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ネトゲの嫁と離婚したら、クラスのギャルお嬢様がガチギレしていた  作者: 春海たま
新米彼氏彼女初心者編

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第95話 誕生日はきっと

 昼休み。

 俺とレオナさんは教室を追い出され……というか、気を遣われたんだと思う。

 なので今日は屋上で食べることにし、ベンチに座る。


「涼しー。お弁当日和だぜー」


 レオナさんは気持ちよさそうに足をバタバタさせる。

 秋晴れのいい天気だ。


「美味しく食べられそうな天気だね。ただ、やっぱり注目されてるね」


 俺たち以外にも屋上でお昼ご飯を食べている生徒はいる。

 俺が目を向けると、遅れて顔をそらすのが見えてしまう。


「想像以上だね。うーん……これじゃ明日から陽キャギャルフォームに戻すの考えちゃうな。変に勘ぐられるのもめんどいし」

「みんながもうお好きにどうぞ、って思うまで一緒にいればいいんじゃないかな?」 

「それもそっか。周りの目なんて気にしたってしょーがないしねー。お昼食べよ、食べよー」


 頷き、一緒に弁当を開ける。


「うわー……ダブってるねー」

「ダブったね……」


 俺は赤飯の大きなおにぎり、レオナさんのお弁当には赤飯が敷き詰められていた。

 多分、お互いに昨日と今日の残り物。


 以前のお弁当お揃い事件を彷彿とさせるダブり具合。

 ただ今はお揃いでも1年A組に衝撃が走ることはない。


「んー……そだ。交換こしよ。これなら新鮮味もあるし。いい?」

「もちろん。交換しようか」

「おけー。じゃあ、交換ターイム」


 おかずに赤飯もいくつか交換してから食べ始める。


ゆうさんの赤飯おにぎりも美味しいー。ごま塩がいいアクセント。さすが元料理人だねー」


 レオナさんは赤飯おにぎりを頬張る。

 頬を緩ませ、本当に美味しそうに食べてくれる。


「ありがとう。感想を聞いたら父さんも喜ぶよ。レオナさんのからあげも美味しいよ」


 今日は赤飯とあって、レオナさんのお弁当も和食メインだ。


「男の子ってマジでからあげ好きだよねー。それ、ママが作ったやつ。ママったらさー。昨日真白君がいっぱい食べたのが嬉しすぎたのか、今日は男の子が好きそうなおかずばっかりなんだよ。

 普段はカロリーカロリー言うくせにさー。マジダブスタじゃね?」

「はは……それは大変――」


 喋り、開けた口に大葉で包んだ肉団子が放り込まれた。


「ね? 男の子ってこーいうのも好きでしょ?」


 レオナさんが楽しげに首をかしげる。

 ……まさかのふいうちあーんをしてきた。

 確かに大葉のサッパリとした味わいの分、豚肉の味もしつこくない。


「そう、だね。好き、です」

「うん。じゃあ、私はカロリー低めの玉子焼きがいいな?」


 それはつまり、あーんのお返しをご所望というわけで。

 一瞬、周囲に目を配り、玉子焼きをつまむ。


「お納めください」


 レオナさんの小さな口に玉子焼きを献上する。


「くるしゅうなーい」


 慣れた手つきであーんを完遂し、レオナさんは美味しそうに玉子焼きを味わう。

 レオナさん的には学校的健全的節度ある恋人コミュのレギュレーション違反ではないらしい。


 レオナさんの学校での許容範囲をまた学び、お弁当を食べ進める。


「ところでさー真白君の誕生日っていつ?」


 誕生日の話題に驚きつつも答える。


「そう言えば、お互いの誕生日って知らなかったっけ。俺は1月5日だよ」

「マ? 冬休み真っ只中じゃん? ってか早生まれってやつ?」

「そうだね。三が日のすぐあとだから。クリスマスにケーキにチキン、大晦日おおみそかにお蕎麦、年明けにお餅におせち食べて、またケーキにチキンのローテ」

「おーイベント大渋滞になってんじゃん。ケーキチキンのサンドも胃もたれしそう。でも、真白君なら余裕か」

「毎年だからもう慣れたよ。白雪しらゆきは小食だし、お寿司食べたりするけどね」


 レオナさんに笑って答え、おにぎりを食べる。


 正直、誕生日の話は少し前まで苦手だった。

 言ったとおり冬休みだし、友だちを招いての誕生日会はしたことがない。


 それでも小学生の頃は誕生日が楽しみだったし、中学生も1年は素直に受け入れられた。ただ中学2年からは……少し負い目を覚えてしまったから。


 祝ってもらっていいのかな、なんて負い目。

 今は吹っ切れたし、違う。

 わざわざ口に出して空気を悪くするのは望まない。


「レオナさんは?」

「私は7月20日だよー」

「じゃあ、夏休み直前だよね」

「だから友だちとの誕生日パーティーもテスト明け夏休み前の打ち上げみたいなついででさー。ちょーてきとーだし。マジぴえん」

「それはそれで大変だね」

「それなー。でも、嬉し。冬休みに夏休み。お互いに休み関係の誕生日でお揃だし。じゃあ」

 レオナさんは俺の肩に頭を乗せ、


「真白君の誕生日パーティーが先だね」


 そう言ってくれた。


「……そう、だね」


 きっと今年の誕生日はまた楽しい予感がしていたから。

 空気を悪くする必要なんてないと分かっていたんだ。

 そしてまた夏が来れば、レオナさんの誕生日を祝ってあげたい。


「ん? ってか、待って」


 レオナさんが何かに気づき、姿勢を戻した。


「じゃあさ。1月5日まで私のがお姉さんってこと?」

「え? そう、なるのかな? 同級生でお姉さんって考えはしたことなかったけど。年上? くらいの認識で」

「でも、年上ってことはさ。期間限定お姉さんポジってことじゃね?」

「じゃあ、俺も期間限定弟ポジに……?」

「そーなる?」


 二人して首をかしげる。


「うーん。でも、俺はさ。普通の恋人同士がいいな。俺の誕生日が過ぎたら同い年に戻るんだし」

「そ、そだね。そーいう期間限定はマジのマジでいざって時の期間限定にするくらいでちょーどいいよね」


 レオナさんも納得し、残りわずかになったお赤飯を食べて、飲み込む。


「で、真白君はお兄ちゃんだけど。姉ものと妹もの。どっちが好き?」

「またどっちを答えても問題発言になりそうな質問を」

「ならないならないー。どっち答えても私と真白君だけの秘密にするし。今後の参考にするだけだからー。ね? 教えてよー真白くーん」


 碧い瞳を輝かせ、無邪気に、猫撫で声で聞いてくるレオナさん。

 その胸中は彼氏である俺にもまだ計り知れない。


 どっちを答えても、死地への片道切符、な気がして切り札を握りつぶす。


「学校的健全的節度ある恋人コミュカードをオープン。ノーコメント効果発動で」

「カッ! じゃないよ! 真白君ずるい! その魔法カードの使い方は卑怯じゃね!?」

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