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魔導師としてがんばります!  作者: あまみ すすき
断罪パーティ編
9/14

0.9遭遇

 騎士団本部は、アルバートの出迎えのための大掃除が行われていた。

 いつもは薄汚く、書類の積み重なった玄関口も、年末のような本来の美しさを取り戻していた。

 

 「ぷはー、疲れたー。アルウェン、水くれ」


 だらしなくも、何もしていないアルムフェルザが、最も尽力したアルウェンに強請る。ちなみに、アルウェンは汗一つかいていない。

 気の利かないアルウェンはアルムフェルザの願いなど聞かず、一人で珈琲をたしなんでいた。


 「ふんっ」


 満足げに部屋を見渡すと、アルウェンは鼻息を鳴らして立ち上がる。

 視線の先には、掃除を終え、休憩の許しを待つ団員の姿がある。

 汗だくでもなを沈黙を厳守する団員たちのことを、副団長ながらも感心する。

 この姿を見ると、あの王子も感心するのかもしれないと思いながらも、脳内でその案を否定する。パワハラを疑われると、騎士団に対する信用が揺るぐ。

 

 「お前たちは少々休息をとったら訓練に戻れ。」


 はいと答え、顔色一つ変えずに動きをそろえて団員が退場していく。

 もうじき、王子が来る。

 緊張感を漂わせ、二人は緊張を紛らわせるように体を動かしている。

 そして、音を立てて扉が開かれる。

 事前に頭を下げておく。

王子が入ってきたことを確認し、アルムフェルザが挨拶し、頭を上げる。

 そして驚愕した。

 王子が女性を連れていたのだ。

 なぜか護衛を断り、一人で来ると聞いていたのだ。驚くのも仕方がないと、アルバートは同情する。

 予定道理に案内しよう、そう考えて足を動かそうとしたーーー瞬間。

 

「こんにちは、薄汚い騎士団の皆様。」


 予想外の人物から、予想外の言葉が発せられた。

 リリスだ。

 だが、ここで乱れる団長ではない。

 

 「ご丁寧に、ありがとうございます。

我々、薄汚い程度でへこたれはしませんので、以後よろしくお願いします。」


 はにかみながら告げるアルムフェルザのことを、アルウェンは感心する。


 「では、こちらへ」


 アルムフェルザがカウンターへ案内しようと足を動かす…瞬間。


 ーーパンッ


 短く、そして大きく、銃声が響く。

 それは、緊急事態を示す合図だ。

 それを機に、本部は騒がしくなる。

 アルムフェルザとアルウェンも出動する必要があるため、アルバートに一礼し、場を離れる。

 だが、急ぐ団員の気も知らず、何が起こっているのか理解できないアルバートは、団員を引き止める。  

 団員は煩わしさを押し殺し、立ち止まる。


 するとーー

 

 「竜だー!地壊竜がいる!全員、急げ!!」


 見張り役の男が叫ぶと、アルバートはもっと分からないとでもいうように、長々と説明を求めた。


 「お、おい。これは、どうなっている!?」


 「緊急事態です。安全なところに避難を」


 そこで区切り、今度こそ出動しようとする団員を、アルバートはまた引き止める。


 「お前は俺の護衛をしろ!」


 そう言われた団員は、副団長に次ぐ実力者…………カルウェルト・ミルヘルウァだ。欠ければ、戦略に大きな支障がで、最悪陣形がクズレテパニックになる。

 こんなところで立ち止まっていてはいけない人材だ。

 

 (そもそも、貴男が護衛を断るから…………)


 内心苛立ち、仕方がないと諦めたカルウェルトは見た。

 地壊竜が、本部へ一直線に進んでいるところを。

 そして、もう騎士団は全員出動し、ここには自分しか団員がいないことを。


 《ヴゥァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!》


 雄叫びを上げ、一直線に進んでくることに、絶望。

 だが、その絶望を断ち切ろうと、目の前に何者かが立った。


 「うぉーし、がんばんでー!!」

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