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イケオジ連絡網~テラシアの進路相談

いつも通り食堂に向かったテラシアは、珍しい客に出会った。


「あれ?じぃじさん?」

「おぉー、テラシア、久々。大人っぽくなって。元気してたか?」


シャロットの入学まで面倒を見ていたレース司祭が、カウンターでお茶を飲んでいた。


「はい、おかげ様で!え、どうしたんですか?」

「お前を待ってたみたいだぞ。じゃ、レースさん。厨房は好きに使っていいんで」


料理長は夕食の準備まで出かけると言い、食堂を後にした。


「じぃじさん、ボスと仲良くなったの?」

テラシアはひとまずレースの隣に座った。


「まぁのー。イケオジ同士、気が合うみたいじゃ。で、いきなりじゃがテラシア、卒業後はどうするんじゃ?」

「えっ、卒業後?そうですねぇ…」


後見人である大公家のヴィンならともかく、なぜレース司祭が気にしてくれるのだろう?と、テラシアは少々気になった。


(まぁ隠すことでもないし)


「魔法道具の勉強はしてますが、なにぶん魔法自体を使いこなすのが苦手で… なので、読み書き計算を活かせる会社で働きたいなと思ってます」


そしてお金を貯めて、ヴィンが密かに夢見ている、田舎でバーを開く手伝いをしたいと考えていた。


レースはうんうんと頷きながら彼女の話を聞いた。そこまでは良かったが、続けて出た言葉に、テラシアは目が点になった。


「やっぱりなぁ。お前さんが使えるのは魔法じゃないでの」

「へ?」


(魔法じゃない?)


「どういうこと? です?」


「実戦形式の授業が多くて、苦労してんでないかなぁと思って来てみたでよ」


その通りだった。テラシアは魔法の理論・基礎については好成績を保っていたが、実践になると思うような結果を出せず、悩んでいた。


「じぃじさん、どういうことです?私てっきり、無理に入れてもらったから力が足りないんだって思ってたんですけど」

「いやいや、はっはっは、それならそもそも入学できんでの」


(それって…)


「これはお前の生まれにかかわる話なんじゃがな」


レースの雰囲気がいつもと変わったことに、テラシアはいつになく緊張を感じ始めた。


「お前にとっていい思い出かわからんが、ご両親はとても仲が良くての」

それはテラシアの知らない、テラシアが生まれたばかりの頃にあった話だった。


「あ!待って待って、お茶飲みながら話さん?ワシケーキ持って来たで」

「あ、はい!お湯わかしますね!」


-----


お父さんは、身体が弱い妹たちのために、寒さが厳しい北の島を出たって言ってた。でも、お母さんとの思い出が詰まった場所にいるのが辛かったんだろうってじぃじさんは言ってた。


それにしてもお母さんとお父さんの馴れ初めを聞くのって、何か変な感じ…


だけど、お母さんが最後まで、お父さんと私と妹たちと過ごす日々が、幸せだって笑ってたのを聞いた。


じぃじさんの記憶にも、お父さんやお母さんや妹たちがいて、嬉しかった。


私もじぃじさんにお父さんの話をした。魔法道具に興味があるのは、もの作りが得意だったお父さん譲りかもしれないって言われて、ちょっと照れ臭かった。


また、みんなに会いたくなって泣きたくなったけど、いつか会えるまで、お前が笑って過ごすことが親孝行だってじぃじさんに頭をなでられた。


「人は死ぬけどいなくなったりはしないよ。お前は一人じゃないし、じぃじはテラシアのじぃじでもあるでな」


-----


ぼちぼち夕食時という頃、料理長と入れ違いにレース司祭は食堂を出た。


「おや、タリス殿下」

「…校内では殿下はいいと言うのに。遠いところ、苦労かけたな」


タリスはレースに、付いてくるよう促した。

二人は並んで駅までの道を歩き出した。


「それで、テラシアはどうだった…?」

「殿下の仰る通り、なかなか悩んでいたようですな。進路と言うよりは、魔法の素質が頭打ちであることでしょうか」


レースの言葉を聞き、タリスはため息のような声で「そうか…」と呟いた。


「まぁ、私に伝えられることは伝えましたで、あとは本人次第ですかな。甘え下手な子ですから、何かあったらどうか、少しでも気にかけていただけたら安心でございますで」


「あぁ。大丈夫だ。またすぐ連絡させてもらう」


前を歩いていたタリスが振り返って答えた。レースは彼と目を合わせ、笑顔を見せた。


「ほっほ。老いぼれの分不相応な願いとしては、テラシアが末永く殿下の覚えめでたいとさらに安心なんですがなぁ」


「何だ?どういうことか分からんが、彼女はいちクラスメイトに過ぎないが、まぁ、大事な国民の一人だから、今後も責任を持って目を配るから安心してくれ」


「ほっほ。大変光栄でございますなぁ」


レースはタリスの反応に若返ったような感覚を味わいつつ、駅構内へ入った。


「はー。こんなとこをくぐったら島の船着き場に戻るんですか。魔法とは不思議ですのぅ」

駅長室にある素朴な机を覗き込みながら、レースは感心した様子で頭だけ潜ったり戻ったりした。


「まぁ今回は私のわがままで使ってもらったが、いずれは国民も普通に魔法の恩恵を使えるようにしたいと思っている。そうなればすぐに慣れるだろう」


(魔法も神も、選ばれし者しか恩恵を受けられないのが現在だでなぁ)


「ほっほ。そうなったらじじぃがテラシアの結婚式に出るのもすぐですなぁ」

「けっこ… あぁ、そうだな、王都への行き来も便利になるだろう」


レースはタリスが弟みたいで世話が焼ける、と言っていたテラシアの顔を思い出しながら、肌が潤うのを感じた。


「あぁ、シャロットには今日私が来たこと、内緒でお願い申し上げますぞ。卒業式にババーンと来て、びっくりさせてやろうと思っておるで」

「そうか、わかった。…よければ、その際もこれを使うか?」


「ほっほ。長い間待ち望んだ日ですから、その日にはゆっくりと時間をかけて迎えに参りますで」


(あなたが、シャロを連れてきてくれたように)


いま一度、タリスに向かって礼をした後で、レースは机に潜り込み、駅舎から消えた。

春ですね。嵐のLove so sweetをYoutubeで100万回見ています。満開だけにね、ブンブン!

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