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呪われた骸骨公爵様とクビになった聖女 2

幼い頃から、聖女の資質を見出されていた。そのおかげで聖女の給金で仕送りも出来ていたのだけど……先日、聖女として所属していた教会をクビになってしまった。

働いて仕送りをしようにも、聖女のような給金は望めない。それどころか、没落してしまったシルビスティア男爵家には借金があった。それを私が返していたのだけど、返済にも困る始末だった。


そして、今まで通りの返済ができなくなったせいで、私はどこかの妾になることが決まってしまっていた。


お義母様に相談すると、乗り込んで面倒くさそうになることは予想がつく。何の解決策もないまま乗り込みそうで相談できないでいた。


グラッドストン伯爵様は、血のつながりもない私を助ける理由はない。彼は、領地もないシルビスティア男爵家にお義母様が嫁ぐことも反対していた。しかも、格下の成金だった男爵家なのだ。それでも、成金というお金があったおかげでお父様とお義母様は結婚したのだけど……。


「それにしても、本当に誰からの贈り物なのでしょう……」


贈り物と一緒に届いた手紙には、『夜会で待っている』という短いものだった。

見たことのない家紋の封蝋に首を傾げると、お義母様も知らない家紋だと言っていた。


よくわからないままだけど、誰からの贈り物からは知りたくて夜会に行くことにしたけど……まさか、夜会当日に馬車まで用意されてるとは思わなかった。


なんだろうか……この至れり尽くせり感は……。


立派な馬車の中で腕を組み困惑したままで、アルディノウス城へと向かっていた。



夜なのに、煌々とした夜会の開かれる城に圧倒される。目が眩みそうだ。社交界にデビューもしてない私には、縁のない夜会。デビューできる歳になった時には、すでに貧乏だったから仕方ないけど……いきなり一人での夜会は難易度が高すぎる。


お義母様が付き添うと言ってくれたのを、断らなければ良かったと後悔する。でも、私と一緒にいることを、グラッドストン伯爵様は良く思わないのですよ。それでも、ノキアがいるから、私とは切りたくても切れない縁なのでしょうけど……。

だから、お義母様がシルビスティア男爵邸に来ることにも、彼は見ないフリをしている気がする。


「お嬢様」

「は、はい!」


呆然と馬車から降りて、夜会会場の前に立ちつくしていると、私を迎えに来てくれた御者さんが声をかけてきて我に返った。


「この先を遠慮なくお進みください。主人もすぐに来られます」


遠慮なく進めない。初めての夜会で、ノリノリで行けないのです。


「あの……ご主人様はどなたでしょうか?」

「行けばすぐにわかりますよ」


心当たりがないから聞いたのです。でも、通じません。


「あの……良ければご一緒に……」


どうしようかと思い、連れて来てくれた御者に声を掛けると、夜会会場がざわつき始めた。

御者は、なぜか一歩下がる。


「リリアーネ!」

「はい?」


名前を呼ばれて振り向けば、真正面から有り得ないほど美丈夫が早足でやって来る。


蒼い髪が前髪にかかるくらいの髪に、蒼い瞳がのぞかせている。背が高くて、中肉中背。黒いマントをなびかせてやって来る盛装姿の男。


驚きから、瞬きも出来ずに固まってしまった。


「やっと会えた……来てくれて嬉しいよ。感謝する」

「は、はい……!」


誰かわからない。わからないけど、目の前で男が私に跪いた。


「今夜のデビュタントのエスコートは、ぜひ俺にさせて欲しい」

「エ、エスコート……?」


いったいなぜ?


そんな疑問しか出てこない。


「あの……私をご存知で?」

「もちろん知っている」

「でも、私、お名前を存じ上げなくて……ですから、」


名前も知らない男からのデビュタントのエスコートを断ろうとするが、男は跪いたままで立ち上がってくれない。


「覚えてないのか?」

「す、すみません……っ」

「そうだな……」


ふむ、とほんの少し考えたような男が立ち上がり、近づいてきた。すると、一瞬で耳元に顔を寄せてきた。


「ひっ……」

「雷雨の夜は世話になった。リリアーネ」


雷雨の夜。その言葉に思考が止まる。


「感謝している。あの夜は俺にとって忘れえないものだ」

「まさか……」


耳元で囁かれた彼が離れると、私の顔の前でにこりとした。顔に見覚えはない。でも、嵐の夜は、思い当たることがあった。


「思い出してくれたか? あの時は名乗れずにすまない。俺は、ジークヴァルト・フォルカスだ。ジークと呼んでくれ」


愛称など頭に入らずに、彼をじっと見た。男らしい端整な顔が私を見据えている。


でも、雷雨の夜に会ったのは……。


「まさか……骸骨様?」


呆然とすると、ジークヴァルト様が笑みを零した。


「リリアーネ。約束通り、迎えに来た」





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