動き出す者
勇者の剣、勇者がそれを手に入れれば魔王に絶対的な勝利をもたらす。
エルノアは数々の勇者に手を貸し、数々の魔王を葬ってきた。
そうしてついた二つ名が勇者の剣。
…しかし、1000年前から、その姿を見せなかった。
「そんな、貴様がまたここに来たのか」
「勘違いするな、別にお前と戦いに来たんじゃない」
「…何?」
「ただ、騒がしかったから止めに来ただけだ」
「昔のお前ならきっとそうはしなかっただろうな。なぜだ…?」
「君には関係ない」
「そうか、ならそこをどけ。あの竜人を始末せねばならん」
「あの、ヴァーデン様」
ヨタがヴァーデンに呼びかける。
「なんだ?」
「あの方は敵ではありません。呼び出したのは助けを乞うた訳ではありません」
「…えっ!?」
ヴァーデンは驚いている。
「いやぁ、本当にすいませんねぇ。俺の早とちりで、ははははは」
ヴァーデンは先ほどの威圧感がまるでないように、振る舞っている。
(なんか、こう、なんかなぁ…)
シリウスはなんとも言えない気味悪さを感じていた。
「本当に申し訳ありません」
ヨタも非常に申し訳なさそうに、頭を下げる。
「いや、まぁ、元はと言えばこっちが先に侵入しかけたんだし、お互い様って事で」
「勘違いで大事を起こさないで欲しいね」
エルノアは呆れたように言った。
「…で、間の超越者の話か?」
ヴァーデンはそう話を切り出した。
「そうだ、知ってる事を教えて欲しい」
「しかし、本当に聞いた事がないなぁ。少なくとも1000年前にはいないだろうね」
「レキスに聞いた事がある。間の超越者、かぐや。渡月教を組織している。前に彼女達を少し探っていた」
エルノアはそう言った。
「知ってるのか?」
「あぁ、前に見た場所を教えてもいいけど…君、ヴァーデンに負けそうになってたよね?もし、正面からぶつかる事になったら、勝てるの?」
エルノアはシリウスにそう聞いた。
「勝算はある」
「それは俺に対して?それとも間の超越者に対して?それとも超越者に対して?」
ヴァーデンがそう聞いた。
「恐らく誰に対してでも十分なダメージを与えられると思う。諸刃の剣だけどね」
「ふーん…、じゃあ行っておいでよ。ただし、彼らは数人仲間がいるから君も仲間を呼ぶんだよ」
エルノアは何か別の事を言いたい様子だったが、飲み込んだようだ。
「僕はもう帰る」
エルノアはそう言ってどこかへ行ってしまった。
「シリウスさんを止めなくて良かったんですかー?」
エルノアに誰かが話しかけた。
「やっぱり聞いてたんだね。盗み聞きなんて悪いなぁ、ピィーリ」
話しかけたのはピィーリだった。
「私は先輩の後をついて行っただけですよ?」
「先輩だなんて、慕う気もないくせに、何の用だい?」
「さっき話で少し出てきたレキスさん、積歴の図書館の館長ですよね。私もそこに案内して欲しいのです」
「また、君の趣味?」
「そうですよ、どこの文献にも載っていない遥か昔の事。でもきっと、あそこならあるはず」
「いいよ、案内しても」
「ありがとうございます!」
「…」
アレスはヴェルタナ邸に呼ばれていた。
「来たか、アレス」
ヴェルタナはアレスを迎え入れた。
「アレス様と共に戦うなんて、感慨深いですね」
「へぇ、あんたも戦うの?」
「えぇ、もちろんでございますわ」
ケインは自慢げに言った。
「ふぅん、吸血鬼の島の時は戦いの素人だったそうなのに、よくやるよ」
「あの頃とは違うのでございますのよ?」
「そいつは、楽しみだね」
アレスはそう言って微笑む。
「これから向かうのは心の超越者 オルスタ・レッドローズの館、一応、私の生みの親だ」
「ヴェルタナ様の!?」
ケインは驚いている。
「奴は気まぐれな男だ。私はあいつが嫌いだが、闇の超越者に立ち向かうには、彼の力も借りないといけないだろう」
ヴェルタナは少し不機嫌そうな顔をしながら話している。
(そんなに嫌いなんだ…)
「さっき言った通り、奴は気まぐれな男だ。もしかしたら敵対するかもしれない。その時は戦闘だ、容赦なく行け」
「っ!」
アレス達は険しい顔になる。
「ケイン!」
「はっ!」
ケインはそう言って、跪く。
「クロ!」
「はぁい」
クロは軽い返事をした。
「シロ!」
「えぇ!」
シロは決意に固まった顔を縦に振った。
「アレス!」
「ああ…!」
アレスも覚悟が決まっている事を示した。
「頼むぞ…!」
ヴェルタナはそう呼びかけた。




