0.4 気を取り直して
サロンを堪能したルナは、自室に戻り、気を取り直してこれからの作戦を練ることにした。
思いついた案はそこまで多くはなかった。(脳筋)
一つ、大人しく断罪される。
メリットは、正直言って思いつかない。
デメリットは、どんな刑に処されるかが分からないということ。
ここは人の手によって生み出された物語の世界であるため、現実的な刑に聞いしないほうがいいだろう。最悪、死刑だ。
二つ、逃亡する。
メリットは、運が良ければ国を出て国外で自由に過ごせるという点である。だが、運が悪ければ刑が重くなり、一つ目の作戦のデメリットに繋がる。
デメリットは、指名手配される危険と、そもそも国外に出られるかということだ。
断罪されることはほぼ確定であるため、罪人になることを仮定してのことだ。
三つ、自身を高め、全ての事態に備える。
正直、これが一番いいと思っている。
メリットは、全ての事態に備えることができ、断罪以外の場でも役に立つこと。
デメリットは、どこで鍛えるかということ。
騎士団の訓練場はいくら貴族でも安全のため入ることはできない。
そのとき、ルナの頭に無謀な計画が浮かんだ。
(あ、騎士団入ればいいんだ!)
普通ならその考えも無謀としてすぐに取り消すのだろう。
だが、断罪を前にしてルナの感覚は狂っていた。
そして、ルナはそれを実行に移そうとまでする。
ルナは現代っ子としてのメンタルは豆腐以下だったが、今は『ルナ』という悪役令嬢であるため、何故か強気になってしまった。
というわけで、計画をまとめるとこうなる。
『3の計画を採用。
↓
騎士団に入団し、己を鍛える
(貴族として入ることはできないし、女性も入れないので、変装する)
↓
様々な場で役に立つ!!
(海外に飛ばされたときや、処刑されそうになった時) 』
である。
なんとも雑な作戦に、ルナの性格が出ていた。
だが、それを実現可能だと、本気でルナは思っていた。それもルナらしいというか、なんというかだ。
(さて、じゃあ明日、入団届け出しとこっと。)
窓の外はすっかり夜だ。
今日転生して、ここまで考えがつくのは凄いのではないかと、ルナは自賛する。
だが、頭を使った(本人は一日中頭を使ったと思っているが、エステにいた時間が一番長い)ためか、今はとても眠い。
仮の部屋だが、それでも十分な装飾の施された部屋に、庶民的なルナは慣れない。
だが、ベッドに入った途端、ルナはそんなのどうでもいいと言わんばかりに、瞬間的に眠りについた。
不幸が幸いか、今のルナの格好は素朴なドレスであるため、着心地もいい。ルナも気に入っていた。そのドレスが、悪役令嬢 ルナの特注した、最高級品であることを知らずに……。
〜〜〜
「ああ、嬉しい。まさかあの方のいる世界に転生できるだなんて。」
彼女は歓喜に湧いていた。
だが、それも当然のことなのかもしれない。
何年間も焦がれ続けた存在に、やっと会えたのだ。
彼女は、『あの人』のためならば、何にでもなる覚悟がある。
たとえ、この物語の『悪役令嬢』に成り代わろうとも。
処刑され、死してもなを―――――