11.0君は破壊の対
地壊龍と向き合うルナは、そこらにあった剣を手に取り、無造作に構える。
勿論、そんな技術もない。
たが、知っていた。この世界には、裏ルートで出現する『魔法』が存在すること。そして、その発動条件を。
「破壊VS現代っ子って、なかなかにキッツい展開やな……」
本ではよく、奇跡だの勇気だのが語られているが、いざ破壊を目にすると、そんなものは吹き飛んでしまう。
今、ルナの胸にあるのは、もしかしたらこの現場わ見ている人がいたとしてて、ルナが逃げて「カッコ悪」とつぶやくことが怖い、恥ずかしいという考えだけである。
前世のルナは、頭は平均、運動はまずまずといったところであった。
小学生でバック転や跳び箱の展開とびはお手の物。おまけに面倒見がよかった。
ここだけ見ると、結構良い部類の学生だった。だが、ルナには友がいなかった。いじめられこそしなかったが、確実に浮いていた。
ある時、転機が訪れた。
それは、中学生になった時。
イメチェンしようと髪をバッサリ切り、ボブにした。
まだバラバラのクラスメイトに積極的に話しかけ、陽キャの仲間入りを果たしたのだ。
そんな矢先だった。死んだのは。
友と歩いていると、車道から車が飛び出し突撃。車道側を歩いていたルナが死亡した。
(あーあ、変な死に方したんよね……)
自分自身、こんな死に方をするとは少しも思っていなかったのだ。
だが、この物語の世界で、転生し、可愛らしい従者の少女がいる。憎らしいが、強がりな王子がいる。物語とは違い、生意気なヒロインもいる。
もう少し、この面白おかしい物語を見ていたい、そう思ったのだ。
(こんなとこで死んで、中途半端なまま物語終わらせてたまるか!)
いよいよ、地壊龍も目前に迫り、魔法の発動に取り掛かる。
その条件―――――それは、誓い。
立ち止まり、息を吸い、目を閉じる。
本当は気を鎮めることもしたかったのだが、そんな技術はない。
「―――――我、ルナ・カルテトが、誓う。
世界に希が、溢れ、平和を、日常とする世界を、創ると。」
途端、手にしていた剣が光る。
それは、魔を切るものでも、光を与えるものでもない、創造の光。
その誓いは、必ず叶えると神に伝える、聖約。
短い一生での、大きなノルマ。
終えられなかったら、最後、地に墜ちるという。
(あれは・・・・・・!?)
影で見ていたリリスは、ハラハラとする胸を抑え、驚愕していた。
それは、魔法がまだ世界には存在しない存在だと知っているからである。
そうとも知らずに、ルナは言葉を続ける。
「創造千地」
破壊があるなら、創造も存在するーー。
今までの本からの知識をフル活用し、その魔法の本領を発揮する。
風が頬を撫でる。
髪が舞い、服が踊り、目は真を見定める。
前には道ができ、その先にいる地壊龍を差す。
何かがごっそりとなくなり、その代償として地壊龍が雄叫びをあげる。
『ヴオアアアァァァァーーー‼』
地壊龍は、まるで光に飲まれるようだった。
茶黒の巨体が、大きく揺さぶられて崩壊する。
そこに破壊の跡はなく、ただ元の街並みが並んでいる。
ルナは、何かを吸い取られても正気を保ち、そこに立っていた。
その後、地壊龍を追っていたアルムフェルザ達と合流し、一連の騒動は収まったかのように思われた。
だが、ルナには二つ、懸念している点があった。
一つは、一連の被害者の対応。
そして、もうひとつはーーー。