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呪われた骸骨公爵様とクビになった聖女 3

三ヶ月前の雷雨の深夜に、彼は骸骨姿で子供を抱きかかえてシルビスティア男爵家を訪れた。体調不良に陥ってしまった子供を休ませるための、一夜の宿を求めてだ。

そして、雷に怯えていた私を労り、一晩中一緒にいてくれた方で……。


「本当に骸骨様?」

「ああ、リリアーネのおかげで、今は本当の姿だ」


骸骨様の本当の姿は知らなかった。彼は呪われており骸骨姿だった。一緒に抱きかかえてやって来た子供も呪われており、その子供は手だけが骨だったのだ。


それを、聖女である私が呪いを浄化したのだけど……。

一晩中、骸骨様の腕の中で眠っていたこと思い出せば、恥ずかしくて両手で頬を押さえて顔を隠してしまった。


「リリアーネ。どうしたんだ? なぜ顔を隠す?」


低くて男らしい、それでいて甘い声音で腕を掴まれて、開かれた顔が隠せなくなる。


骸骨様と一夜を共にしたと言っても、彼は最後までは手を出さなかった。それでも、恥ずかしいものは、恥ずかしい。今も、耳を齧られそうなほど彼の顔が近い。

少しだけジークヴァルト様が私の耳から離れると、艶めいた笑みでじっと見てくる。

その顔にどきりとした。


「恥ずかしくて……でも、会えてよかったです」

「俺もだ。やっとあの時の礼が出来た」

「まさか……このドレスの数々は骸骨様からですか?」

「そうだ。贈り物は、どうだ? 気に入ったか? 本当は邸まで迎えに行きたかったのだが……仕事で手が離せなくて、迎えに行けなかった。すまないな」

「そんな……ドレスも持ってなかったので、驚いてしまって……」


いったい誰が、こんなドレスの数々を贈って来たのだろうと疑問だった。それが、骸骨様からのお礼だった。


「気にしてくれた?」

「それは……突然こんなに贈り物が届けば、驚いてきにします。名前だって不明でしたし……」

「名前を名乗れなかったからな……それならば、驚かせて送り主を気にしてもらおうかと思ったが……成功か?」

「驚いたことは成功ですけど……」


誰かわからなくて、気にもなったけど……確かに、印象には残る。背の高い骸骨様からの視線が頭の上から感じる。


まさか、お礼のためにこんなにしてくるとは……。

始めての夜会に戸惑いながら来たのに、今は別の意味で戸惑っている。

でも……会えてよかった。少しだけ、頬が緩む。


「リリアーネは、デビュタントもしてないと聞いた。今夜は、リリアーネの社交界デビューの日だ」

「すみません……お邸を見た通り、没落寸前です。デビュタントなど、できてなくて……」

「だから、今夜がデビューだと言っただろう。陛下に話を付けている」

「えっと……」

「陛下が夜会で待っている。すぐにデビュタントのティアラを授かりに行こう。今夜はリリアーネのための社交界デビューの夜会だ」


デビュタントをした令嬢は、陛下からティアラを授かることになっている。それが、デビュタントをしたという証なのだ。だから、デビュタントをしていない令嬢は、夜会ですらティアラを付けることは許されない。

だから、今も私の頭にはティアラがなくて……。


「わ、私のため!?」

「そうだ」

「で、でも、私、ティアラなど準備してなくて……っ」

「もちろん、リリアーネ用のティアラは俺が準備させてもらった」


驚いて、声が上ずる。先ほどまで照れていたのが、一瞬でなくなっている。

ティアラは、決して安いものではない。ドレスもそうだけど、簡単にこんなに準備できるとは……しかも、私のために陛下を呼び出した夜会でデビュタントを取り付けるなど有り得ない。


骸骨様は、いったい何者なのでしょうか?


そして、骸骨様の行動にさらに驚いた。私に、紳士らしく跪いてくる。


「どうか、今夜のエスコートをさせて欲しい。リリアーネ」


感動した。胸が高鳴っている。驚きすぎて気持ちの行き場所がないからかもしれない。それでも……。



「リリアーネ。手を……」

「はい……」


感無量で、すぐに手が出ない私に骸骨様が私の名前を呼ぶ。差し出された手をゆっくりと添えた。すると、骸骨様が微笑んだ。


こんな笑みを零す人だったのか……骸骨様姿では、表情がまったくわからなかった。


「骸骨様……お姿が元に戻って良かったです」

「そうだな……そのことも後で話したい」

「はい……」


緊張とときめきが入り混じった気持ちで、骸骨様にエスコートされるままに進み、私の始めての夜会で、社交界デビューの証であるティアラを授かった。









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