのは、美しい勝利ではない。かぐや様の勝利よ!」
「そうか。まぁいい話は終わりだ、早く始めよう。時間の無駄だ」
「言われなくとも!」
千手は糸を吐き出した。
「籠目!」
冥に覆い被さるようにそれは飛び出す。
「塵旋風!」
しかし、それは吹き荒れる嵐の前では脆い物だった。
シリウスは城の最上階まで、登っていた。
「ようこそ、我らの根城、その根幹へ」
かぐやが奥に座してシリウスを迎える。
「かぐや…」
シリウスはどこか威厳のあるかぐやに、自身が見下ろされているような錯覚を抱く。
「いかにも、私がこの渡月教の創設者であり教祖。月華 かぐやだ」
「お前達の目的はなんだ?」
「私の目的はこの穢れた大地を抜け出し、聖なる星、月に飛び立つ事だ」
「ここが、穢れた大地だって?」
「そうだ、醜い者どもが活歩している。不浄の大地だ」
「…違う!」
「なにがだ?」
「俺は、この大地の上に立って、力強く生きる姿を見てきた。辛くても過去と向き合って、今を生きて、未来に進む姿を見てきた!それが汚れているものか!」
「それは真の姿ではない」
「お前が目を背けているだけだ!」
「…なるほど、それが貴様の答えか。やはり、私とは相入れないようだ。月が命じなくとも、私達はきっといつか敵として向かい合っただろう。それが、今、この時だったのだ」
「っ!」
「ならば、私がすべきは貴様を討ち倒すのみ…!
この穢れた大地に縋り付く愚かな生命よ…このかぐやが駆逐してくれる!」
すると突如、氷の城が縦に引き伸ばされた。
「っ!?」
彩達のいる部屋が、城の変形によって揺れた。
「なんだ!?」
「かぐやも始まったようだなぁ」
冥のいる2階でもその影響が及んだ。
「これは…!?」
「かぐや様が動いたのよ。あの竜人も終わりね」
月に向かって伸びた天守が、花を咲かせるように頂上を開いた。
天井に空を塞がれていたシリウスに星空と巨大な満月を見せる。
2人の戦いは月が見下ろす、開けた舞台の上で行われる。
「竜技・竜閃!」
「氷壁」
氷の壁がシリウスの技を防ぐ。
「氷槍!」
そこから鋭い氷がシリウスに向けて突かれる。
「竜技・紅蓮!」
炎を纏う槍で薙ぎ払いそれを一蹴する。
すると、シリウスの周りが微かに影がかかっているのに気づく。
「!」
シリウスが上を向くと、巨大な氷が落とされていた。
「氷岩落!」
「竜技・堕天!」
シリウスの技が氷にぶつかり、大爆発を起こした。
氷の欠片がハラハラと散っていく。
「…」
「どうした?そんなんじゃ俺は倒せないぞ!」
「心配するな、これはただのお遊びだ」
「…!」
「これからが本当の戦いだ!」
あの聖職者はトボトボと帰っていきました。
怪我は帰る途中に転んだ時にできた擦り傷だけでした。
可哀想に




