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ネトゲの嫁と離婚したら、クラスのギャルお嬢様がガチギレしていた  作者: 春海たま
新米彼氏彼女初心者編

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第103話 彼女彼女の恋人です!

 残りわずかな休憩時間、ゆったりと過ごしたかったけど。


「レオナちゃん。おっぱい、揉んでみない?」


 開口一番、海月うみづき先輩はとんでもないことを言い出した。


「っ!? いいんですか、揉んじゃっても……!」


 レオナさんもとんでもない返事をした。


「……海月先輩。スタッフへの過度なお触りは禁止では?」

「さっきレオナちゃんのほっぺたを触ってたウサギちゃんが言えるかしら?」


 それを言われてしまうと、反論の勢いが削がれてしまう。


「いつから見てたんですか?」

「レオナちゃんが入ってから?」

「最初からですか。一緒に入ってくればよかったじゃないですか」

「まあまあ、それより揉ませてあげなさないよー。せっかく私たちが厳選した至高のおっぱいなんだから! 揉まなきゃもったいないわよ! 今は女の子同士! 合法よ!」

「そうだよ真白君! 合法だよ! 私と真白君は彼女と彼女なんだから!」


 海月先輩は強引に話を推し進めようとし、レオナさんも嬉々として便乗する。


「なん……だと……!?」


 海月先輩がメガネのレンズにヒビが入ってもおかしくないくらいのリアクションをした。


「薄々察してはいたけれど、レオナちゃんとウサギちゃんは彼女彼女の恋人だったのね」

「はい! 私と真白君は彼女彼女の恋人です!」


 レオナさん、言っていることは間違ってはいないけど、間違っている。


「なによーやることやってるじゃないの。彼女彼女の恋人なら揉んでも合法じゃない。残り時間少しだし。あとでみんなの前で公開プレイするよりましでしょ?」


 海月先輩はさらに我が意を得たりと勢いづく。

 まあ、確かに。

 残りわずかな休憩時間をごねるよりも、有意義……かはどうかおいていて。


「分かりました。レオナさん、どうぞ」


 観念してレオナさんの方に向き直る。


「ありがとう、真白君、では失礼して……」


 レオナさんは顔を赤くし、手をなめらかに動かし、俺の疑似おっぱいを揉んだ。

 ふにふにと。

 別に感触が連動しているわけではないけど、変な気分だ。


「こ、これは……! 大きさE! ハリSSS! 柔らかさA5! 重量感TITANIUM! 至高のおっぱいです!」

「そうでしょう! みんなで厳選に厳選を重ねた至高のおっぱいなのよ!」

「私に負けず劣らずのハイレベルです!」


 そうか、レオナさんのも……いや、余計なことは考えないでおこう。


「いい自信よ、レオナちゃん! ハッ!? 同人の神が降りてきたわ! これは冬コミで使えるかしら!」


 健全な大学生と高校生がする会話ではない。


「ふぅ……いい、おっぱい。真白君」

「……ありがとうございます」


 レオナさんは白い肌がさらにツヤツヤになっている。

 と、海月先輩は真剣な眼差しをして言う。


「そしてさらに薄々察してはいたけれど、レオナちゃん……もしかして、清き乙女かしら――塩×胡椒」


 ハッ! とレオナさんは姿勢を正す。


「マザボ×グラボ!」

「E5はやぶさ×ドクターイエロー!」

「マヨネーズ×ソース!」

「北海道×沖縄!」


 ガシッ! と力強く握手をするレオナさんと海月先輩。


「やるわね、レオナちゃん」

「海月先輩には及びません。私はその道に足を踏み入れたばかりの若輩者ですから」

「誰だって初めはそうよ。私だってそうだったわ。大事なのは未踏みとうの泥沼を踏み進む勇気よ。頑張りなさい。いつでもお話しましょう」

「ありがとうございます! 頑張ります!」


 未踏の泥沼については深く聞かない方がよさそうだ。

 下手に踏み込めば、俺が泥沼に引きずり込まれてしまう。


「レオナさん? そろそろフロアに戻った方がいいんじゃないかな……?」


 ◆


「こちらデビルキャットプリン、パンプキンヘルパンケーキです」


 店内のカウンター席に戻ったレオナさんに、ハロウィン限定スイーツを提供する。


「おおー! ぷるぷるにゃんこに地獄カボチャー!」


 猫の顔を模したプリンに、お皿にカラメルソースでコウモリの翼を描いたデビルキャットプリン。


 真っ赤なベリーソースにフルーツ盛りだくさんのカボチャを使ったパンケーキ。ジャック・O・爛子らんこさんみたいなカボチャ顔の焼き印が入っている。 


「そして、カフェラテです」


 ライオンの顔に……特別にLEONAの文字入りラテアートのカフェラテを差し出す。


「これは真白……ウサギちゃんが?」

