登場人物としてのサイティ
夕食後、テラシアに呼ばれたジブレーは、二人で食堂のカウンターに並んだ。
横目で人目を気にしつつ、テラシアはジブレーに話を切り出した。
「ジブレーにご報告があります」
テラシアは両手をジブレーの前に掲げた。
「ここにサイティがいます。さっき知り合いました」
ジブレーはその手を見つめた。
そしてゆっくり考えを巡らせ、テラシアの顔を見た。
「…見えるの?」
「はい。触ることもできるみたいです」
「ええ?」
ジブレーはサイティがいるという場所に視線を巡らせた。
「私も話せたら良かったんだけど、学校では姿も見えないのよ…」
「そうなんですね。ジブレーが召喚した妖精じゃないんですよね?」
「ええ。入学するもっと前から、ずっとそばにいてくれたの」
テラシアによると、サイティは照れているらしかった。
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ジブレーは、1年生の秋休みを最後に、サイティから未来を聞かないことを決めた。
元々の筋書きから随分と変わったこともあるが、それぞれの人生を暴く結果になることに、ジブレーはどうしても抵抗があった。サイティも、そうした彼女の選択を尊重した。
(でも、テラシアに言うなとは言われてないもん!)
この世界に生きるサイティは、テラシアに未来を伝えることを決めた。それは既に回避された未来かも知れなかったが、それでも伝えずにはいられなかった。
バタフライ効果といえばそれまでかも知れないが、ジブレーが関わらない事象についても物語の流れと変わっている部分がサイティには気がかりだった。
(まるで誰かが意志を持って物語をまとめようとしてるみたいで、気持ち悪いのよね)
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「ほんとに報告だけしに行ったのね」
ジブレーにサイティが見えることを告げた後、テラシアは早々に厨房奥の部屋に戻った。
「はい。話を聞いて、ジブレーにはサイティが見えるようになったことを報告したかったんです。それよりさっきの話を詳しく聞きたくて」
テラシアは部屋の椅子をサイティに勧め、その正面に座った。
「卒業式の日、シャロットに何が起きるんですか?」
バタフライ効果:小さな出来事やわずかな変化が、巡り巡って大きな出来事や変化を及ぼすことにつながることってわりと最近になって知って以来、知ったかぶってるんですが、外国の言葉はおしゃれですね。カクテルパーティー現象とか。これ、サッフォーの時みたいにチョムスキーが提唱したと思い込んでてアッーて思いました。




