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ネトゲの嫁と離婚したら、クラスのギャルお嬢様がガチギレしていた  作者: 春海たま
新米彼氏彼女初心者編

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第106話 チンアナゴさんにニシキアナゴさんのオーラマジ神!

 レオナさんについて新たな発見し、熱帯魚の水槽が広がるラウンジエリアを抜ける。


「おおー……! クラゲパラダイス!」


 暗がりに次々と切り替わる照明の下、様々な種類のクラゲが泳ぎ、浮遊している。

 小さいのから大きいのに細長いのまで、ゆらゆらとした姿は癒やされる。


 そして中心部にある円形の水槽には、たくさんの小さなクラゲが漂っている。

 特に撮影スポットなのか、多くの人が撮影をしていた。


「ここは一人で撮った方が映えるかな。スペース的にもね。レオナさん、撮ってあげるよ」

「うーん。そっか。じゃあ、チャンスが来たらさっとすませちゃおう」


 頃合いを見てレオナさんが移動し、両手をVの字に広げた。


「真白君! クラゲー!」


 レオナさんの合図でスマホのシャッターを押し、水槽から離れて写真を確認する。


「これは最高にクラゲーな感じの一枚! 新たなブームの火付け役になれるかもしれないですぜ……!」

「SNSに上げたらそうなるかもね」


 野望を抱いているレオナさんに同意する。


「はっ!? いけない。また目先の欲に釣られてしまった。投稿するにしても今日はバズり目的じゃないし、純粋な気持ちで思い出として残すよ」

「うん。仮にバズった時はドヤ顔すればいいだけだしね」

「なる。じゃあ、真白君のこともいっぱいアピールしちゃうね」

「俺はほどほどでも。それこそにおわせ背景くらいで十分……いや、アピールした方がいいのかな?」

「いいに決まってるよ! 彼ピアピールは大事! 魔除けだよ!」


 俺とレオナさんが珍しくSNS談義に花を咲かせ、移動する。

 幼生のクラゲたちを見て、生命の神秘を学びながらエスカレーターを昇り、二階に向かう。


 事前にスマホに読み込んでいた案内図を見ると、二階の最初のフロアはイルカのプールがあるスタジアム。

 そして、そろそろイルカショーの時間だけど、


「うわぁー……。マジで大人気だね」


 レオナさんは目の前の光景を見て、呆然と口にした。

 観客席は満席だった。

 外周の通路も立ち見をしている人垣で、中央のプールが見えない状態だ。


「さすがに今回の時間は諦めようか。まだ後の時間にも何回か開催予定があるみたいだからさ」

「さんせーい。まさに事前情報なしの、行き当たりばったりの初デート感があるよね。しかし、マジで人が――おっとこれは禁句だった」

「この場では言っちゃいけない禁句だったね。それにイルカショーに人が集まってるってことは、他の展示フロアに人が少ないはずだし。今のうちに見て回ろうか」

「真白君、天才か」


 改めて即興のデートプランを練って次の展示フロアに進む。


「あ、あれは!? ま、まさか!? 真白君、行こう!」


 レオナさんに手を引かれ、目の前の中ぐらい水槽に駆け寄る。

 クマノミやエンゼルフィッシュ――綺麗な熱帯魚たちが、珊瑚の合間を泳いだりしている。


「このお方たちは数々の作品に登場する名バイプレイヤー! チンアナゴさんに、ニシキアナゴさん!」


 レオナさんは水槽の中心部には目もくれなかった。


 砂底から顔を出し、水の流れに身を任せて動いているチンアナゴさんに、ニシキアナゴさんを食い入るように見つめ、スマホで動画を撮り始めた。


「見て見て真白君! チンアナゴさんに、ニシキアナゴさんだよ!」


 レオナさんは目を見開き、興奮気味に俺に話しかけてくる。


「そう、だね。チンアナゴに、ニシキアナゴがたくさんいる、ね」

「お兄ちゃん! 見て見て! この小さなお魚さん、ウンコしてる!」

「ほんとだ! ウンコだ! この魚ウンコしてる、ウンコ!」


 俺たちの隣では小学生低学年くらいの兄妹も水槽に張り付き、熱帯魚がウンコをする様を見て興奮している。


 子どもたちを優しげに見守る両親と目が合い、軽く会釈されてしまった。

 その微笑みは子どもたちに向けているのと同じだった。

 俺も静かに頭を下げる。


「真白君! マジヤバい! チンアナゴさんにニシキアナゴさんのオーラマジ神!」

「お兄ちゃん! お魚さんウンコ!」

「父ちゃん母ちゃん! 魚がウンコ!」


 ……イルカショーで人が少なくてよかったかもしれない。


 ◆


「いいチンアナゴさんに、ニシキアナゴさんだったよ。他の魚も見てから次行こうか」

「エビやクマノミもいるみたいだからね。解説パネルに表示されてるから」

「うん。見逃さずに見つけよーね」


 レオナさんは先の出来事に気づくこともなく笑顔だ。

 笑顔を守るためならば、時にそっと胸に秘めておくのも大切だ。

 チンアナゴさんに、ニシキアナゴさんたちに別れを告げ、水中トンネルに進む。


「でかー。真白君に負けず劣らずでかさだね」


 レオナさんは顔を上げて、俺の身長と比べようとする。


 ヒレをゆったりと動かすマンタやエイに、サメが水中トンネルを這うように白いお腹を見せながら泳いでいる。

 横側にも砂利の上で休んでいたり、他の魚たち一緒に泳いだりしている個体がいる。