「はい、まだまだ未熟ですが。練習の成果です」

「未熟なんてそんなことないよー。めっちゃイケてるじゃん」


 レオナさんはハロウィン限定スイーツや俺のラテアートをスマホで撮影する。

 こうやってちょっとしたことでも、練習してきたことが褒められると嬉しいものだ。


 レオナさんは撮影に満足して、まずはパンケーキから頬張る。


「うまうまー」


 美味しそうに食べるレオナさんはいつまでも眺めてられてるけど。


「ウサギちゃーん! またまたチェキのご指名だよ!」


 今はバイト中。他のお嬢様にお坊ちゃまもいる。


「申し訳ありません、お嬢様。席を外しますね」

「うん。お仕事、頑張ってね」


 少し寂しそうにしているレオナさんを尻目に、撮影スペースに向かう。

 その後も忙しく、退店間際の記念写真をするまで話す時間はなかった。


「ウサギちゃん、私のことは庭に不法侵入した不届きな雑草だと思っていいからね! 除草剤からの芝刈り機コンボをぶちかます感じの侮蔑ぶべつの眼差しでよろ!」


 レオナさんまで限定的すぎる要求をしてきた。


「……本当にそれでよろしいのですか、お嬢様?」


 できたら普通に撮影したかったんだけどな。


「うん! 雑草ちゃん魂を見せるに最高のシチュだしね!」


 レオナさんは俺の前で腰を下ろして、ダブルピースの構えをとる。


「ほらほら、ウサギちゃーん。お嬢様の要求は絶対遵守、でしょー?」


 海月先輩はもう事情を知っているので面白半分で煽ってくる。


「承知いたしました。除草剤からの芝刈り機からの野焼きコンボでよろしいのですね?」

「お、分かってんじゃーん! それでよろよろ!」

「ウサギちゃんも分かってきたようだねえ! それじゃあ、行くよー! 3、2、1、雑草ー!」

「雑草ー!」


 息の合った雑草コール。

 しかし、その雑草はタコッターとかキャットドッグみたいなアプリでトレンド入りしたりしてるのかな? なにが元ネタなんだろうか。


「ふぃーお嬢様は満足しましたよ! ウサギちゃん! また今度ね!」

「はい。いってらっしゃいませ、お嬢様」


 レオナさんを店の外でお見送りし、笑顔で別れる。

 後ろ姿を見ても楽しんでくれたのは分かる。


 それでも、もう少し話しをしたかった。

 バイトが終わってから会う約束はしている。


 ただ鷹城たかじょうさんや先輩たちとハロウィンパーティーがあるので、少ししか時間はない。

 ……さすがにバイト先のパーティーに彼女を呼ぶのはどうかと思うし。

 名残惜しさを覚えながら店に戻る。


「すまない。緊急招集だ。少し席をはずよ」


 俺と入れ替わりで、鷹城さんが店を出た。

 緊急招集?

 足りない食材でも出てしまったんだろうか?


「すみませーん! 注文お願いしまーす!」


 そんなことを考える余裕は、お嬢様やお坊ちゃまの対応ですぐになくなってしまった。


 ◆


「では! 今日の売り上げを発表する!」


 ハロウィンフェスバージョン・カフェ・ヴァルキリーは大盛況で閉店を迎えた。

 幸い魔除けの役目を果たすことなくすんでよかった。


「おめでとう、目標の三倍達成だ! 正に|お金くれなきゃいたずらしちゃうぞ《トリックオアトリート》様々だね!」


 みんなで拍手をして応える。

 鷹城さんが珍しくはしゃいでいる。

 ただトリックオアトリートの意味が違って聞こえたけど。


「それでは、お待ちかねのハロウィンパーティーの時間だね。お色直しのためにしばらく家に戻るから……真白君。それまで準備のお願いできるかな?」

「はい。分かりました」


 鷹城さんの家はすぐ近くにある。

 そこに鷹城さんが今まで作ってきたコスプレ衣装もある。


 みんなで版権キャラのコスプレをするのだろう。

 俺はもう女装でお腹いっぱいだ。このままで十分すぎる。


「ありがとうね。助かるよ。それまで店番よろしくね」

「兎野なら心配はいらないが――何かあったら遠慮なく連絡するといい」

「そうね。変なおじさんが来ても押し負けちゃだめよ。強気でいきなさい」

「おう! 容赦なくボッコボコに正当防衛していいからな!」

「……大丈夫ですから、行ってください」


 執事なコスプレをしてもいつもなノリの先輩たちに、鷹城さんを見送る。

 カランカランと鐘がなる扉を閉める。


 よし。任された以上はハロウィンパーティーの準備を進めておかないと。

 まずはテーブルからかな。

 それから準備を進めて30分は経った頃、また入り口の扉の鐘が鳴る。


「おかえりなさい――え?」


 みんなを出迎えて驚いた。


「こんばんはー。真白君。真の姿のレオナちゃんでーす。イェイ」


 一番前に出たのはコスプレをしたレオナさんだった。

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