気持ちのいい朝
清々しい朝
渡辺さんが外に出てから数時間横になってこれからのことについて考えていた。目的もなく生きていた人間が突然目的をもてと言われて頭に浮かぶはずもなく、ただ時間だけが過ぎていき、気づけば夜が明けていた。
鳥の鳴き声や子供の話し声、車の走る音というありふれた日常の音が少し心地よく感じる。普段の俺がどれだけ余裕がなかったのかを実感した。
家で考えていてもしょうがない!そう思い俺は朝の散歩に出かけることを決めた。自分の遺体は見たくないので別の方向へ歩いていると三人組の男性に話しかけられた。
「おう!兄ちゃん昨日そこで轢かれてた人だろ?災難だったな。俺は鈴木だ!兄ちゃん名前は?」
「佐藤です」
生きている人と死んでいる人の区別がつかないせいで突然話しかけられたことに驚いた。早く慣れないと。
「そうか佐藤くんか!可哀想になそんな若さで死んじまうなんて……。嫌なことがあったらいいこともある!夜の20時くらいに近くの銭湯に来な。ただ風呂に一緒に浸かろうや。」
鈴木さんから銭湯の誘いを受けて時間になるまで外を散歩した。鈴木さん以外の人に話しかけられることはなかったが眺めてるうちに多少は生きてる人と死んでいる人の見分けがつくようになったと思う。
時間が近づき銭湯へ向かうと銭湯の方角から言い争いをする声が聞こえてきた。