 頭上から差し込む光が水に反射し、ゆらゆらと照らされる水中トンネルを歩いて行く。


「海の中を歩いたらこんな感じ……いや、〈GoF〉の夏イベで潜りまくってたっけ」

「ヤドカリにカニをかなり狩ってたね」


 夏休みの日々に思いをせる。


 時間があえば一緒に〈GoF〉で遊んでいた。

 夏休み最終日はネトゲ離婚でお互いに辛い思い出になってしまったけど、今こうして二人並んで歩いているなんて、当時の俺たちは想像していなかった。


 レオナさんの横顔を見る。

 水に反射して差し込む光を浴びるレオナさんの金髪はキラキラと煌めいている。

 碧い瞳もさらに輝きを増し、楽しそうな笑顔は本当に絵になる。


「レオナさん、ここでも一枚撮っていい?」

「うん。いいよ。なーに、真白君。カメラ魂に目覚めちゃった?」

「そうかもしれないね。ここも人が多いし、さっと撮ろう。まずはレオナさん一人からで」

「オケー。最高にかわいくきれーに撮ってね」


 レオナさんは小首を傾げ、ダブルピースを決める。

 マンタやエイ、サメに、たくさんの魚たちをバックにスマホで撮影し、さっと一緒に並んで自撮りする。


「真白君の撮影スキルもだいぶ上がってきたね。いい映えっぷりだよ」

「ありがとうございます。さらに映えるように頑張ります」


 写真の中のレオナさんも綺麗だけど、隣のレオナさんには敵わない。

 水中トンネルを抜け、次なる展示フロアに向かい、ペンギンや、アザラシ、カワウソと言った動物たちに出迎えられる。


「うーん。このアザラシのデブっぷり。どー見てもドラさんにしか見えない」

「確かにそうかも。じゃあ、あっちの機敏に泳いでるオットセイは、ちょこさんかな?」

「それなー。ってか、アザラシの後ろ足のヒレっぽい部分に、ちゃんと爪が残ってるんだね。エボリューションの名残を感じるよ――ん? なんか急に人増えてない?」


 水に浮いてのんびり寝ているアザラシを観察していると、レオナさんの言うとおり人が増え始めた。


「もしかしたらイルカショーが終わったのかもね」

「あー、それでこの人波かー。しょーがないね。でも、イケメン&かわよペンギンたちに、カワウソのお昼寝顔も見れたし。作戦は成功だね」

「人が集まりそうな場所を先に見ておいて成功だね」


 まだ見てない人たちにもアザラシやカワウソの寝顔を見てもらおうと、俺たちはその場を離れた。


 ◆


「くっ。こ、これがアマゾンの空気か。むせるぜ」


 レオナさんは真剣な顔で汗を拭うふりをした。


「ほんのり蒸し暑いね」


 移動した先は熱帯雨林をイメージした展示フロア。


「さすがアマゾン。魚もでかい。ピラルクもサメにマンタに真白君に負けていないね。ピラニアもやはり凶暴――イグアナさえ、水中で大暴れしておる」

「カメレオンにカエル、ヘビも擬態してるのが多いね。ここのトカゲ、どこにいるか分かる?」

「枝のところ? 生き延びるための術だよね。な!? サラマンダー……だと!?」


 さっきまでとはまた違うジャングルの生き物たちの伊吹を感じながら進んでいく。


「うひゃー。カピバラさんじゃないっすかー」


 レオナさんは奥にいた二匹のカピバラを見て、即座にスマホを構えた。

 一匹は奥で草をむしゃむしゃと食べ、もう一匹は手前の水場にごろんと寝転んでのんびりしている。


「うーん。アマゾンのオアシス、って感じ? 耳ピコピコ、尻尾プルプルでかわよー」


 レオナさんは厳つい系の生き物より、やはり可愛い系の方が好きみたいだ。

 俺は鱗が厳ついイグアナや、さっきのサメやマンタみたいに大きな生き物の方が心惹かれてしまう。


「しかし、このカピバラさんたち、どこかで見たようなー? ……あ」


 レオナさんはなぜか俺を見て、頷いた。


「うん。真白君に似てるんだよ」

「え? 俺、レオナさんからはこんな風に見えてるの?」


 耳をピコピコさせて、尻尾をプルプル震わせて、草をむしゃむしゃして、水場でごろごろしているカピバラ風に?


「私目線だとたまにこー見えるかも? もちろん、かっこいい時のが多いけどね」


 褒められてるんだろうけど、複雑な心境なのは男心ってやつだ。


「そんなに似てるかな――」


 改めてカピバラの方を向くと、手前の水場に浸かっているカピバラと目が合う。

 さらに草をむしゃむしゃしていたカピバラまでやってきた。

 じっと黒い瞳が俺を見つめ、もう一匹はまだ草をむしゃむしゃしている。


「ほらほら。真白君、同族だと思われてるんじゃない? 手、出してみよーよ」

「さすがに手を出したってなにも起きないと思うよ?」


 レオナさんに言われ、透明な壁に触れる――と二匹のカピバラも前足を懸命に上げてきた。


 おぉー……、と他のお客さんまで感嘆の声を漏らした。

 俺が手を動かすと、なぜか前足が後を追ってくる。

 透明な板を挟んで、カピバラと触れあう。


 これは本当に、同族と思われてる?


「凄いよ、真白君! アマゾンの奇跡だよ! これはみんなに共有すべきだよね! 他の人もどーぞ!」

「あっ! 手だけにするんで! 顔は写しませんから!」


 妙な気遣いをされながら、写真を撮られてしまった。

 ……カピバラとウサギって仲、いいんだっけ?

 調べてみると、カピバラとウサギが仲よさそうにしている画像が結構あった。

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