レース司祭の日記
こんな奇跡があるだろうか。
列車とかいうのに乗る勇気は無かったが、舟と馬車を乗り継いではるばる学校まで来た甲斐があった。
シャロットの卒業式なんて初めてだ。
普通はそれが当たり前なんだろうが、俺にとっての当たり前は、この時期に冷たいシャロットが届くことだった。
ジブレーに近づいても、遠ざかっても変わらない現実に、大人しく役割を全うするのが楽だと気付いた。
読み込んだ台本をそらんじるようにただ、シャロットもテラシアも見送った。
そう、テラシアもあんなに感情豊かな子に育って。
きっと奥さんも、あの親父も、今のテラシアを見たら喜ぶだろうな。
親がいないのは変わらなくても、公国で良くしてもらってるみたいだし。
信心深い一家だったし、神様の思し召しってやつなんじゃないだろうか。
カルヴァドスに偏見があったのは、俺も同じかも知れないな。
公主なんて初めて見たけど、ただの親バカじゃないか。俺と同じだ。
いや、俺は大声を出してシャロットに恥をかかせていない分、冷静だ。
別に誰も死んでないし、それどころか何も起こってない、英雄も何もいなくて、それが何より嬉しい。
この会場で号泣しているのなんて俺くらいだけど、それがまた嬉しい。
みんなの中で、こうやってみんなで卒業できるのが当たり前だってことだから。
・追記
大公殿下がシャロットとテラシアの絵を描いて送ってくださった!
なんて素晴らしいお方なんだ。為政者の鏡だ! 最高だ!
多分ジブレーのを送るついでっぽいけど3枚とも並べて飾ることにした。




